第17話「奇跡」
北神は、にやっと笑い一騎打ちが始まった。
だが、横で夏輝の声が聞こえる。
「いや、俺がやろう。」
そう言って神剣使いたちの輪に入ってきた。
またしても北神はにやっ、と笑いこう告げた。
「ふふ、よろしく頼むよ。」
夏輝は、ああ。小さく言い、剣を構える。
その横で葉乃愛が心配そうに見ている。
そして夏輝は雄たけびを上げるように叫んだ。
「火之迦具土神」
敵は、は? と言う顔をして夏輝の顔を眺める。
そうすると、夏輝の剣が見る見るうちに火を帯び、
やがて、3mくらいの大剣となった。
そして、その剣を地面に捨て去った。
「バカだな~お前!」
敵の心剣使いはその機を逃さずとばかりに斬りかかる。
だが、斬られたのは心剣使いだった。
その事に理解が出来ない様子。
「な……ぜ……だ?」
「ふん、やはりな。お前たちは手から落とした剣を手にワープさせれないだろう?
だが、俺たちはそれが出来るんだよ。」
「く……そ……」
そう言って心剣使いは悔しそうな顔を浮かべ消滅した。あと9人。
そんな状況にも関わらず老人はにやにやと笑っている。
今さらだが、夏輝の剣が轟々と音をたて燃え盛っている。
その周りの温度ときたら夏の猛暑とは比べ物にならない。
それゆえ、自然と夏輝の周りから神剣使いたちが距離を置く、
そうしてる内に一騎打ちのこのフィールドが広くなっていく。
「さぁ次は誰だ?」
「くっくっく、いきなりそんな必殺技見たいなもんをよく、しょっぱなから使うな
笑えるぜ。」
そう言うと自然とフィールドに入ってきた。
2人が構え戦闘が始まろうとした時、フィールドの外で大きな音がした。
1000人余りの人でよく見えない上によく見ると老人の姿が見えない
夏輝は高く飛び確認したらそこには美月が倒れていた・・・
そして倒れている美月の前に老人が立っていた。
不意打ちだった。
「何故じゃ? わしは究極の力が得られるはずだった。全て、狂いなしにやり遂げたはず。
なのに、なぜ終焉の祖は反応を見せない?」
「う……あなたの目的は何? 奇跡で起こせないの?」
「我々、心剣使いは完璧ではない。一見完璧そうに見える奇跡を起こす力も使う者によっては規模が違う。
中には世界をひっくり返せる奴がいるかもしれない。またその逆に石に躓きこける予定だったものを躓かなくする程度の奴もいる
だが奇跡を起こす力は素晴らしい。しかし簡単な話使う者のスペックが低ければ出来る事も限られてくるのじゃ。
つまりわしはそれだけの者だったと言う事じゃ……しかしのぅ、わしの持っているもう一つの能力、シャットハートは、
能力を吸収する事が出来る。もうわかるな? お前はわしの生贄になるのじゃ、これで128人目のマグスマスター!」
美月は恐怖で引きずった顔で奇跡を願うような顔をしていたがそれも虚しく
美月は老人の心剣で胸を刺されてしまった。
そして美月は倒れながら解放されたような顔で涙を浮かべ瞳を閉じた。
その顔は女神のようにとても美しく、見ている人を吃驚させた。
時が止まっているんじゃないかと思うほど時間がゆっくり進む
そして神剣使いたちはあまりの驚きにより何もする事が出来ない
北神やレーテーやタナトスまでも。
そうしている内に美月はやがて、パタンと女の子らしい軽い音をたて仰向けに倒れる。
たった人が倒されるそれだけなのに誰も動く事は出来なかった。
1人を除いては。
「貴様ァ! よくも美月を!」
怒りに燃えあがった夏輝は老人の元に走り斬りかかった。しかし
分解……そう表現するのが適切だろう。
夏輝の剣は先から柄までが砂のように崩れ、空気中に消えていった。
夏輝は声も出ない様子。
「ふぉっふぉっふぉっ。エレメントディスパッチは原子を壊す事が出来る。
しかしわしは奇跡を起こし、原子を操る事が出来るのじゃ・・・」
夏輝は絶望の顔を浮かべていた。
「じゃあのぅ、少年よ」
夏輝の指が砂になる。それはだんだん手の甲まで登りつめてきた。
誰もどうする事も出来ない。夏輝もとうとう諦めの顔を見せ始めた。
不思議な事に痛みはない。しかし感覚がなくなって行く。
空気に触れているという感覚が。そして、夏輝は笑顔で言った。
「美月ごめんな。俺、お前を助ける事が出来なかったみたいだな。なっさけねぇ。」
「おい、レーテー……お前の力であれ治せないのかよ?」
レーテーの横に来ていた北神が驚きのせいで表情を変えれない顔で問う。
「奇跡とやらが働いていて無理だな……」
そして同じく表情変えずに答える。
老人は拳を強く握り声を出さずに笑いながら目を閉じる。
笑いながらと言うよりは、にやつきながらの方が適切か
「大丈 。私 助け る。今度 私 て る」
「美月? 美月か? おい! なんて? 今、なんて言った!?」
すると夏輝の心で声が聞こえる
―――今度は私が助けてあげる―――
夏輝にその声が聞こえた時、夏輝の砂化が止まっていた。
いや、それどころか見る見るうちに元に戻っていく。
1回死んだ感覚が戻っていくという感覚。不思議な感覚だった。
「何!? 何故じゃ? 何故、元に戻っていく!?」
そして周りに衝撃が走る。
血だらけになった少女が立っていた。
目をつむり、無表情で立っていた。
悠々と凛として立っていた。
赤かった服はあっという間に元に戻り、傷が癒えてく。
そして蘇った奇跡の月姫が言う。
「全て元に戻す」
「全てじゃと? いったいどの規模の話をしとるんじゃ?」
「あなたの苦痛を解き放つ……」
世界が光に覆われた。
そして何の変哲もない日常……
相変わらず、夏輝にべったりの葉乃愛にイラつく美月。
3人は買い物の途中に昼食を何にするか決めているところだった。
平和そのものだった。
「昼何にする?」
「パスタがいいし!」
「いや、ラーメンにしよ!」
バッサリと意見が分かれる2人、お互い睨みあい火花を散らす。
「じゃあ、間を取ってそばはどうだ?」
「賛成だし! 夏輝君の提案する物なら何でもいいし!」
「む……じゃあ、私もそれ食べたい。」
こうして昼食はそばに決まり、そば屋さんに向かう3人。
なぜか美月はこの時、
『この平和が一生続きますように』
なんて、性に合わない事を願っていた。
はい、最終回です!
かみうつもここまで来ましたね。はい~
あ、神の器、略してかみうつです。
神の器=かみうつ です。
無事に終わらせることが出来ました。(無理やりと言う事は置いといて^^;)
過去の作品なんで、意味不明な所もありましたが、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!!
一応2期的なものも、あるんだけど気分しだいで投稿します。
それでは皆さん、次は2期で会いましょう。see you