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輪廻の魔王  作者: 鈴鳴
3/11

3話

 白い光に包まれている。

「ここは?」

『また呼び出してごめんなさいね。』

 少し前に聞いた声がどこからともなく響いてくる。

「え、と……神様でしたっけ?」

『はい、地球でも、グレイブヤードでも私は神という呼称を戴いています。』

「今回はどうしたんですか?」

 蘊蓄が流れ出す前に話を先に進める。長いんだよね……。

『いえ、説明し忘れたことがあったのでもう一度呼ばせて頂きました。』

「説明し忘れたこと?」

 むしろ殆ど説明された気がしない。要約したら『貴方は転生します。魔王として頑張ってください。』しか言われてなかったもん。

『はい。貴方の力である不老不死についてと、貴方が本来の世界に戻る方法。』

「え?」

 地球に、帰れる……?

『まずは不老不死についてです。正確には直ぐに生まれ変わると言った方が良いでしょうか。原則的に首を飛ばされたら死にます。貴方の死語直ぐに身体は消滅し、違う場所の何処かで再構築されます。このとき再構築されるのは場所、時間共に無作為に行われます。』

「えっと、場所と時間がランダムって、それって矛盾しちゃうんじゃないんですか?」

『【魔王】は此の世界に存在し得ない、ある意味異物ともとれる存在です。そして異物が作った空間には歪が集まり、歪みが無くなることで正しい世界へと戻していきます。【魔王】が死んだ場合、その場で【魔王】に関する全ては空白となり、辻褄を合わせる為に何らかの異変が起きます。』

「それって大丈夫なの?」

『問題ありません。【魔王】とは治療用のシステムなのです。貴方がこちらにいるだけで、此の世界の歪みを集め、生まれ変わる際に消していく。それを繰り返し、全ての歪みが無くなれば、貴方の使命は終わります。』

「使命が終わったら僕はどうすれば?」

『使命が終わったときには、2つの選択肢があります。1つ目はグレイブヤードに留まり、魔王として生き続けること。もう1つは地球で貴方が死ぬはずの事故を【無かったこと】にし、再び地球での生を歩むこと。』

 それって……!

「使命が終われば、僕は地球に帰れるってこと……?」

『帰ることは出来ます。ですが……出来れば、もう一つお願いしたいことがあります。こちらは達成されなくても問題はありませんが。』

「お願い?」

 まだ何かあるのかな? でも達成しなくても良いって……。

『グレイブヤードに、貴方以外の転生者の存在を感じます。それも、私の力が及ばない所に。その方を探して頂きたいのです。』

「僕以外の転生者?」

『はい。居ることはわかるのですが、途中から何処に居るのかがわからなくて、こちらとしても困っているのです。』

「そうなんですか……でも僕に探せるの?」

『地球から来た、ということはわかるので、その【縁】を伝って必ず貴方と巡り会います。とはいえ、それが誰なのかはわからないかもしれませんが……その方を見つけ出すことが出来れば、生まれ変わりの際に私に教えていただきたいのです。死亡から再構築までには多少のラグがありますので、その間こちらに留まって頂きます。』

「一応頑張ってみます。」

『御協力感謝致します。何か質問があれば、答えられる範囲で答えますが。』

「あ、1つ気になったんだけど、死んで身体が再構築されたときに、それが過去の世界で僕の行動で未来が変わった場合どうなるの?」

『特に問題はありません。時間とは川のようなものです。分流の1つが遮られても他の道から、或いは地下を通じて水は流れて行きます。貴方が変える前の【未来】は貴方が【選ばなかった】世界ということであり、同じように存在はしています。ただ、それを認識することは出来ません。地球ではパラレルワールド、と呼んでましたでしょうか? 解釈としてはそれに近いでしょう。』

「そう……ですか……。」

『別の時間の事なら、心配しなくとも大丈夫ですよ。貴方が使命を終えた時点で【貴方が一番正しいと思える世界】で時間が固定しますから。』

「え?」

『【魔王】が存在していることにより、時間という川が幾つもの流れに別れるのです。【魔王】そのものが役割を終えれば、別れた時間は全て1つにまとまります。その時、貴方が最後に居た世界。つまり【貴方自身が望んだ世界】になります。【魔王】の特典……力の残滓ですね。ですので貴方は自分が正しいと思うように此の世界で生きてください。』

「えと、ということは特に人類を攻めこんだりしなくても良いということですか?」

『そうなりますね。ただ、勇者と呼ばれる存在を人間の国家は送り込み、貴方を殺そうとしてきます。』

「え、どうして……?」

『魔界に存在する魔石やその他素材を求めて、ですね。また、貴方の配下となる魔族には、貴方の性格による影響を直に受けます。貴方が戦いたくないという意思を強く持てば中位〜高位の魔族に関しては温厚に変わりますし、低位であっても過半数は人族と争うことをしなくなると思います。しかしながら、力の及ばない部分も多々存在し、所謂魔獣と呼ばれる存在は本能のままに戦います。これらがまた、魔王の討伐を求める声を高めます。』

「そうなんですか……」

『はい、真に残念ではありますが……。』

 勇者……勇者……

「あの……」

『……レオン・アルディーハはグレイブヤードの真の勇者です。他の国にいる紛い物とは違い、ただ一人貴方と戦い勝ちうる存在です。』

「……………………。」

 レオンは、僕を殺す、のか……。

『しかし』

 意気消沈した僕に、神様は続ける。

『勇者が貴方を殺さない世界も、同様に存在しえます。』

「え?」

『貴方は【魔王】であり、【世界を定める】力があります。貴方の行動次第では人も魔族も、皆が手を取り合う結末も0ではありません。』

「……………………。」

『これから先、辛い未来が何度も訪れると思います。ですが、貴方はその度に知識を得ます。そして、正しい世界へと導くことが出来れば、きっと……。』

 そのとき、光が揺れ出す。

『……もう時間ですね。続きは貴方が再構築されるときにしましょう。では、また……。』

 光が弾け、黒く染まった。

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