第11話「終戦」
「ふっふふふふははははは。葉乃愛が倒れたか。やはりあいつはそんな程度だったか。」
葉乃目と夏輝の様子を見ていた男は
セリフの部分部分をゆっくり伸ばしてしゃべる。
身長が高めで180㎝はあるだろう。そして服装は葉乃愛が着ていた服と瓜二つなほどに似ている。
だが、色は真っ黒ではなく白と黒が混じったデザインだった。
顔は少し黒めで髪は灰、銀色みたいな色で肩まで垂れていた。
そして2人の男が日本の城で言う、天守閣に値する場所で話をしている。
だが、この建物を城と言うには日本の城と比べれば少し無理があるが、
この男はこの建物を虚無の城と呼ぶ。
「守夜よ、貴様ほんとにこれでよかったのか。」
「当然。私はもともとあんな機関に興味などない。私にはオールディスペルと言う力があればいい
そんなことよりわかってるな? 例の件いや、……例の剣」
「あぁ。わかっておる……終焉の祖は貴様にくれてやる……」
そう言って守矢は奥の部屋へ行き、男は窓を眺めながら呟いた
「美月か……順調に城を登っている……あちらは始末しとくか。」
そう言って闇の中へ消えていった。
階段……美月は先が見えない階段を登っている。
途中、木春と出会い2人は木春の力を駆使して階段を上っていた。
もちろん敵に出会う事はなく、おそらく二人が一番先に登りつめるだろう。
わざわざ別々に分かれたのに合流したのには理由がある。
木春が足をくじいていた。それだけだ。木春は能力的に敵に会う事は無い。
それにも関わらず足をくじくとはかなりドジである。
やがて二人は1000段……1000段と言う階段を登った。
2人は止まることなくそのまま走り続けた。
「く……」
無数の剣に串刺しにされた、夏輝が目を覚ます。
幸運にも剣が直接貫通する事はなかった。
だが、切り傷だらけで体中に激痛が走っている。
よく周りを見渡すと葉乃愛が倒れていた。
「あいつ……やっぱり……」
そんな独り言を聞いたのか、葉乃愛はぐらぐらとしながら立ち上がった。
「もう、立つなよ! お前の体はもう闇で……!?」
夏輝を一身に睨み、立とうと必死の葉乃愛。
その後ろには……
「やめろ!!」
唐突に叫ぶ夏輝
その声にびっくりしたのか葉乃愛は動きを止め、後ろ振り向く。
「ふん!」
後ろを振り向いた瞬間。
白黒の男が己の剣で葉乃愛の頭をたたき割る勢いで縦に振る。
しかし剣と言うには無理があった。手にあった物は白色のライトサーベルらしき物
それに振った時にブォンと剣を振った時には聞こえそうにもない音だった。
そして嫌な音もたてずに葉乃愛はそのまま倒れこんだ。
嫌な音もたてずと言うのは、何の音も聞こえなかったのだ。
当たったのか当ってないのかもわからないほど無音だった。
しかしそんな様子を見た夏輝は怒りのあまり、攻撃を仕掛けようとするが、
体が言う事を聞かず、そのまま倒れこむ。
「夏輝とやらよ、なぜ貴様はそんな無意味な事をする? わかっているだろう?
貴様が以前、獄炎の貴公子と呼ばれていた事を……忘れたとは言わせんぞ。
教えてくれ、貴様がそんな事をする理由……獄炎の貴公子よ」
夏輝は黙ったままだった。
男は夏輝が何もしてこないと分かると
夏輝の事を軽くバカにする。
「獄炎の貴公子……今やそんな姿のカケラもない。情けない様よ。
待っておるぞ。ふっふふふははははっ」
男はそう言い、不敵の笑みを浮かべ闇へ消えていった。
「獄炎の貴公子か……そう呼ばれてた時代もあったっけ……」
夏輝は立ち上がり、足を引きずりながら歩き出した。
葉乃愛を背中に抱えて。
「ついた! ここが敵の天守閣ね!」
「あぁ、恐らくそうだろう。中枢の位置にあって、戦場を眺める機能もある。」
天守閣とは言ったが、畳や障子などはなく相変わらず白と黒と灰色で彩られた部屋だった。
つまり機能的な意味で天守閣と呼んだのだろう、
「ようこそ、我が城へ。奇跡の月姫よ。ん? 残念ながら隣の人間は存じてないな……」
何やら白黒の男が急に現れ挨拶をかました。
木春の能力があると言うのに男はあらわれた。
中には効かない奴がいたのだ……
木春はキッと睨んだ。
男はニヤッとし続けてこう告げる。
「守夜は奥の部屋にいるぞ……」
「!? 守夜ーーー!!」
その声を聞き木春は奥の部屋へ走って行った。
「さて、邪魔者は消えた……見ると月姫よ、能力を失っている様に見えるがそんな状態で我が前に立つおつもりか?」
恐怖……ただ普通に話しかけているだけでこの男から恐怖を感じる。
その絶望にも近い恐怖で一言も話せなかった。
美月はただ一度も戦った事もない男を一目見ただけで戦闘不能になるくらい怯えていた。
「ふぅむ……面白いところへ連れて行ってやろう。ちょうどお仲間も集まったところだ。」
そう告げられ後ろを見ると夏輝がボロボロの体で葉乃愛をかつぎながら階段を上がってきてた。
心配はしたが、恐怖で話しかける事も出来なかった。
それと葉乃愛をよく見るとかすかに意識があるようだ。
そして男の方を振り向くと、何やらぶつぶつ唱えていた
「דארט איז אויך די אייביק נאַטינגנאַס פון אייביק שיין און פינצטער, אויב מיר
מיר טאַלקינג צו וועט די מאַכט פון דעם סדר עס קאן קאַנווערטיד צו בלייַביק אָן」
どこの言葉か分からない言葉を呟き終わると、周りが白い光に包み込まれた。
目が開けられないほどの強い光が。
そして気付けば、美月と夏輝は真白の空間に居た。
さらにあたりを見渡すと円を描くように数えきれない神剣が刺さっていた。
その中心に1本、明らかに普通の剣とは違う神剣が刺さっていた。
見た目は普通の剣だが、何やら嫌なオーラを纏っている様な気がした。
美月がその剣に気を取られていると男は話し出した。
「それは、終焉の祖と言ってな1000年前の神剣だ……」
美月と夏輝は木春の言っていた話を思い出した。
守夜の探し求めている剣がこんなところにある。
「なぜこんなところにこんなに神剣が?」
不思議な事にボロボロだった体は元に戻り
衣服までが再生されていた、夏輝が話しかけた。
「このたくさんの神剣はもともと主人のもとにあった。いや、今でもそうだろう……
皆、私に戦いを挑み、敗れていったのだ……
だが、普通神剣使いが死ぬと、消滅する……だが、簡単な話死ななければ消えないのだ
私の能力はシャットハート(封印する者)と言ってな。神剣使いを神剣に封じる事が出来るのだ
自分の神剣に封じる事も出来し。だが、お前たちの神剣に封じる事も出来る。つまり神剣という器に
人を閉じ込める力だ。ふふふはは、実はこう見えてな、レベル11並の力を持っている。
だが、今のこの世にはレベル11と言う物は存在しない、仕方なしにレベル10に属しているのだ。
……話がそれたな。まぁいい……」
そう言って右手に白、左手に黒のライトサーベルみたいな剣を出し、続けてこう言った
「我がこの剣に千と言う神剣使いが生き続けているのだ。そして閉じ込めた神剣使いの力を我は使用することができる
だが、そのおかげで私の剣は原形を留めてない。さまざまな神剣使いの思いで剣はライトサーベルみたいに光を放っている」
本来、神剣使いの神剣は持ち主の趣味でいろんな形になる。
しかし、レベルが上がるとその形を自由に変化させる事が出来る。
こんな高レベルの男が自在に形を変化させられないほどに神剣使いの思いや力が詰まっているのだ。
その事に2人は驚きを隠せない様子。そして美月はその神剣使いを助けてあげたかったが
自分ではどうする事も出来ない事ぐらい解っていた。
そして2人は龍門機関が恐れられている真の理由も解ったような気がする。
「ふふふははは、説明は済んだところでひとつお手合わせ願おうか。
なぁに、お前たち相手に能力を使う気なんてさらさらない。」
男はそう言って夏輝のもとにワープしてきた。
否、もとよりワープなんて使用してなかった。
常識を超えたスピードで走ってきたのだ。
男がいた場所にまだ残像が見える。
そして夏輝に斬りかかった。だが夏輝も負けずと剣で防御を試みる。
が、男の剣は夏輝の剣をすり抜け、夏輝の横腹に命中する。
それを受け真白で遠近感がわかりにくいが、約50メートルは飛ばされただろう。
夏輝は受け身を取り、足を地に着き踏ん張ったが勢いが強すぎたのか
そのままゴムボールの様にとび跳ねながら飛ばされていった。
一撃……言葉の通り夏輝は一撃で立つ事も出来なくなった。
というのも、今の一撃で肋骨と足の骨が折れたのだ。
「く……くそっ」
夏輝はそのまま立ち上がる事も出来ずに悔しさのあまり
地を叩いていた。
「卑怯よ! 能力なんて使わないなんて言っときながら使うなんて
ワープはするし、剣は透き通るし、あり得ないぐらいふっ飛ばすし!」
「ふはははは、凡人が。」
男は攻撃を終え、何事もなかったかのように続けて話す。
「……月姫よ……我は何も能力は使ってはおらぬ。
ただ速く走り。ただ速く剣を消し、出す。神剣は心にしまうもの、お前たちとてわかっておろう。
それを一瞬でしたまでだ……そしてただ強く振る。」
この男の言葉には何の根拠もなかった。
だが美月は男の言葉を信じてしまった。
と言うのも、男があまりにも自信気にしゃべるからだ。
逆に能力を使ったと言われれば、それもまた信じただろう。
「ふぅむ……興が冷めたわ」
男は少し考え、続けてしゃべった
「お前たちにお願い事がある。断ったらどうなるかわかるだろう……
この神剣の中心に刺さっている、終焉の祖を受け取ってほしい」
2人は理解できなかった。なぜこの男はそんなものを預かれと言うのだろうか。
しかし断ったらあの狭い剣の中で一生生きなければならない。
ここは引き受けることにした。そしてあの男は終戦を宣言した。
戦争、終わるの、早ッ!
そしてなんか強い人が登場しました。
実はまぁまぁお気に入りだったり……