42.その者たちの名は
「倒した……」
「倒したぞォォォォ――!!」
「「「おおおおおおおおおお――――っ!!」」」
骸骨魔導が倒れ、あがる大きな歓声。
攻略組も召喚の魔物たちを打倒し、地獄と化していたホールには一体の敵もいなくなった。
危機を脱したよろこびから、皆抱き合って喜び合う。
「この人数で、私たちの窮地をひっくり返してしまうなんて……っ!」
「すごいパーティだ……!」
「アスカを凌駕するかもしれないほどのセンス……大したものだ」
リーダーも大きく一度うなずいて、息をつく。
歓喜にわく十九階層、そんな中。
「お願いしますっ! お願いしますぅぅぅぅっ!!」
倒れた白い大魔導の前で、俺は全力の祈りを捧げていた。
地面に突き立った、階層主の三つの武器。
その中でも、最後に使用した剣が俺の狙いだ。
「私も祈ります!」
六花も両手を組んで祈り出し、続いて千早や陸さん、ルルと紫水さんも続く。
歓喜にわく十九階層で、俺たちの間にだけ奇妙な緊張が走り出していた。
「……なに、やってんだ?」
その温度の違いに、困惑し始める攻略組。
それでも俺は、祈るのを止めない!
「剣よ……剣よ残れぇぇぇぇぇぇ――――っ!!」
俺はヒザを突いたまま強く目を閉じ、もう一度祈りの言葉を発した。
魔物は倒されると、少しずつダンジョンに飲まれて消えていく。
しかし武器などの付属品は、その手を離れた直後から崩壊を始める。
その時間は、数十秒に満たないほど。
よって、結果はすぐに分かる。
俺は覚悟を決めて、ゆっくりと目を開く。
そして視線を上げると、そこには――――。
「……残った」
剣は、崩れずそこにあった。
「剣が、残ったああああああああああ――――っ!!」
思わず、渾身のガッツポーズ。
俺は歓喜と共に、白い大魔導が残した剣を掲げる。
「ゲットォォォォォォォォ――――ッ!!」
「よかったですね!」
「おめでとう」
六花が大きく拍手して、千早が笑みをこぼす。
陸さんたちが満足そうにうなずいて、攻略組が「……そんなに?」みたいな顔をする。
「本当に、残った」
そんな中、やって来たのは獅条アスカ。
「良かったわね。それと、さっきの剣を……もう一度見せてもらえる?」
「さっきの剣?」
「白いやつよ」
「白いやつ……ああ、これか【チェンジ】」
俺は言われるまま、レアな白い【リザードマンの剣】を取り出す。
「やっぱり! それ私が探してた剣じゃない!」
「えっ?」
「いつどこで手に入れたの!?」
「先日、五階層でだけど」
「やっぱり! だから三周もしたのに見つからなかったんだわ!」
悔しそうに眼を鋭くしたアスカは、慌てて【青魔宝石の剣】に手を伸ばす。
「言っておくけど、この剣は私のだからね」
そう言って、【青魔宝石の剣】を抱きしめた。
「アスカは、無類の武器マニアだからな」
すると、そこにやって来たのはリーダー。
「そうなの!? それは奇遇だな!」
「……え? もしかして貴方もなの?」
「そうなんだよ!」
「ふ、ふーん。ちなみに、どんな武器を持ってるの?」
「まあ、言っても使えるのは【オーガリーダーの剣】と【トロルキングの斧】、白黒の【リザードマンの剣】くらいだけど」
「私が持ってないのばっかり……で、でも私は【ムラマサ】も持ってるから」
「刀!? マジかよ……ほ、他にはどんな武器を!? 【灼火骨】以外にも素材武器があるの!?」
「当然でしょ」
「羨ましすぎる……」
思わず出た言葉に、得意げな顔をするアスカ。
「特別に今度、見せてあげてもいいわ」
「マジか!」
うなずくアスカは、手にした【青魔宝石の剣】を軽く振ってみる。
「……ねえ。貴方って魔物のスキルを使ってるように見えたんだけど? もしかして、敵のスキルが使えたりするの?」
「ああ、武器に宿ってるスキルだけになるけどな」
「っ! 魔物の武器スキルを使えるうえに、入替までできるって……貴方一体何者なのよ」
アスカは驚きの顔を見せる。
「その話はあとで聞けばいい。今はとにかく一度、退避しよう」
するとリーダーが、辺りを見回しながら撤収を提案。
「ありがとう。君たちが来たことによって、最悪の危機が一転、余裕のある戦いになった」
「「「ありがとうございますっ!」」」
攻略組の面々も、頭を下げながら十九階層を後にする。
「どうやら、横取り判定にはならなかったみたいだね」
「共闘って思ってくれたのか。それはよかった……!」
一方の俺は、そんな陸さんの言葉に安堵の息をもらしたのだった。
◆
「帰ってきたぞ!」
「英雄の帰還だああああ――――っ!!」
「「「おおおおおおおおおお――――っ!!」」」
紫水さんの【瞬間移動】で、地上に帰還。
驚く攻略組と共にダンジョンの出入り口までくると、そこにはたくさんの探索者たちが集まっていた。
「配信見たぞ! あんなにすごい戦いは初めて見た!」
「十九層の階層主、とんでもない強さだったのに最後は両断! さすがの一撃だったな!」
「初見での階層主無傷撃破は、ダンジョン史に残る偉業だぞ!」
「……そうなの?」
「いや、何だと思って十九階層に行ったんだ?」
途端に首を傾げ出す探索者たちに、俺は正直に答える。
「この剣のため」
手にした美しい剣を掲げると、思わず笑みがこぼれてしまう。
「もしかして、トロルキングの最速打倒も知らない感じ?」
「最速打倒? いや、あの時はドロップの斧が欲しくて……」
「武器ばっかだな……」
「これだけの奇跡を起こしてきたのに、名声には興味なしか」
「もちろん今後は、攻略に力を入れていくんだろ?」
「仲間としても、ライバルとしても歓迎しよう」
そう言って、攻略組のリーダーが大きくうなずいたその瞬間。
「あれ?」
違和感に気づいて、俺は手に入れたばかりの剣を見つめる。
「……違う」
「どうした?」
「この剣、似てるけど違う! 俺が探してた『エクスカリバー』じゃない!」
あの日見た『エクスカリバー』とは、柄のデザインがちょっと違う……!
「そうなんですか?」
「結構似てるんだけど……遠目だったから差が見分けられなかったんだ……」
これはこれで最高に格好いいし、うれしいんだけど……。
そうか、これではないか。
「そうなんですか。それならまた、探しましょう!」
「それしかないわね」
「また頑張ろうよ、響介くん」
「フォッフォ。そう簡単にはいかんのぉ」
「きっと、次は見つけられる……」
六花が笑いながらうなずくと、ベースメンバーも笑いながら俺の肩を叩く。
「マジで、ダンジョンの話はそっちのけだな」
「俺知ってるぞ。あの子いつも動物を追ってるんだよ」
「あっちの子は、魔宝石に夢中だったぞ」
「あの人は魔物料理のために、ダンジョンを駆け回ってた」
「このパーティは本当に、攻略とか考えてないんだな。最初から自分が欲しい物のために動いてる」
「マジかよ……それで攻略組を助けて帰って来ちゃうのかよ……」
攻略なんて頭にない俺らを、唖然としながら眺める探索者たち。
「攻略組を助けて偉業を達成した、謎の最強集団」
「でも、その目的はあくまで自分が欲しい物の入手か」
「……なるほどね。それなら、こう呼ぶのはどうだろう」
「なんだ?」
その中の一人が、変わり者の集まりである俺たちを見ながら、つぶやく。
「――――コレクターズ」
それはこれまで何者でもなかった俺たちが、初めて付けられた名称。
そしてこれから様々な形で語られることになる、伝説の名前となるのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
コレクターズはこれにて一度、終了となります!
ご感想や誤字脱字報告もいただき、とても励みになりました!
少しでも「いいね」と思っていただけましたら、【★★★】などで応援よろしくお願いいたしますっ!
そして本作開始時に『活動報告』にて予告した通り、次作も近日公開予定です!
ジャンルはやはり、現代ダンジョンもの。
その内容は――。
記憶を失くして早二年。
そんな俺の正体は……ダンジョンの王、ダークロード!?
それは黒衣をまとった組織を率い、闇の王を自称していた最強の男。
俺って30歳を過ぎて、そんな痛い中二病だったの!?
しかも少数組織のメンバーは女子だけで、全員が『許嫁』を自称。
なあ、記憶の失くす前の俺……一体ダンジョンで何をやってたんだ!?
俺は失われた記憶と真実を明らかにするため、ダンジョンを突き進む!
このようになっております!
次作は勢いのままにハーレムラブコメもやっていて、冒頭から楽しんでいただけると思います。
公開時にはまた『活動報告』や、『青春捧げて』のあとがき等で告知予定です。
その際は何卒――――よろしくお願いいたしますっ!




