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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第1章 幼少期編
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くっつきたい気持ち

日が沈みかけた時間。俺は、いつものように公園のベンチで樹を待っていた。

宿題も終わらせて、ちゃんと聞かれたら「終わった」って言えるようにして。


いつもの散歩帰りだろう、樹が向こうから歩いてくるのが見えて、俺は立ち上がった。


「樹。」


「おう、透。今日も待ってたのか」


「うん。……ちょっと、話したいことがあるんだ。」


「ん?」


ベンチに並んで座って、俺は言った。


「……ほんとは、ハグだけじゃなくて、みんなのきほっぺたとか、おでことか、キスしたいんだ。……好きだから。いっぱい、ハグもしたいし、くっついていたい」


言った瞬間、胸がちくりとした。

こんなこと言ったら、変な子って思われるかもしれない。


「でも……きっと、嫌がられるから、しないんだ。……好きだけど、そうしたら困らせちゃうかもしれないし。だから、ぎゅーだけ」


目の前の樹の横顔を盗み見た。

樹は驚いたように目を瞬いてから、静かにため息をついた。


「……透、よく我慢してるな」


「うん。……えらい?」


「すげぇ、偉いよ。……だって、お前、自分の気持ちより相手のこと考えてるんだろ? それって、簡単にできることじゃねぇよ」


そう言って、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。

その手があったかくて、言葉以上に優しくて――


「……っ!」


たまらなくなって、思いきり樹にしがみついた。

いつもの“ぎゅー”より、もっと強く、もっと深く。


「……すき。だいすきだ。……樹、ありがと」


「お、おう……」


いつも通りちょっと困ったような、でも優しい声。

その反応が、少しだけ涙が出そうになるくらい嬉しかった。


好きって言いたい。触れたい。くっつきたい。

それが「重い」って思われること、俺はもうわかってる。


でも――その重さを、受け止めようとしてくれる樹が、俺はやっぱりすごく、すごく好きだった。

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