第7話 「仕事」
今、3人は黙々と暗い裏路地を歩いていた。
3人というのは美月、夏輝、そして、葉乃愛である。
黙々というのはやはり昨日あんな事があれば、会話は弾まないのもである。
美月と夏輝は不安そうに歩き、葉乃愛は黙ってはいるものの、楽しそうに歩いている。
そんな空気の中、美月は勇気を絞って葉乃愛に話しかけてみた。
「あんた強いんだね、レベルはどれくらい?」
たったこれだけを言うのに美月はまるで、今からバンジージャンプをしたくないのに
させられるという、恐怖で引きつったような顔をしていた。
そんな中、葉乃愛は「そう? レベルは6だし」っと満更でもなさそうに
得意げに答えて見せた。
レベル6……美月と夏輝はあの時の負けた理由はこれだと、決め付けた。
そうしてまた、空気が重くなりかけたときに葉乃愛は
「ウォーターマニピュレートの中では最強だし! だって毎日修行してるし!」
とさりげなく自慢してきた。
何だ……この子は……美月と夏輝はあっけにとられている中、葉乃愛から
目的の場所に着いたと告げられ、周りを見渡すとそこには大きな噴水、ブランコ
鉄棒、すべり台に砂場、そしてジャングルジムとそこはまるで公園のようだ。いや、公園だ。
ゴミが少々落ちていて、大きめのゴミ箱がひっくり返されたいる。
もちろんその公園で遊んでいる子供たちも数人いる。
その子供たちは葉乃愛を見ると、一目散に走り出した。
しかし美月と夏輝は逃げだした。なぜかと言うと子供たちは泥んこなのだ、葉乃愛の近くにいると
巻き添えを食らうかもしれない、そう思って一目散に逃げたのだ。
そしてしばらく逃げ、立ち止まり、後ろを振り返ると葉乃愛率いる子供の軍団がものすごい速さで
追いかけてきた。
「ひぃぃぃぃぃぃ」
「よごれるぅぅぅ」
美月と夏輝は個々に叫びをあげながら再び全力疾走した。
5分くらいだろう、公園を3周してやっと、捕まった。
この2人がどうなったかはわかるだろう、そう言葉どうり泥んこになったのだ。
「何で逃げるし?」
葉乃愛は息切れ一つしてない
「いや……だって……汚れるじゃん……汚れたけど……」
美月は息切れしながら答えた
夏輝はこの子供は何かと聞くと、葉乃愛は無視し子供たちにお菓子を配っていた。
葉乃愛はお菓子を配り終わると、唐突にこの2人混ぜて遊ぼっかなどと言い出しやがった。
それから3時間、美月と夏輝は子供たちと鬼ごっこ、かくれんぼ、だるまさんが転んだ、缶けり
などの様々な遊びに付き合わされた。最初こそ嫌がっていたけど、遊びだしたらノリノリで遊んでいた。
それから帰り道、3人は何事もなく笑顔で帰っていた。
「ところで、なんだったんだ? あれは? 手伝ってほしい事ってあれか?」
夏輝は満足そうに聞いた
それからいろんな話をして美月と夏輝は家に帰った。だがその時二人に笑顔はなかった。
美月はお風呂に入り、疲れているのか一目散にベットに向かった。だがなかなか寝付けず、今日の事を考えていた
葉乃愛が言うにはあの子供たちは親を失った、孤児だと言う。
そして葉乃愛の目的はその子供たちと遊んであげるなどと言う事ではなかった。
葉乃愛の目的……それは、機関からの命令だった……なぜ機関がこんな命令を下すかと言うと、
あの子供たちの中に近い将来、強い神剣を持つ可能性がある、子供がいると言う事らしい。
葉乃愛はその偵察に来ていたのだ、この話をしている時の葉乃愛と子供たちと無邪気に遊ぶ葉乃愛とは
顔が全然違った。私なら偵察に来ているというのに、あんな無邪気な顔はできない。彼女はああ見えて一流のプロなのだ。
同じくらいの年齢なのに強さ、そして仕事っぷりどちらも差をつけられている。美月はそう考え悔しさのあまり壁を叩いていた。
「うるせ……何暴れてるんだよ、美月のやつ……近所迷惑だっつうの……」
しかし、葉乃愛の奴があそこまですごいとは、俺なんかには任せて貰えそうにない仕事をこなしているんだな……
実は葉乃愛のしている仕事はメンバーの勧誘系に近いもの。メンバーの勧誘というのはかなり上の仕事なのだ
壱拾参機関……怖ぇところだ……
美月のやつ嫉妬してるんじゃないか? 悔しがってる姿が目に映る、そうだ、明日遊びに誘ってやるか!
夏輝は笑いながら寝た。
「何笑ってるのかしら? うるさいわね……」
そうだ、明日遊びに誘ってあげようかな……
「夏輝、今日どっか行ってあげてもいいわよ!」
「美月、今日どっか連れて行ってやってもいいぜ!」
同時だった。
珍しくも美月が朝8時という時間帯に起きたのだ。そしてその朝っぱらからマンションの廊下で相手のインターホンを押しに行こうかと
ドアを開け、二人の顔が同時に顔を出しこのような事が起きた。美月の服装はジーパンにドクロのマークがプリントされた黒の半そでに
チャック付きの白の軽い上着を着ていて、お出かけモードだった。そして、対する夏輝はピアスにネックレス、腰にチェーンという派手な
アクセサリーを付けた、いかにも若者らしい格好で出てきた。
が、ちょうど服の大部分は開けたドアで隠れていてお互いあまり認識できてなかった。
同時に遊びに誘い、お出かけモードの2人。しばらく見つめあったが、恥ずかしくなって部屋に閉じこもった。それも同時に。
しらばくして、美月のインターホンが鳴り、ドアを開けた先にいたのはさっきまでの面影のない、全身ジャージ姿の夏輝だった。
「あ、あれ? 遊んでほしんだって、いいよいいよ、ちょうど暇だっし、じゃあ用意してくるわ」
そう告げて夏輝は帰って行った。
そして、さっきの若者の姿に戻った夏輝は美月の家のインターホンを鳴らした。そして美月が出てきた。
そこで夏輝が見たものは、さっきまでの面影のない全身ジャージ姿の美月だった。
「あれ? そんな格好して、あ……わかった! 遊んでほしいんだね! わかったわかった。じゃあ着替えてくるよ」
そう言って美月は着替えに行った。
……あれからしばらく、行き先も決まらず2人でぶらぶらと黙って歩いていた。
本当はいろんな話をして、ワイワイしながら歩きたいのに素直になれない2人だった。
そんな中、いかにも理科の先生または医者が着ていそうな白衣を覆って、
目にクマを作っている女性が話しかけてきた。
新キャラ登場です。
いったいどんな人なんでしょう。
今はネタバレ防止のために多くは語れません。