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輪廻の魔王  作者: 鈴鳴
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2話

 取り敢えずレオンから聞いたことをまとめてみた。

 まずこの世界はグレイブヤードといって、大小含め多くの国家が存在し、現在は5つの国が覇権を争っているとかいないとか。

 一番大きいのがミグハイト王国。今僕たちが向かっているのもこの王国だ。この国は人族が殆んどだが、他の種族も住んでいる。

 次にセイクレイド神話国。こっちは人族至上主義だとかであんまりよろしくないらしい。

 三番目はビアスタ共和国。小さな国家の集まりらしいが、ここは獣族の国だそうだ。

 四番目はアルボール国。こちらは樹族、エルフ達の国らしい。

 五番目はミーテイルグ。土族、ドワーフの国だそうだ。

 そして種族は先程言った四種族以外に魔族や魔獣、精霊なんかも含めると大量の種族が居るみたい。







「……と、まぁこんな感じか? 後はおいおい、ってことで。」

 いつの間にか日は傾き、夕暮れになっている。

「今日は野宿かな、場所を探そう。」

「あ、はい。」

 少しだけ足を早め、良さげな場所を探す。しばらく歩き少しだけ開けた場所を見つけると、今日はそこで野宿をすることになった。

「野宿したことは……って、無いよな。」

「えっと……はい。」

「じゃあソーマは木の枝を集めてくれるか? その間に準備しておくから。あ、あんまり遠くに行くなよ?」

「うん、わかった。」

 一言返し、大きく頷くと木の枝を探しに少しだけ茂みの方へ向かう。

 落ちている枝を一抱え分くらい集めて、レオンの所に向かう。

「枝拾ってきたよー。」

「お、サンキュー。」

 木の枝を抱き締めるようにして持っていくと、既に寝床が作ってあった。しかし

「なんで寝床が一つだけなの?」

「ん? そりゃ誰かが見張りしなきゃいけないだろ?」

「いや、でも……」

「大丈夫、一晩くらい平気さ。明日には町に着くだろうし、な?」

 そういって微笑まれると返す言葉が無くなってしまう。確かに自分には見張りなんて出来ないと思うし……でも……。

「『炎よ、我が手に宿り熱となれ』」

「わっ!?」

 レオンが違う言語(ただししっかりと翻訳はされている。どういう仕組みだろう?)で何かを呟くと、木の枝がみるみる乾燥し、薪に変わった。

「魔法は初めて?」

「はい……僕の世界には無かったので……。」

「じゃあ、特別に……『祈りよ届け、此の世界で何より………君………』」

「?」

 どうしたんだろう、所々翻訳されていない。と僕が疑問に思ってると

「わぁ……!」

 レオンの手元から仄白い光が浮かび上がり、蛍のように辺りを飛び回る。

「凄いだろ?」

「はい! とっても綺麗ですね……」

 幻想的な光景に目を奪われていると、不意にレオンが目の前に立った。

「どうしました?」

「いや……なんだ、その、これから一緒に頑張ろうな。」

「あ、はい! こちらこそよろしくお願いしますね。」

 仄かに強く輝いた光に照らされて、ホッとしたような笑顔を向けるレオンに自然と口元が綻ぶ。

 しばらくの間、光が収まるまでそのまま幻想的な輝きを眺めていた。







「さて、んじゃ晩飯にすっか!」

 テキパキと焚き火を作り、飯盒(のような吊り下げれる土台)を用意してレオンが言う。

「喰えないもんあるか?」

「一応何でも食べれましたけど、こっちはどんなものを食べるのかよくわからないので、何とも言えません。」

「あ、それもそうか。んー……取り敢えず今日は俺の好物作るか。」

「見ててもいいですか?」

「材料入れていくだけだから面白くないと思うぞ?」

「こっちの食材も気になるから大丈夫です。」

「そか。じゃあ取り敢えずこれがファティボアーの乾燥肉、んでこれがクシュンの実を乾燥させて磨り潰した物。んでこれがリオウの実とチーズ。後は適当に野菜を入れて煮詰めたら完成。」

「シチューみたいですね。でもどっちかというとフォンデュかな?」

「? よくわからんが俺の故郷だとこれはボルゥンって呼んでたぞ。」

 グツグツとチーズが沸騰する音が聞こえ、食欲をそそる臭いが漂ってきた。

 レオンは「念のために持ってて良かった」と木の器を二つ取りだし、片方を僕に渡した。

「いただきます。」

 手を合わせてスプーンで口に運ぼうとしたとき、レオンの目線に気付いた。

「え、と、どうしました……?」

「え、あ、い、いや。いただきますってなんだろうって。」

 慌てたように答えるレオン。確かに日本以外じゃあまり目にしないから、こっちの世界にあるかは微妙だよね。

「んと、これは食べる前の感謝の言葉です。あなたの命を頂きますって。」

「そうなのか、じゃあ俺も……いただきます。」

 レオンも手を合わせてボルゥンを口に運んだので、僕も食べることにした。

 少し固いけど、肉自体にも下味をつけてあったようで噛めば噛むほど肉汁と香辛料の味が口一杯に広がる。チーズを使ったスープも甘辛くてどんどん食べれそう。

「美味しいです!」

「それは良かった。」

 何故か頭を撫でられた。少しくすぐったい。




「ご馳走さまでした。」

「ご馳走さまでした。」

 レオンが真似をして手を合わせ、使った鍋等を綺麗に洗って片付ける。

「ソーマ。」

「はい、何ですか?」

 人心地つき、そろそろ眠くなってきた。

「今日は俺が見張りをしてるから、ソーマは寝てていいぞ。」

「え? レオンさんは寝ないんですか……?」

「俺が寝たら誰が見張りするんだよ。」

 そういえば魔法とか異世界の料理とかですっかり忘れていた。

「じゃ、じゃあせめて交代で……」

「……こう言ったらアレだけどさ、ついこの前まで一般人だったやつに、見張りなんか出きるわけねーだろ? 大人しく寝てろ。」

「でも……って、わっ!」

 文句を言おうとしたのだが軽く持ち上げられて寝床に運ばれた。そのまま頭の上に手を置かれ起き上がれない。

「慣れてないから疲れてるだろ? いいからさっさと寝ろよ。」

「ん……ぅ……」

 額に置かれた掌から伝わる熱に思考がボンヤリとしてくる。

「ごめ……ん…………」

 そのままゆっくりと僕の意識は沈んでいった。

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