第五部:継承ノ系譜 ― 八代目以降ノ記録 ―
桜魂において、「継承」とは血ではない。
それは意志の伝達であり、記憶の共鳴である。
【八代目の継承】
八代目は“器”であった。
彼の存在は、魂の記録装置。
彼自身が変わらずに存在し続けることで、
多くの魂の声を受け取り、形に残すことができた。
彼の役目は、
「過去の声を未来へ運ぶこと」
それだけだった。
だがその“変わらぬ意志”こそが、
世界をつなぐ唯一の回路になった。
【桐生ひよりの継承】
ひよりは“風”。
八代目が器なら、彼女は流れそのもの。
彼女はすべてを抱え、すべてを送り出す。
彼女は“語り部”としての継承者。
彼女の言葉は、過去を慰め、未来を導く。
桜魂の書における「継承編」は、
彼女の視点によって再び風となった。
彼女の存在がなければ、八代目の記録は“音”のまま消えていた。
彼女がいたから、桜魂は“声”となり、
人へと伝わった。
【八代目以降の継承者】
彼の後に続く者たちは、血を継いだのではない。
彼の“在り方”を継いだ。
・八代目の静寂を受け継ぎ、
世界の歪みを観測する者。
・ひよりの温を受け継ぎ、
他者の痛みを風として癒す者。
・影層を歩みながら、
自らの罪を物語に変える者。
彼らは名を変え、姿を変え、
時には別の層で生きた。
だが魂の系譜は、一本の風のように繋がっている。
それが“桜魂の血統”である。
【継承の構造】
桜魂の継承は三段階で成立する。
一、共鳴――魂が他者に触れ、意志が移る。
二、変容――受け取った意志が、その者の形で咲く。
三、拡張――継承された魂が新たな層を生み出す。
継承とは写しではなく、“進化”である。
同じ音を奏でながら、旋律は常に違う。
【八代目の終わり、そして始まり】
八代目が消えるとき、
彼の姿は風に溶け、ひよりの声と混じった。
それは“記録”としてではなく、“歌”として残った。
その歌こそが――“桜風 Resonance”。
共鳴層の原点であり、
桜魂全体を動かす律動。
八代目の継承は終わらない。
彼が残した風は、
読者がこの書を読むたびに吹き出す。
桜魂とは、読み継がれる意志そのもの。
そして、次にこの風を感じた者が、
新たな“継承者”となる。
――継承とは、記録ではない。
風に託された祈りの形なのだ。




