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神の器  作者: 紅きtuki
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第8話 「悲嘆」

「朝っぱらデートか? ……まったく今の若者と言ったら……それに夏輝君でしたっけ? 

何ですか、その派手なアクセサリーは! もっと身だしなみに気をつけなさい!」


げっ? 夏輝だけがそう呟き、青い顔をして緊張したそぶりを見せた。

夏輝に注意をしてきたこの人はノサキ学校の副校長だった。しかし裏の顔も持っている、

実はこの人は参剣機関の副理事長も務める。参剣機関の地位的にはナンバー2だ。

しかし、参剣機関は3人の手によって作られた機関なので実力的にはナンバー4といったところか。

この人は夏輝にとって教師であり、上司だった。

そんなお偉いさんに話しかけられては夏輝も青い顔をしざるを得ない。 

実は夏輝は学校にいる時も常にこの人を避けてきた。気に入られなかったら機関を追い出される……そう思ったのだろう。

夏輝も機関に養ってもらっている立場なので美月同様、機関を追い出されては行く当てがないのだ。


「はっはっはっ、な~んてな。横にいるのは美月ちゃんだったかな?」

ほんとしらじらしい人である。夏輝の事は機関で知っているのにわざと教師顔をしたのだ。


美月はノサキ高校に入学した時からこの人を知っていた、もちろん教師として。

と言うのも記憶を飛ばされ、機関に入って間もない美月はこの人がそんなお偉い人だと知っているはずもなかった。

だから、夏輝が青い顔をしているのは学校で何かやらかしたとばかり思っていた。


「は、はい! 覚えてくださったんですね!」

もちろん生徒としてだ。


「もちろん覚えているとも、以前私の上に立っていた、奇跡の月姫。少なくとも私はそう思っていた。

今では、忘却されし月姫と呼ばれているがな。」


?? 美月はちんぷんかんぷんだった。立場が教師であるこの人から、月姫や奇跡や忘却などの言葉を並べられても

意味がわからないといった、状況である。美月も相手が神剣関連だと知っていれば少しは理解しただろう。

そんな中、夏輝がため息をつきながら片手で頭を抱えていた。


「ん? 何も説明してないのか、夏輝。私の事も、美月ちゃんが機関でどんなふうに言われているのかも」

ここまで言われても美月は理解してなかった。話す順序がまともだったら理解していただろう。


「……そうだ、そこに喫茶店がある、おごってやるから入りなさい」

そう言われ2人はとぼとぼついて行った。


そして店に入った途端、店員の目線がこの人に向けられた。むりもない白衣を覆った人が入ってきては驚くだろう。


「案ずるな、私は医者ではない」

そこかよ! っと美月と夏輝はつっこみを入れかけたが、踏みとどまった。

この人はどこかずれている様だ。店員は苦笑いをしながら席まで案内した。


この女性は木春きはる 春美はるみといい、年齢は教えてくれなかった。

本人は名前に春が二つもあるから覚えやすいだろうと言っていたが名字も名前も似ているから

逆に覚えにくかった。そしてここで初めて美月はこの木春という人が機関の上司だという事を教えられ、

上司だという事がわかったとたん、夏輝同様青い顔をしだした。

やはり追い出されては行く当てがないのだ。


木春の自己紹介が大体終わったころにオーダーしておいた、飲み物とパフェが来た。

パフェは木春が受け取った。そしてパフェを食べながら説明を続けた。

「なぜ、白衣を着ると医者に間違えられるのか?」


「そこじゃありません!」

2人は思わずつっこんでしまった。やはりこの人はどこかずれている様だ。

そもそも、白衣姿で外を出歩くだろうか。

ユニークな人だ、血液型はABに違いない。美月はそう思った。


「残念ながら私はAB型ではない、A型だ」


「へ?」

夏輝はとっさにそう呟き、意味がわからない様な顔をしていた。

その横で美月は驚いたような顔をしていた。


「驚いたかい? 私の能力は相手の思っている事がわかるんだよ。

テイクメモリー(思考を読み取る者)って言ってね。私もこの能力はあまり好んでいない。

好きな時に相手の心が読めるようになりたければレベル8に成らないといけないんだ。

それが現在レベル7でな。やれやれ、困ったのもだ」

黙々とパフェを食べながら、黙々と説明を続けた。


2人は驚きを隠せないようだ、思っている事がわかるなんて反則じゃないかとという気持ちだった。

こんな事を考えてる今もこの考えが読みとられているのだろうか。そう考えるとこの人とは一緒に居たくなくなった。


「まったく、私と居たくなくなるなんて失礼な奴だな、あと夏輝お前、私の事をずっと避けていただろう」


夏輝は一刻も早くこの場所から消え去りたかった。

「という事は俺が美月に何も説明していなかった事もお見通しだったんですね!?」

夏輝は美月と同じように話をそらせるか試してみた。

だが夏輝は動揺してこの考えさえも読みとられている事を忘れていた。 


木春はヤレヤレという顔で「まぁな」と告げると、「本題に入るぞ」と言いパフェをたいらげ、コーヒーをオーダーした。

木春が言うには機関内ではせっかく美月が帰ってきて戦力になると喜んでいたが、夏輝から力を失っていると報告を受け

『ぬか喜びをした』と機関の上の方のメンバーから逆恨みを受けていると言う。

美月は何も悪い事はしていない、しかし逆恨みをされているのは事実。木春は代わりに頭を下げた。

では、なぜ逆恨みをされているか、そしてそれもなぜ上の奴らかと言うと、

近いうちに機関と機関の間に戦争が始まるかも知れないからだと木春は特別に教えてくれた。

だから今は一刻も早く戦力になる奴がほしいのだ。

そして、なぜ上の奴らなのかは、戦争の事を知っているのは今のところランクが高い者だけだからだ。

それはつまり事が進み、やがて機関のメンバー全員にこの話が渡ると、そいつらからも逆恨みを受けるかも知れないという事だ。


戦争の相手がどの機関かと夏輝は聞いた、木春は暗そうに答えた。

「龍門機関だ……」


美月と夏輝に衝撃が走った。まさかあの恐れられている、龍門機関が相手だとは……

2人はてっきり今東の件や監禁の件などがあったから死封機関だとばかり思っていた。

しかし、2人の中で話がつながった・・・葉乃愛はのめがなぜあんな仕事をしているのかが、わかったのだ。

……そう……戦力になる者を集めていたのだ。


「すまない……私がもっとしっかりしていれば、それにしてもあのお方達は何を考えているのだろう……

よりによって、龍門機関と戦争とは……それに戦争の火種も聞かせてくれない……」


木春が言うあのお方達とは、参剣機関を作くったとされる一番上の三人だ。


「私が言えるのはこんなものだ……では失礼する。これは私のメアドだ。あ、そうそう機関からもらった携帯では

通信内容が見られているから、あまりプライバシーな事には使わない方がいいよ。あと今のは企業秘密だから

あまり人に言わないでくれよ?」


そう言ってコーヒーを飲み終え立ち去って行った、代金をテーブルの上に置いて。


「……ねぇ、夏輝……私が逆恨みされてた事、知ってたの? あと、戦争が起きる事も?」

美月はもぞもぞと暗そうに聞いた。


「ああ……だが相手が龍門機関と言う事は知らなかった……」


2人は木春にもらった代金を払い、店を後にした。

結局、2人は出かけることなく家に帰ったのだ。


その夜、美月は苦しんでいた。自分は何もしてないのに恨まれる。

もし、自分の機関の奴らに会ったら、何されるかわからない。

そんな機関に借りている物すらに恐怖を覚える。

携帯……エアコン……ベット……テレビ……そしてこの部屋……

怒って、恐ろしくて、悔しくて、悲しくて、さまざまな感情を美月を苦しめていた。

この行き場のない負の感情は美月をとても追い詰めていた。

そのうち力のない自分が悪いと思うようにもなってしまった。

そんなとき、自分の家のインターホンが鳴った

涙目になっていた、目を拭き、目の周りを赤くしながら玄関に向かう。


ドアを開け、そこに立っていたのは夏輝だった……

それだけで泣きそうになるのに目が合った瞬間、

大丈夫か? と声をかけられた。

たったそれだけで、美月は号泣してしまった。

最初はジワリと目に涙を浮かべ、やがて

子供みたいに、大きな声をたて、近所迷惑なんじゃと思うくらいに号泣した。


「怖い……怖いよぅ」

美月は、夏輝が声が聞き取りにくいと思うほど泣きながら、

夏輝にしがみついた。


「大丈夫……俺が守ってやるから。第一お前を助けだしたのも俺じゃないか、なっ? 大丈夫だ」

美月は手で目をこすりながら黙って頭を縦に振った。

その夜、夏輝の部屋で夏輝は美月の話を夜が明けるまで聞いてやった。

こういうシーンは書いてて恥ずかしくなってしまいます。

いやっ~~~~恥ずかしいーーー

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