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恋愛最終回。

 麻薬のような恋だから、離れた後で焦がれたり悔んだりしているのかもしれない。満たされ、楽しみ、楽しんでもらえて、よかった。そう思えるのは貴女が僕の車を降りて2分が過ぎるまで。助手席の足元に落ちていた黄色い忘れ物。小さなリップクリームを届けに狭い路地を引き返して、貴女が入っていったコーヒーショップの前に横づけて、カウンターに並ぶ列の中でもひときわ麗しい姿を追いかけて手渡して。

 それから、また2分が過ぎた。

 退屈な生活、日々の不満、将来の不安、日常に空いた漠然とした穴。

 それらを埋めて目先を変えてごまかして、誰かの役に立って、救って救われて、浮世離れした生き方をする人のさらに助けになって、いる気がしているだけ。身の丈に合わない逸脱は緩やかな破滅の雪だるまに押しつぶされてゆくだけ。それからも目をそらし、推して愛してと耳目に心地よい言葉で糊塗した暮らしが今日、終わりを迎える。


 貴女に笑っていてほしい、自分が助けや救いにはなれなくても。少しでも楽しく過ごしたり、気が済むまで愚痴や八つ当たりをしてくれればいい。「私自身は誰にも救われない」と何気なく言い放った貴女に、僕は確かに救われたし今も生きてる。貴女は誰かを救っているし、何気ない優しさや温かい気遣いがある。だからこそ疲れてしまうし、誰かを愛することは出来ても自分で自分が愛せない。

そんな貴女を僕は、僕で良ければ、僕だけでも愛したい。

 本当にそう思っているのか?〝僕だけが〟愛したいんじゃないのか。こんな素敵な人が誰からも愛されていないと感じてしまい、今も心のどこかでは誰かの愛を求めているから、自分なんかでも相手にされているんじゃないのか。いや、相手してもらってると思っているのも僕自身だけで、本当は何処かで僕のことも嗤われて居るんじゃないのか。

 嗤われて当然のことばかり今までして来たし、言ってきたじゃないか。

 僕以外の誰かに愛されたがっている人を愛したがって悪あがきすることの迷惑なんて、自分が一番わかってるんじゃないのか。


 お前の身勝手な視線や嫉妬を、彼女に浴びせたことは無かったのか?

 お前の考えているだけの理解や同情を、彼女に押し付けては居なかったか?

 会うにも話すにも貴重な時間をわざわざ使ってくれているのに、調子に乗って失礼なことを言わなかったと本当に断言できるか?彼女が落ち込み、心身が乱れて居なければ自分なんて相手にされないと思っていること自体が一体どれだけの無礼と侮辱なのだろうか。

 何もかも自分の気持ちや願いや欲望や劣情までも押し付けて受け止めさせて……それでも尚、友達ヅラする。その厚かましさといったら無い。

 もし本当に本当に彼女自身が言う通りちゃんと幸せで、楽しく過ごせている時間があったとして、お前は一体なにをしてきた?

 何を成して、何を残して、何が残った?

 そこに時々たまたま居ただけ、だろう。


 恋愛最終回は誰に来たのか。

 枯れてゆくお前か、立ち去る彼女か。

 今どんなことを言っていても、5年や10年……も、かからない。2年や3年したらどうなってるか。わかったもんじゃない。どうせアッサリ誰かとくっつくし、そのときまたお前は一人で身もだえるだけ。

 今まで何人そうやって幸せそうに歩き去った?

 今まで何人そうやってお前を見限っていった?

 煩悶と後悔と再生と保存を繰り返すお前に最終回は来ない。最終回が来るのは、いつも相手のほう。お前に見切りをつけて、新しい生活くらしのなかで次のきらめきを手にして、それを後生大事に抱えて、新しい誰かと睦まじく手を繋いでいるんだ。


 お前のことなんてとっくに忘れてるよ。

 面白くも、つまらなくもなかった、優しいだけのドラマの最終回なんて。

 誰も覚えていちゃくれないさ。


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