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輪廻の魔王  作者: 鈴鳴
7/11

7話

 外は昼間の喧騒が嘘のように静まりかえっていた。

「……レオンは何処だろう?」

 ふと魔法のことを思いだした。

「えっと……『レオンの居場所を教えて!』」

 口にした瞬間脳裏に地図が浮かび、レオンの場所を教えてくれる。

「……これは、なんだろう……?」

 レオンの方向へと近づく不吉な点が見える。

「……急ごう。」

 警告音が少しずつ強くなっていく。焦る気持ちを抑えて慎重に進んでいくと、鉄同士がぶつかる甲高い音が響いた。

 そっと家の陰から覗くとレオンと誰かが戦っているのが見える。

「―――――! ―――――――!」

「――――――――! ―――――――!」

 何かを言っているようだが、よくわからない。




 ―――――ジャリッ―――――

「ッ!」




 身を乗り出した時に足元から少し大きな音がする。普段なら気にも止めないような音だろうが、戦っていた二人は一気に距離を取りこちらを見てきた。

「! 来るなと言っただろう!」

 レオンが目を開き、怒ったように声をあげる。

「貰った!」

「ッ!」

 レオンの気がこっちに向いた直後、相手はレオンに向けて剣を振り上げた。




「駄目!」




 ガキンッ!

「何だと!?」

 僕が叫んだ瞬間、半透明の壁がレオンを包み、剣からその身を守った。

「くっ……術師をもう連れていたか、ならば先にそちらから潰すのみ!」

 男はそう言うと壁を強く蹴り、一足飛びに僕へ向かってくる。

「ッ! 来ないで!」

「ぐぅっ!」

 両手を突き出して叫ぶと突風が吹き、相手の動きを阻む。

「テメーの相手は俺だクソヤロウ!」

 レオンが再び切りかかり、一進一退の攻防が続くがレオンが押しているようにも見える。

「……これまでか……退かせてもらう!」

 男を中心に強い風が吹き荒れ、一瞬だけ素顔が晒される。

「次は覚悟しろよ……勇者!」

 額に赤い宝石が埋まった恐ろしく顔の整った男は、それだけを告げると溶けるように消えていった。







「…………説明してもらおうか。」

 はい、現在説教されています。しかも逃げられないように捕まえられています。

「え、あ、その、レオン……?」

「なんだ?」

「なんだって、その、どうしてこの体勢……?」

「こうでもしないと逃げるだろ?」

「逃げないですよ。」

「いいから話せ。」

 いや、何でそこで強く締めるんでしょうか、痛いです。

「えと、そんなこと言われても……ただなんか『嫌だな』って思ったら、できた。」

 魔王です。とは言えないからとりあえずそれ以外の事実を伝える。

「出来たってお前……ステータスは見えるか?」

「ステータス……? あ、何か出てきた。」

 白々しいとは思うけども話を合わせるしかない。

「技能には何て書いてある?」

「えっと……創造魔法……?」

 効果も下げて伝えた方がいいかなぁ、と警告音から思ったので事実を歪ませない程度に偽証してみる。

「創造魔法…………。」

 何故かレオンの腕に力が籠った気がする。籠ったというか、強ばった?

「レオン……?」

「……ソーマ、具体的にどんなことが出来るかわかるか……?」

「さ、さぁ? 試したことはないけど……多分しっかりイメージできたらある程度何でも出来る気がするよ……?」

「ソーマ。」

「な、なに……?」

 肩を掴まれて強制的に顔を会わせられる。青い瞳が冷たく輝き、目を逸らさせない。

「その魔法のことは、誰にも言うな。普段はさっきみたいな結界で防御してほしい。誰かに聞かれたら『聖域魔法』だと答えておけ、いいな。」

「え、なん「いいな。」……はい。」

 僕が答えるとレオンがあからさまに安心した顔をする。

「……そんなにまずいの……?」

「……ソーマは知らないだろうけど、創造魔法はもう何十年も使い手が表れていない稀少な魔法なんだ。だからソーマが使えることがわかれば、確実に狙われる。」

 狙われるって……

「……誘拐されたり……?」

「それだけで済むとは思えないな。洗脳か、薬か、奴隷紋か、強制的に使役させられて魔法を使うようにさせられるぞ。」

「え…………。」

 思わずレオンにしがみついてしまうと、背中に腕が回される。

「大丈夫。俺が何とかしてやるから。なんたって俺は、勇者だからな!」

「うん。」

 頬を寄せるとほんの少しの汗の香りと、とても居心地がいい温もりに包まれる。

「…………なんか、凄く安心する……。」

「そっか。でもここに居ると冷えるから部屋に戻ろう。」

「うん……。」

 レオンが立ち上がったのでそのまましがみつくと、レオンは苦笑しながらも抱き抱えてくれた。

「どうしたよ?」

「……怖かった。」

 地面を歩いていく振動を感じながら、レオンにそう答える。

「……剣と初めて見たし……いきなり攻撃されたし………………レオンが切られそうになったとき、本当に怖かった……。」

 あの男がレオンに斬りかかったとき、息が止まるかと思った。

 あの時叫んで無かったらと思うと、今でもヒヤリとする。

「無事で良かった……。」

「ソーマのお陰だな。あの結界がなかったら危なかった。」

「……役に立った?」

「あぁ。これからもよろしくな?」

「うん!」

 良かった……。勝手なことしたから嫌われるかと思った。

「でも」

「?」

「次からはちゃんと言うこと。勝手なことしたら首輪つけてやるからな?」

 無言でブンブンと首を縦に振る。

 …………あれはマジな目だった。

「いい子だ。」

 頭を撫でられると何故か落ち着く。昔からこうされるのが好きだったからだけど。

「ん……レオン……。」

「大丈夫。ソーマは俺が守るから。」

 少しずつ眠くなってくる。暖かいだけじゃなくて、凄く安心する。僕は魔王で、レオンは勇者なんだけど、どうしてだろう。

「眠いなら寝てもいいぞ?」

「……レオン……。」

「どうした?」

「…………レオン……は……僕が守……るから……。」

 眠い。眠い。どうしてこんなに眠いんだろう。

 レオンからの答えを聞く前に僕は眠りについた。

ストックがつきました。

第8話は8月26日更新予定ですm(._.)m

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