告白
公園のベンチに並んで座っていた。
樹の隣。ぬいぐるみの紙袋を抱えたまま、俺は空を見上げる。
静かだ。
でも、心臓の音だけがうるさい。
――もう、限界だった。
「……樹」
呼ぶ声が、思ったより掠れていた。
「俺、あんたのこと……恋愛的に、好きだ」
空気が張り詰めたように感じたのは、自分だけじゃなかったと思う。
樹がゆっくりと、俺の方を見た。
「……言うつもりなかった。けど、もう黙ってるのが無理だった」
手に汗が滲む。だけど、言葉は止めなかった。
「俺、男だし……男が男を好きになるのは、ヘンなんだろ?。だから、嫌ならハグもやめる。……ゴメンな?困らせてしまった。」
そう言いながら、無理に笑った。笑顔の形を、なんとか保っていた。
でもそのとき、樹の腕が不意に伸びてきた。
次の瞬間には、俺は抱きしめられていた。
「……は?」
一瞬、状況がわからなくなった。
でも樹の体温は確かで、俺の胸の奥で何かが跳ねる。
「……整理は、まだついてない。でも、お前の気持ちを知れて、よかったと思ってる」
樹の声が、すぐ耳元で落ち着いて響いた。だけど少し、焦りも混じっていた。
「俺は……その、気持ち悪くはない。ハグは、していい」
「……ほんと?」
「ほんと。でも……お前、まだ小さいから。だから、ちゃんと向き合うのは、高校卒業してからでもいいか?」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
しばらく何も言えなかった。けど、自然と腕が動いて、俺からも彼を抱きしめ返していた。
「……樹、やっぱお前かっこいいな」
ぼそっと呟いて、ふっと笑う。
「言いたかっただけなんだ。好きって。秘密にしてるのが嫌だった」
「うん」
「だから、待つ。……それまでは、今まで通り、ハグさせて」
「……ああ、いいよ」
そう答えた彼の声が、いつもより少しだけ優しかった気がした。
夕暮れの公園。
誰もいないベンチの上で、俺たちはただ、静かに抱き合っていた。