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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第1章 幼少期編
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誕生日

夕方の公園は、橙色に染まっていて、すべてが静かだった。

俺はベンチに座って、空を見ていた。


「誕生日、おめでとう」


不意にかけられた声に振り返ると、樹がいた。

手には紙袋を提げていて、少しだけ不器用な笑みを浮かべてる。


「……俺に?」


そう聞くと、樹は紙袋をぐいっと押し付けてきた。


「まあ、お前が喜ぶかわかんないけどな。一応サプライズのつもりだった」


中身は、柔らかそうなクマのぬいぐるみと、動物の親子が出てくる絵本。

――俺が、好きそうなやつ。


一瞬で、胸がいっぱいになった。

意識してなくても、目が勝手に潤んでた。


「……泣くなよ。そんなに変なもんだったか?」


「違う」


俺は涙を拭わずに言った。


「……嬉しすぎると、泣くんだって、初めて知った」


涙の理由を説明しながら、クスッと笑った。

嬉しいときも、こんなに胸が詰まるんだなって、自分でも驚いた。


樹は少し戸惑った顔をしながら、それでも優しく笑ってくれた。


「そっか。……いいこと知れたな」


「……ああ」


言葉にするより先に、身体が動いてた。

紙袋を抱えたまま、俺は樹の胸元にそっと寄った。


ハグをする。静かに、だけど、しっかりと。


「……ありがとう」


呟くと、俺は彼の腹のあたりに頭を押しつけた。

この人がくれた優しさが、体温になって染みこんでくるみたいだった。


小さな腕で樹の腰をぎゅっと抱きしめて、顔を彼の腹のあたりに擦り寄せた。

「すき」って、言葉じゃ足りない。

だから俺は、行動で伝えたくなる。


ぐりぐり。

頭を押し付けて、甘えるようにくっつく。


本当はもっと……額にキスとかもしたいけど、今はこれで我慢する。


「俺、ほんとに、樹が好きだよ」


前世から、推しだった人。

でも今は、幼馴染として、大切にしてくれる人。

どっちも、全部ひっくるめて、俺の大好きな人。


その日は、夕焼けが少しだけ長く続いた気がした。

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