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序章

僕の名は京王坂 翔太。

両親は政治家で、大家族の三男として産まれた。

僕は弟や妹の為に苦手だった家事を頑張った。

それを見た母さんがご褒美にケーキを焼いてくれた。


「翔太、いつもご苦労様」


僕はその時間が一番幸せだった。

─そう、あの日が来るまでは。


「─余命は…そう長くありませんね」

「そんな…!!」


突然の担当の医師からの一言。

それを聞いて、父さんと母さんは泣き崩れていた。

その時の僕は意識が朦朧としていて、2人を慰めようとしても身体が上手く動かなかった。

…何も出来ない、そんな自分が憎かった。

せめて、僕が大人になるまでは……死ぬわけには………



─────



「……はっ!?」


……ゆ、夢…?だとしたらとんでもない悪夢だ。

しかし、僕は見た事の無い天井、そして景色だとすぐに気づいてすぐに起き上がった。


「こ、ここは…何処なんだ……?」


見た感じ、学生寮のようであった。

一つ違和感はあるが……


「…窓が、無い……?」

「おう、目が覚めたか?」

「ッッ!!?」


声がした方に目線を送ると、何処か見覚えのある男がベッドに腰掛けていた。


「さっさと"食堂"に行くぞ」

「えっ?ちょ、何だよ!?そもそもお前は誰だよ!?」


男は僕のその問いに答える事は無かった。

…コイツに着いていけば、ここが何処なのか分かるかもしれない。そう思って男の後に着いて行った。


「あっ、千代之助!ようやく来たんだね」

「……………」

「?君は……?」


その先に待っていたのは、僕よりも大きい……女の人?それにしても体つきが男っぽいような……?


「えっと…京王坂、翔太…です……」

「へぇ、翔太君かぁ。ぼくは不破 紫苑だよ」

「……………」

「…ほら、千代之助も自己紹介しなよ!」

「…チッ……加東 千代之助だ」


紫苑と千代之助、かぁ。

見た感じ、僕と同じ学校の制服を着ている。


「さ、皆も待ってる事だし早く行こうか」

「?皆…?」


紫苑が扉のドアを開けた。

その中に居たのは…僕と歳が近い人達が数人居た。


「お、ようやく最後の学校連中の到着ってとこやな?」

「もー!待ちくたびれたんだからね!ね、黄菜子!」

「……………」


「ようやくですの?退屈過ぎて今ここでアフタヌーンティーを用意しようとしていたところですわ」

「遅い!3時間遅刻だぞ、慶輝学園の連中共!!」


「わっ、あの人…カッコイイなぁ……」

「ケッ、全員男かよ……」

「んぇ〜?何?やっと最後の学校のとこ来たの〜?むにゃむにゃ……」


「え、えっと……?」

「お嬢様を3時間待たせた罰として腕立て伏せ1000回だ!!」

「…はぁ!?」

「はは、マドラスはんはおもろい人やな〜」

「腕立て伏せ1000回とか……オレ、ぜってー出来ねぇ自信はあるぜ……」

「そ、そもそもお前らは誰なんだ?見た感じ、他校の生徒らしいが……」

「あぁ、まずは自己紹介からやな。ぼくは新木 八葉や。和歌学の生徒会長やってるさかい、よろしゅう頼んますわ」

「はいはーい!おれ、小萩 杏!こっちはおれの妹の黄菜子だよ!!」

「…よ、よろしく…お願いします……」

「…和歌学?聞いた事無いな……」

「そらそうや。選ばれた生徒しか入学を許されない名門中の名門やからな」

「そうそう!黄菜子と一緒に入学出来て良かったよ〜」

「…うぅ……わ、私は…別々の学校が良かったのに……」

「?お前らは仲が悪いのか?」

「そんな事無いよ!おれと黄菜子は産まれた時からずーーーっと一緒なんだから!ケンカなんてした事も無いよ!ね、黄菜子?」

「あうぅ、私に話題を振らないでよ…お兄ちゃん……」

「わたくしはマーガレット・ロンギヌスと申しますわ」

「マドラス・ロンギヌスだ!!お嬢様の血縁ではあるが、お嬢様の護衛をしている!」

「…?どこかの王国の人、か…?」

「あら、見る目がありますわね。えぇ、そうですわ」

「フフ、京王坂…見直したぞ!その通りだ!この方こそ、スイートピー王国の第二皇女!!…実際は我が姉君が本物の皇女なのだがな……」

「えっと…彼女の影武者、ってところかな?」

「…そうなりますわね。わたくし、お姉様のような"完璧な皇女"ではありませんので……」

「……?」

「その話はさておき…共に協力して、この場所から脱出致しましょう」

「…あ、あぁ!」

「おっと、協力するのはいいがお嬢様に邪な感情を抱くなよ?」

「は?」

「…マドラス……そんな事は滅多に起こりえないですし、わたくしを守ってくださるのは有難いのですが……」

「ま、万が一だぞ!?」

「…はいはい」

「は、はじめまして…!わ、わたしは本田 仁子っていいます!」

「金平 叶真だぜ!よろしくな!!」

「あれ?和歌学と似たような制服だけど…若干違うね?」

「あー…かつては一つの学校だったけど、校長の援助で分校を作ったらしいよー。あ、私は神威 アリス。よろしくねー」

「分校、か……」

「ま、すんげー田舎の学校だけどな!」

「ところでなんか食べ物無い?私さっきからお腹ペッコペコでさ〜」

「た、食べ物…?飴なら持ってるが……」

「えっ!じゃあちょうだい!!」

「えっ?ど、どうぞ…?」

「わーい!いっただきまーす!!」

「つーかニコ、何でオレの後ろの隠れてるんだよ?」

「だ、だって…こんな美形な人だらけが目の前に居るんだもん…!」

「…はぁ……逆に美少女だらけならオレもニコの立場になってたかもしれねぇけどよぉ……」

「えー?トーマだったらナンパしてると思うけど?」

「っるせぇ!!オレだって年頃のDKなんだよ!!」

「と、ところで慶輝学、和歌学、多賀高…そして、聖スイートピー……どうして学校がバラバラの子達が集まってるんだろう……?」


『それについてはボクが教えてあげよう!!』


「…!?何モンや!?」

「やあやあ、庶民ども!ボクはミル王子!」

「お、王子…だと…!?」

「あら、それにしてはお下品なお方だこと」

「うっさいなぁ!ボクは王子なんだぞ!ボクに逆らえば"ホイップードル"を放つぞ!!」

「ほ、"ホイップードル"…!?またあの化け物に追いかけられるの…!?」

「?何だそれは…?」

「な、なんかよく分かんねぇけど…犬の形をしたモンスターなんだよ!!」

「…モンスター?」

「モンスターとは聞き捨てならないなぁ。ボクの可愛がってるペットなのに」

「あれがペット、やて…!?ぼくらはそれに追っかけられて気づいたらここに居ったんやで!?」

「そーだそーだ!黄菜子に怪我でも負わせてたら堪忍袋の緒が切れてたんだからね!!」

「それは君達が反抗的だったからじゃないかな〜?ボクは知らないもんね」


な、何なんだ?この小太りな王子は…?

いきなり現れては…"ホイップードル"とかいうモンスター?を飼ってる……?


「そうそう!君達にはこれから"シュガーサバイバル"を行って貰います!」

「はぁ?"シュガーサバイバル"ぅ?何それ、美味しいの?」

「アリスちゃん!多分それ食べ物じゃないよ!」

「えー?違うのー?萎える」

「……またあの"悪夢のようなサバイバル"をするのか?」


…えっ?千代之助だけ、知っている…?


「あっ、千代之助君は前回の勝者だもんね〜。じゃ、ルール説明は君に任せようかな?」

「ふざけんじゃねぇぞ…!」

「おっと、ボクに手を出せば即退場だよ?いいの?」

「……チッ」

「…千代之助……その、"シュガーサバイバル"って……?」

「…"世界一美味なスイーツ決定戦"……いわば、バトルロワイヤルだよ……」

「ば、バトルロワイヤル……?」

「…あぁ。最後の一人になるまでその争いは終わらない。誰かを犠牲にしようが、騙そうがお構い無しの最悪なゲームだ」

「…えっ?だ、騙す……?」

「そうそう!誰かを蹴落としてでも、殺してもオッケーなゲーム!だって、賞味期限切れのお菓子は美味しくないもんね〜!」

「おい、巫山戯るのも大概にしろ!俺達はただの人間だぞ!?」

「…そう、人間だと君達は思い込んでる」

「…はぁ?」

「ここはボクの領域!そして君達は食べられるだけのお菓子も同然!!」

「お、お菓子…!?」

「そうそう!例えば…京王坂君はショートケーキ!」

「へっ!?ぼ、僕が…ケーキ……!?」

「新木君は八ツ橋で〜、マーガレットさんはマカロン!」

「…いきなり現れたかと思えば、とんだ戯言を……寝言は寝て言いやがれ!!」

「お、お嬢様…!口調が…!!」

「…はっ、も…申し訳ありませんわ……」

「ま、"あと一人"来てないみたいだけど……まずは君達で相談し合って誰を犠牲にするか決めてね!じゃーねー」

「あ、おい!?待ちやがれー!!」


小太りな王子は何処かへ消えてしまった。


「…全く理解が出来へんわ。とりあえずアイツの発言からするに……アイツはぼくらをただのお菓子にしか見えてへん、って事か……」

「そ、それに…最後の一人になるまで争いは終わらない、って………」

「…あれ?なんかメールが届いてるよ?」

「メール?」


全員一斉にスマホに目を向けた。

圏外なはずなのに、確かに新着メールが届いていた。


「なになに…?"第一回戦は校内にあるアイテムを探し回ってポイントを稼げ!"…だって?」

「宝探し!?わーい!楽しそー!!」

「あ、気をつけてくださいまし。一部エリアに先程話した"ホイップードル"が放たれている、と書かれてありますわ」

「げっ、またあのワンコと追いかけっこかよ……」

「…くっ、出来るだけそこを避けなければならないな……!」

「せやな。ここは手分けして探すしかあらへんな」

「だね!おれは黄菜子の傍から絶対離れないようにするよ!」

「わ、私は…その……」

「何や、黄菜子はん。怯えてはりますん?」

「…うぅ……な、何だか…嫌な予感がして……」

「心配せぇへんでええよ。3年のぼくがついてる」

「問題は多賀高だよね……仁子ちゃんと叶真君は1年生で、アリスさんは……って、アリスさんは!?」

「あー、アイツ?勝手にどっかに行っちまったぜ?」

「…はぁ…今は単独行動をすべきじゃないのに……」

「…俺が探す」

「え、千代之助…?」

「お前はそこのチビの護衛でもしてろ」

「…チビって……僕の事か…!?」

「こら、翔太君は確かに小さいけど…そんな言い方をしない!」

「紫苑も僕を小さい扱いをするのか!?」

「…あっ、ごめんね……!」

「…くうぅぅ……それはお前らが高身長なだけだろ…!!」

「…あはは、君はぼくの事を不思議だな、って思わないんだね?」

「?」

「ううん、何でもないよ。さ、探索でもしよう」


紫苑にそう言われて、僕は探索する事になった。


「…ふーむ、これがさっき言っていたアイテムか……」


紫苑は一つの箱を拾い上げ、中身を開けた。

その中身は……鋏だった。


「…うっ、不吉だね……危ないから、これはぼくが預かっておくよ」

「あ、あぁ……」


しかし探索を続けていると運悪くさっき言っていた"ホイップードル"とやらに遭遇してしまった。


「…!あれが…?」

「しっ、気づかれる前に早くここから離れよう」

「そ、そうだな…!」


そう、足音を立てないようにその場から離れようとした時だった。

僕は何かを踏んでしまってバランスを崩し、その場にコケてしまった。


「…痛っ!!」

「ッ!?まずい…!!」


それに気づいたホイップードル達が僕達に目掛けて走ってきた。


「……翔太君、逃げて!!」

「えっ?で、でも…!」

「ぼくにはさっき拾った鋏がある…!君は誰か他の人に助けを求めて!!」

「わ、分かった……!!」


しかし、この時の僕はまだ知らなかった。

"これが、悪夢の序章"、なのだと。


「…さぁ、来い!化け物め…!!」

『バウバウ!!!』

「…やぁ!!」


今思えば…僕がここで紫苑を助けていれば……紫苑は………


「…えっ?き、効いてな……!?」

『グルルルル…!!』

「…く、来るな…!!…う…うわあぁぁぁぁ…!!?」



─────



「…はぁ、はぁ……ッ!!」


暫く走っていると、そこに聖スイートピーの2人が居た。


「そ、そこの2人!!紫苑が…紫苑が……!!」

「何だ?庶民風情が息を荒らげて……」

「話してる時間は無いんだ!!ホイップードルが…!!」

「…なっ!ホイップードルですって…!?」

「あぁ!急いで……」


ピンポンパンポーン♪

突然と鳴り響いた校内のチャイム。


『やぁやぁ!ミル王子だよ〜』

「……!!」

『探索中の皆にお知らせだけど……』


──不破 紫苑君はホイップードルの餌になり、脱落となりました。


「…は…?え、餌……?」

『いや〜、実に残念だったねぇ。彼の優しさが故に勝てない相手に危ない物を振り回すなんてさぁ』

「…お、おい!!紫苑は!?紫苑は何処に居るんだ!!?」

『あはは、京王坂君はお喋りさんだねぇ?』

「いいから教えろ!!」

『大事な事だからもう一回言うよ?不破 紫苑君は、ホイップードルの餌になって、脱落したんだよ』

「…そ、それって……食べられた、って事か…?」

『そ!ボクのペット達がちゃあんと骨も残さず完食しちゃったんだよねぇ』

「……………」


う、嘘だ……嘘だと言ってくれ………


『さぁさぁ!食べられたくなければさっさと各所に散らばってるアイテムを拾っていってね〜』


そこで放送のスピーカーの音が聞こえなくなった。


「…お、おい…京王坂……」

「……ひとまず……食堂に戻ろう……そうしたら、紫苑が待っているはず……」

「…そ、そうですわね!きっと悪い冗談に決まっていますわ」


そうやって3人で食堂に戻ろうとしていた。

その道中でやけに鉄臭い臭いがした。


「…え……?」


僕達は恐る恐るその扉を開いた。

…そこには……あの小萩兄弟の兄である杏の………






死体があった。

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