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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第1章 幼少期編
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昼休みの時間

昼休み。小さな教室に、にぎやかな子どもたちの声が響いている。


「○○ちゃん、今日も一緒にごはんたべよ〜」


「うん!」


そんな中で、透は自分のお弁当を広げると、隣の席の友達――優菜ちゃんに目を向けた。


「優菜、ぎゅーしていい?」


「……えっ、また?」


優菜がびっくりしつつも、すこし照れくさそうにうなずくと、透は無表情のまま、ふわりと小さな腕をまわす。

ぎゅっと抱きしめるのはほんの一瞬。でも、それだけで嬉しい気持ちがちゃんと伝わる気がして、透は満足そうに席に戻った。


「透くん、ほんとすぐぎゅーするよね〜」

「えへへ、でもちょっと嬉しいかも〜」


別の子たちも、どこか興味津々のようすでこっちを見ている。


透は優菜を離すと、今度は隣の席の男子――亮太に向き直った。


「亮太、お弁当交換しよ。あと……今日もがんばってたから、ハグしていい?」


「い、いや……いいけど……なんで俺のがんばり知ってんだよ……」


「見てたから」


即答された亮太は、耳まで赤くなりながら黙って腕を開いた。

透はその胸に小さくハグをして、すぐ離れた。淡々としているのに、どこか温かさが残るそのやり取りに、周囲はすっかり慣れっこになっている。


「……てか、透、性別とか関係ないんだなー」


「うん」


きっぱりと透はうなずく。


「好きな人は、好き。種類は色々あるけど……気持ちを伝えるのに、男とか女とか関係ない。俺は口下手だから、ハグがわかりやすくてちょうどいい」


「うわー、かっけぇ……」

「将来、絶対モテるやつだよな……」

「今でもだろ……」


周囲の生徒がそんなことを囁き合う中、透は自分の席に戻って、静かに弁当を開けた。

笑ってもないし、特に照れもしていない。けれど、ほんの少しだけ目元が柔らかかった。


ハグはただの習慣じゃない。

言葉よりも、深く届く感情の表現。


そして、それを受け取った相手がどんな顔をするのか――透はそれを見て、そっと満足するのだった。


それを見ていた先生は、ちょっとびっくりしながらも、静かに微笑んで見守っていた。


ませてる。でも、真剣で、まっすぐ。

そんな透のやり方は、少しずつ周りに馴染んでいく。

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