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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第1章 幼少期編
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告白(樹視点)

夕暮れの公園。

西日が伸ばす影の中で、俺たちは並んでベンチに座っていた。


透は今日、誕生日だった。

4歳。……とはいえ、アイツはどうにも幼児離れしてる。

口数は少ないけど、妙に冷静で、たまに大人でも言わないようなことをさらっと言う。


「……樹」

その声で、俺は隣を見る。透が、真っ直ぐこっちを見ていた。


その目に、いつもの落ち着きと――それ以上の、覚悟みたいなものが見えた。


「俺、お前のこと……恋愛的に、好きだ」


一瞬、思考が止まった。


透が、俺を――そういう意味で?


「言うつもりなかった。けど、もう黙ってるのが無理だった」


まだ言葉の意味を咀嚼している俺をよそに、透は静かに続けた。


「俺、男だし……男が男を好きになるのは、ヘンなんだろ?。だから、嫌ならハグもやめる。……ゴメンな?困らせてしまった。」


笑ってるような顔だった。でも、その目は泣きそうで――でも泣いてなくて、

だけど、俺はもうその顔を見ていられなかった。


気づいたら、抱きしめてた。


「……は?」


戸惑う透の声が耳に近い。


「……整理は、まだついてない。けど、お前の気持ちを聞けて、よかったと思ってる」


自分でも、どうしてそう言えたのかわからない。

ただ、咄嗟に「拒絶したくない」って思ったんだ。


「気持ち悪くはない。ハグはしていい」


その言葉に、透が目を丸くした。


「ほんと?」


「ほんと。……でも、な。お前、まだ小さいから。だから、ちゃんと向き合うのは、高校卒業してからにしよう。な?」


言いながら、俺自身も気持ちがぐちゃぐちゃだった。

でも、不思議と拒否する気にはならなかった。


「……言いたかっただけなんだ。好きって。秘密にしてるのが嫌だった」


透がそんなことを言いながら、抱きしめ返してくる。


「……ああ、いいよ」


その返事が、俺にできる精一杯の答えだった。


今すぐ答えなんて出せるわけがない。

でも、透の気持ちを踏みにじることだけはしたくなかった。


俺はただ、あの小さな背中をそっと抱きしめ返した。


日が沈みかける公園で、世界はやけに静かだった。

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