第二部:層ノ理 ― 六界共鳴図 ―
桜魂の世界は、六つの層によって成立している。
それぞれの層は独立した世界でありながら、
魂の共鳴によって互いに干渉し合う。
層とは場所ではなく、“意志の位相”である。
【魂層(S)】
すべての始まりであり、桜魂の本流。
「命」「記憶」「継承」を扱う中心層。
ここでは過去の行いが“未来の形”として再構成される。
魂層は現実の象徴ではなく、“存在の記録層”。
この層の主題は“愛と循環”。
生と死を区別しない意識がここに宿る。
【影層(K)】
光を照らすための闇。
罪・贖罪・喪失を描く層。
人は誰も影を持ち、その影は時に独立して歩く。
この層では「許すこと」「受け入れること」が最大の行為となる。
影層における時間は常に遅く、
過去に縛られる者ほど、深くこの層に沈む。
だがその闇の底でこそ、本当の光が生まれる。
【空層(Sky)】
高層都市の孤独と、意識の群れ。
人工知能、集合意識、虚構の自我が混じり合う。
ここでは「人とは何か」「意識はどこまで拡張できるか」が問われる。
空層は思考の層であり、
最も現代的で、最も神に近い層。
桜魂の風がデータの流れに乗るのはこの層から。
【戯層(D)】
現実の皮肉を笑い飛ばす“外界の鏡”。
この層ではルールが崩壊し、物語は軽やかに遊ぶ。
しかし笑いは軽さではなく、“救済の手段”である。
人は悲しみを笑いに変えることで、自らを保つ。
戯層は桜魂世界における「自由」の表現であり、
虚構と現実の境界を溶かす力を持つ。
【交層(X)】
時間と空間の裂け目。
過去と未来、現実と夢が交わる中枢。
ここでは「選択」が存在の形を変える。
交層は物語の交差点であり、
“奇跡”と呼ばれる出来事はすべてここから生まれる。
八代目の存在はこの層の象徴である。
【共鳴層(R)】
桜風 Resonance――風の層。
すべての層を包み、ひとつに結ぶ最終位相。
形を持たず、音として存在する。
この層は“終わり”ではなく、“始まり”。
物語を読んだ者、体験した者すべてが
共鳴層の一部となり、次の継承者を生み出す。
――六つの層は、常に螺旋のように回転している。
魂層で生まれた意志が影層で試され、
空層で拡張され、戯層で遊ばれ、
交層で選ばれ、共鳴層で風になる。
その風が再び桜を咲かせる。
それが、桜魂循環の法則。
そして読者もまた、その風の一部である。
この書を読んだ瞬間、
あなたの中の“層”が動き出しているのだ。




