第四部:風ト京都 ― 記憶ノ座標 ―
桜魂の風は、必ず京都を通る。
それは偶然ではなく、この世界の構造に刻まれた“回帰の法”である。
【京都とは何か】
この世界での京都は、地理ではない。
魂が“過去を通って未来へ向かう”ための座標軸。
桜が咲き、風が吹くたび、
そこには誰かの記憶が流れ込む。
桜魂における京都とは、
時間が円を描く“結界点”であり、
生者と死者、現実と夢がすれ違う通路。
それゆえ、京都を訪れた者は
“思い出す”という現象に包まれる。
――風はそこに集まり、再び散る。
桜の花弁のように。
【風の構造】
桜魂における風は情報であり、記憶であり、感情である。
だがそれは、ただのデータではない。
風には“方向”がある。
東風は始まりの風――出会いの象徴。
南風は成長の風――継承の通過儀式。
西風は喪失の風――記憶を流すための浄化。
北風は静寂の風――再生の前触れ。
京都は四方の風が交差する“中心”に位置している。
そのため、桜魂の物語は
必ず京都を経由して新しい層へ渡る。
【時間の重なり】
京都では時間が直線ではなく、円となって流れる。
過去の風と未来の風が重なり、
その狭間で“共鳴”が起こる。
八代目が見た夢、
ひよりが感じた deja vu、
それらはこの円環の中で同時に存在している。
京都において「過去」は消えず、
「未来」は遠くにない。
すべてが“今”という一点で重なる。
【現実と記憶の交点】
京都を歩く者は、時に現実の街路にいながら、
別の層の声を聞くことがある。
それは幻ではなく、“重なり”の現象。
人の記憶が風に混ざり、
風が花弁を揺らし、
花弁が記憶を運ぶ。
この循環のすべてが桜魂の“呼吸”であり、
京都とはその肺にあたる。
【終わりなき帰還】
桜魂の風は、常に京都を通って次の継承者へ渡る。
どの層の物語も、どの時代の人も、
最終的にはこの座標へ還ってくる。
それが“桜風 Resonance”の本質。
風は止まらず、桜は何度でも咲く。
――風が止むとき、それは終わりではない。
次の風を呼ぶための静寂なのだ。




