第16話「千争」
「明日、戦争が起きる事を。」
レーテーはのんきに言った。
「そうだった! って何であんたが知ってるの?」
美月はすかさず問う。
「何を言ってるんだ君は? 私はこう見えて龍門機関を統べるものだぞ。
あれ? もしかして知らなかった?」
レーテーのその発言により三人は固まった。
おかしい、この男が何を言ってるか分からない。
龍門機関を統べるのはタナトスと呼ばれる男だけ、
この男がそんな地位に着ける事はまずないのだ。
三人はこのレーテーという男とたくさんの時間話し合った。
戦争まで時間がないと言うのに……
しかしその話し合いで得た事は大きかった。
なんと龍門機関が戦争の為に手を貸してくれるそうだ。
それとタナトスという階級などないそうだ。
しかしこの男の言う事はいまいち信頼性が欠ける。
そこで、ほんとにそんな権力を持っているのか問いただすと、
何とあの城に連れて行ってくれるそうだ。
しかし、これが美月たちをおびき寄せる罠だったことを考慮して
それは遠慮しといた。
そこで、レーテーはこんなこと言ってきた。
「タナトスとやらの名前は知ってるか?」
美月たちは答えられなかった。
それもそのはず、美月たちはあの男の名前など知らないのだ。
とすれば、レーテーからの信用もないのはず。
お互い、言ってる事は本当なのかもしれないのに、
それを証明できないという事態に陥っていた。
しかし今は一刻を争う。
この男を信用して1000年前の奴らと戦うか。
信用せずに、負けるか。このどっちしかない。
美月たちは結局この男を信頼して一緒に戦うことにした。
あと、残るは死封機関のみ。
この男にもついてきてもらって説得すことにした。
だが死封機関がどこにあるのかなんて、美月たちが知ってるはずもなかった。
そこでレーテーは死封機関に知り合いがいると言い、案内してもらう事にした。
信用はなかったが……
しかし、ついた所は普通の家。
もう普通の家としか言いようがないような普通の家に着いた。
そこで、インターホンを鳴らし、ずかずかと入って行く。
そこに居たのは、今東と西崎と彩花だった……
美月とその三人は目を合わせた瞬間、驚きで声を漏らしていた。
「なんで、美月が龍門機関を統べる者と一緒に居るんだし!? と驚いてみたり!?」
そこで、今まであった経緯を話した。
それにしても、この事によりレーテーが龍門機関を統べる者だとあっさり証明されてしまった。
彩花たちとレーテーがぐるなら別だが……
「事情はわかったけど、それはうちらの殿様に言ってもらわないと何とも言えないね。っと説明したり。」
「殿様? あぁ、前に言ってたな。」
夏輝ついさっきレーテーに怪我を元に戻して貰ったばかりの腕を振り回しながら言った
「なにやら、緊急事態のようだし。殿様のいる所まで連れてってあげるよ。
レーテーのおかげだけどね。っと本音を漏らしてみたり。」
そうして、この大群はとある和風のお館に着いた。
門をくぐりぬけると、池があり鯉が泳いでいる。
その周りに盆栽がたくさん置いてあり、それを手入れする人が数名いる。
よく足元を見ると石でできた道があった。
石と言っても飛び石のようにポツンポツンと地面に埋め込まれていて
それが道しるべになっているだけだが……
そしてそれに躓かないように足下に気をつけながら館に入ると、
高そうなつぼが置いてあったり、掛け軸があったりして意外と面白かったりする。
そしてその奥には、ひときわ目立つふすまがあった。
美月たちが緊張しているにも関わらず、
彩花は『ひっさっしぶり~』と勢いよくふすまを開けた。
「なるほど……奇跡の月姫か……」
そう小声で呟いたのはおそらく、殿様と呼ばれる者。
背もたれが大きいのか姿は見えない。
丁度その背もたれが壁になっているのだ。
その時その背もたれの大きい回転式椅子がくるっ、と回転した。
そこに居たのは、……小学生?
誰もが、小学生を思わす容姿。
ランドセルがとても似合いそうな子供はこう言った
「ここのナンバー1。北神だよ。どうかよろしく。」
おかしい。こんな子がナンバー1のはずがない。
しかし、この子からはものすごく威厳を感じる。
そんな事を考えてる内に彩花は事情を説明していた。
「なるほど……わかった。北神も協力する。」
あっさりだった……
よほど、レーテーの影響力が強いのか。
「それにしても、参剣機関は上の三人が破滅した聞きいたけど本当?」
「そんなことより、あんた本当にナンバー1?」
美月は、北神の話を無視して聞いた。
「人が見かけで判断しない方がいいよ。北神はこう見えて、6つの力を持っているよ。
そんな北神の事をみんなは六神通と呼んでる。証明して見せようか?」
少しいらついたのか脅すようにそう答え、静かに笑って見せる。
そしてあたりはシーンとした。
「ま、まぁまぁ今は争ってるときじゃないよ。」
レーテーが場の空気を元に戻す。
「そうだね。それにしてもレーテー、何か変わった?」
北神は落ち着きを戻し話を進めた。
「私は何も変わってないぞ。」
それからここでも話を終え、あとは戦争までの時間を待つのみ
美月は話がうまく行きすぎていて怖かったが、戦争に負けるよりはましでと言う思いで片づけた。
それから、それぞれ機関に戻り戦争の準備を始めた。
そして、やがて美月は強い睡魔に襲われ寝てしまった。
三人は目を覚ました。その先には、闇が待っていた。
一緒に寝ていた、葉乃愛や夏輝の前にも闇があった。
恐らく神剣使い全員の前に闇があったのだろう。
お互い静かに見つめあって
意を決した三人は闇の中へ消えていった。
そこにはやはり荒れた大地が待っていた。
しかし、美月たたちが一番乗りらしくとても静かだった。
そしてそこには、手を後ろで組んで腰を少し曲げている老人がいて、静かに話しかけてくる。
「待っておったぞ、奇跡の月姫……」
その言葉を聞いた直前、美月の周りに無数の闇が現れた。
そして、ぞろぞろと神剣使いが現れる。
それを見た老人はにやっ、と笑いこう言う。
「ふっふっふ……本当に奇跡を起こしたみたいじゃな。」
ぞろぞろと神剣使いが現れ、あの静かさはあっという間に消えた。
数にして2万、規模が大きい戦争と言う事もあったのでここに来たのは
強力な力をつけたレベル4とレベル5以上の者のみ
「ふっふっふ……はっはっはっは。ではこちらも兵を用意しようかの。」
そう言い、老人は手を横に払う。すると老人の後ろに無数の闇が現れ、無数の心剣使いが現れる。
よく見れば槍、ヌンチャク、弓などの剣とは違う形をした者までいる
だが数にして900、本来の予定より少し少ない。
しかし美月側の神剣使いと比べたら数は一目凝然。
「今、ここに居る心剣使いは900と少し。逃げ出した者がいるんじゃ……
しかし、たった2万でわしらに勝てると思わない事じゃ。
ここに居る心剣使いは皆お前たちの言うレベルでは、ざっと7以上じゃ。
しかも、この時代の剣は鋭い……」
老人は静かに目を瞑り、静かに目を開く。
そして宣言する。
「1000年戦争のはじまりだ!!」
二つの総勢は同時に走り出す。中には飛んでる者もいる。
だが走らなかった美月はそこに取り残され、気づいた時には人の行列のより前には行けなくなっていた。
そして軍勢は衝突……勢いよく走った軍勢が勢い良くぶつかった、
老人をよく見ると先頭に立ち次々にこちらの神剣使いを華麗に斬っていく。
能力を使う者に対して何の力も使わずに……
しかし、口元を見ると何かブツブツ言っている。
闇の力だ……
いったいどんな効力を及ぼすのかは分からないが確かに呪文みたいなものを呟いている。
ひょっとしたらそれのおかげで能力なしで戦えているのかも知れない。
そんな事を考えている時、美月は感じた……苦しいと。
しかしそれは老人の闇の力によって及ぼされたものではない。
ただ単純に人に押しつぶされそうなのである。
美月は女の子で体はそこまで強くない。しかも中には鎧を着ている奴もいる。
押しつぶされて終わる前に美月は後退した。
後ろに方には北神とレーテーがいた。
その2人がいる所は少し地面が盛り上がっていて、戦場の様子が良く見える。
そこに美月は行き、戦場の様子を見た。
火や水、雷や風。
それと倒れていく人たち。
美月の目はそれくらいしか捕らえる事はできなかったが、
あそこでは目に捕らえる事が出来ない力が働いたりしているのだろう。
「地獄絵図だな……残念ながら私の力では何もできないんだ。」
レーテーが目をそらしながらにそう言う。
「そろそろ北神も行くかな……じゃ指揮は頼んだよ」
そう言って殿様と呼ばれる人物は高く飛んだ。
美月はその様子を見て天才という言葉が浮かんだ。
そして、北神が敵陣に着地した……いや、落ちた。
大きな砂嵐を起こし周りの心剣使いを吹き飛ばす、
そして吹き飛んだ心剣使いはボーリングのように周りの
心剣使いを巻き込む。
そして砂ぼこりが少し晴れたところでしゃがみこんだ姿勢の北神は宣言する。
「北神参上……」
美月はその様子にあっけを取られていると
大きな火の玉が飛んできた。
直撃……よそ見をしていた美月は避ける術もなく直撃する。
と思われた……が、しかしその火の玉は美月の前で消え去った。
レーテーもその様子を見て助けに行こうと思っていたが、
火の玉が消滅したことに驚きを隠せないようだ。
原因不明の火の玉の消滅……
しかし、一番驚きが隠せないのは美月本人だ……
だが、やがてレーテーは違う事に驚き始めた……
そんな事はお構いなしに美月にある言葉が思い浮かぶ。
『……力は完全に戻ってはいない。お前が真にこの力が必要とするときにそれは目覚めるだろう……』
しかし、特にそれを自覚することはできない。
だが、今はこんな事を考えている暇はない。
さっきみたいな流れ弾が飛んできてもいいように美月はあたりを見渡す
そして空中を見ると再び美月は驚き始めた。
何とタナトスが腹に手を当てながら飛んでいた・・・
レーテーを探すと確かにレーテーは横に居る。
しかしそのレーテーも空中の人物を捕らえていて、美月以上に驚いていた。
それもそのはず、自分によく似た人物が手からレーザー見たいなものを出し火の玉から美月を守ったのだ。
だが、美月はその事には気付いてなかった様だが……
「お前は誰だ?」
レーテーは思わず聞いてしまう。
タナトスはふわふわと降りてきてこう言う。
「お前の未来の姿だ……いや、お前がこの私の昔の姿と言うべきか……」
「ど、どう言う意味だ!」
「簡単な話だ……お前は私からこぼれ堕ちた記憶の欠片が具現化したものだ。
はじめまして、いや、久しぶりだと言うべきか。千年前の私よ。」
「記憶の欠片の具現化? 千年前の自分? 違う! 私は龍門機関を統べる者! たった一人しかいない!」
ひどくうろたえたレーテーはタナトスに向かって剣を上から下へと振りかざす、
しかしタナトスはその剣を避わす事もなく自分の剣で下から上にその剣を弾いた。
しかしタナトスの剣は前のライトサーベルみたいな形ではなく、
終焉の祖によく似て、剣の中心に月が浮き出ていた。
しかし、レーテーの剣が三日月なのに対してこちらは満月だった。
「あんた……本物のタナトス?」
そこに美月が割って入る
「月姫よ……お前には真実を話そう。それと、レーテー……お前にもな。」
この男が言うにはあの老人に敗北した後、老人のシャットハートにて1000の力を奪われたらしい。
そして、1000人の心剣使いが蘇り、そのついでにレーテーが誕生した。
レーテーはこの男の1000年前の姿、つまりタナトスの名前はレーテーと言う事になる。
しかし1000年前のレーテは姿、力こそ1000年前だが記憶はここ最近のものらしい
「私は特にレーテーを消そうなんて思っていない。だから私はこのままタナトスとでも名乗ろうか。」
「でも、龍門機関は1000年前には存在しなかったんでしょ?」
美月はこのさいどうにでもなれという気持ちで問う。
「あぁ、だが1000年前の戦争で勝った勢力が龍門機関の元なのだ。」
美月はなるほど、と言う気持ちで戦場を見渡した。
しかし、そこにはあの人だまりはなくこちらの軍勢は1000人余り、敵の軍勢は10人余りだった。
しかしその10人が倒せず、苦戦しているようだ。
あまりにも早すぎる。美月はそう思った。
しかし強力な能力のぶつかり合いだけあって、両方消費が激しいようだ。
こんな状況で死んでいない人もいる。
神剣使いは寿命以外で死んだら消滅するのだ。
それにも関わらず、地面にたくさんの人が倒れている。
これは神剣使いの生存を意味する。そんな中、北神はある事を言いだした。
「今から一人一人、一騎打ちをしないか?」
相手の中にざわめきが生じた後、その要件を相手は許可したらしく。
一騎打ちが始まった。
ルールは簡単お互い戦士を出して、戦闘不能になったら交代。それだけだ。
北神もただ脅しのこんな要件を相手が受け入れると思っていなかったらしく驚いていた。
しかし、それはやがて笑顔に変わった。
と言うのも1対1なのですでに倒れている神剣使いに流れ弾が飛ぶ事が少なくなる。
「はっ、おもしれぇ。俺からやってやるよ。相手はお前でいいんだな? ガキが」
北神は、にやっと笑い、一騎打ちが始まった。
北神……くん……?
あとがきでは触れていませんでしたが、
6しんつうでしたね、そう言えば。
強いショタか……おk。