10話
かなり遅くなってすみません。
リアルの事情が一段落したので更新再開します。
結局その後は何事もなく朝を迎えることができた。
「おはよー……。」「……おはようございます。」
テントからのそのそとアウルとシェナが出てくる。二人とも微妙に眠そうで顔をこすっている。
「二人ともおはよう、顔を洗ったらご飯にするからね。」
「はーい……。」「……わかりました。」
猫だけど水は嫌いじゃないらしい。
レオンが寝ている間暇だったため、携帯食料を簡単に調理してみた。
堅焼きの奇妙な味がするカロリー○イトみたいな感じだったから、磨り潰して粉にした後溶かしたバターと粉ミルクみたいな何かと水、砂糖を入れてよく練って焼き、パンケーキ風にしてみる。
もともと携帯食料というくらいなら栄養バランス(という考え方があるのかは知らないが)は良いと思うし、甘いから脳に糖分が回って目も覚めるだろう。
「「「いただきます!」」」
「はいどうぞ。」
「「「ご馳走さまでした!」」」
「はやっ!」
無言であっという間に平らげた三人は、満足そうに笑みを溢している。
「携帯食料がこうなるとはな、人数が増えて調理する余裕が出来たから、一人旅よりも食事が楽しみになってくる。」
旅の間の楽しみは食事くらいだ、とレオンは言っていた。
でも、一人旅だと調理に時間はかけられない。だから基本的に携帯食料と乾燥した果物、チーズだけで済ませることが多いらしい。
「喜んでもらえてよかった。頑張って色々作ってみるね。」
今回レオンは、四人いるから調理器具や食材も分担して持ち歩ける(獣族は子供でもかなり力持ちだった。)ので、色々持っていくことにしたようだ。
「期待してるからな。」
頭をくしゃくしゃと撫でられる。髪の間を指が通り抜けていく感触が心地いい。
「俺も! ソーマにぃちゃんの飯楽しみにしてるっ!」
右手にしがみつくアウル(耳がピクピクしている)が可愛くて一瞬理性が飛ぶかと思ったが、レオンに強く引っ張られて元に戻る。
「さっさと準備して行くぞ。」
「「「はーい。」」」
何かを吹っ切るようにレオンが強く言い、それぞれが荷物を片付け始めた。
*
そして森の中を歩く。今日は野獣も出てこず長閑だ。自然も豊かなので道すがら木の実を集めていく。
「?」
ふと、視線を感じて立ち止まった。とはいえ辺りに人影は無い。
「どうした?」
「いや、誰かに見られてるような気が……?」
「アウル、シェナ。」
「……いえ、私達以外の臭いは感じません。」
「俺も。」
……気のせい、かな?
「『探索』」
不可視の魔力が網となって自分を中心に膨らみ、広範囲を包み込んでいく。
「…………あ。」
この前レオンと戦っていた赤い宝石の男だ。でも、気付かれたみたいで直ぐに走り出している。
「ソーマ?」
「この前の人。額に赤い宝石の付いてる。」
心配そうに顔を覗き込んできたレオンにだけ聞こえるように囁く。レオンは一瞬顔を強張らせ、訪ねてくる。
「どこに居る?」
「方角はちょうど僕の後ろ、距離は結構あったけど探索魔法に気付いて逃げたから今はわからない。」
「しつこいな……。尚更急いで進むか……。」
レオンは少し何かを考えるように黙り込み、
「アウル、シェナ、予定変更だ。一気に走り抜けるぞ。」
「りょーかい!」「わかりました。」
荷物を背負い直したアウルとシェナが煙に包まれる。あっという間に獣の姿に変わると、僕達の分の荷物まで抱えていた。
「え……と?」
「街に入ってしまえば滅多なことはしてこないからな。走る。」
「走るって最低後二日はかかるんじゃって、わっ!」
「あんまり喋るなよ、舌噛んでも知らねーからな。『加速』!」
レオン、アウル、シェナの体が緑の魔力に包まれる。
「行くぞ!」
「おう!」「はい!」
「ちょ、ま、ぎにゃああああああ!?」
レオンに抱き抱えられると、物凄い勢いで世界が流れていく。
唯一アウルとシェナだけが流れていく景色の中ではっきりと見えるが、ジェットコースターにでも乗ってる気分だ。最初は焦ったが、慣れてくると割りと楽しい。
……とまぁそんな風に気楽に考えていられたのも束の間。
「レオンー。」
「どうした?」
「ヒマー。」
「……………………。」
何でそんな顔をするのかな。同じような緑と茶色がひたすら流れていくだけの様子は、長時間見ていたら確実に酔うのだよ。とはいえ寝たら落ちるし。
「このまま走られたら多分吐くよ?」
「吐いたら捨ててく。」
「酷っ! じゃあ吐かないように何か喋ってよ!」
「しっかり掴まってくれたらもっと急ぐが?」
「そう言われましても……。」
現在の体勢は俗に言うお姫様抱っこ。この状態から更にしっかり掴まるとなると……。
「何を考えているのか大体想像はつくが、添い寝してる時点で考えるだけ無駄だと思うぞ。」
「……それもそうか。」
レオンの首に回した腕に力を込めて密着し、身体をしっかりと固定してもらう。
「うし、飛ばすぜ!」
「……っ!」
速度が増し、風当たりが更にキツくなる。ってか、さっきのも大分キツかったけどこれはキツイというか痛い!
「えっとえっと……『安らぎの風、その加護を我等に』!」
呪文を唱えた瞬間風の抵抗が嘘のように消え、速度が更に上がったのを感じる。
「……ソーマ、今何かしただろ?」
「風の加護? ってやつが思い浮かんだから唱えたら出来た。」
「……規格外だな、本当に。とはいえこの調子なら今日中に王都まで行けるかもな。」
「本当?」
「ま、ちょっと無理してるから明日は筋肉痛確定だけどな。」
カラカラと笑いながら流れる景色が加速していく。風の抵抗が殆ど無い状態の為、体力の消耗も少ないようだ。
まだ見ぬ王都に、少しだけ期待し胸がドキドキする。
このときはまだ、そんな風に安易に考えていた。




