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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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お仕置き

数日間、樹はとある新作のオープンワールドゲームにドハマりしていた。配信は毎日、昼過ぎから深夜まで。気づけば10時間以上の長時間プレイが当たり前になっていた。


画面の中の彼は元気そうに見える。けれど、声は日に日にかすれ、目の下のクマが濃くなっていく。


「まだいける、あとちょっとでこのダンジョン攻略できるから……」


そんな言葉を繰り返し、食事も睡眠もまともに取っていなかった。


――その頃、透は山の寺で滝行や座禅などの修行に出ていた。スマホは当然没収。彼にとって修行は難しくもなんともなかった。ただひとつ、樹と連絡が取れないことだけが心にぽっかり穴を空けていた。


「…少し、寂しいな」


無表情で滝に打たれながら、ぽつりとそうつぶやく姿は、鬼気迫るものがあった。


修行が終わり、ようやくスマホが戻ってきた透。山を下りる途中、SNSを開く。そこには見慣れた樹のタグと配信のスクショ、そして不安げな声が並んでいた。


【朝倉くん早く帰ってきて…】

【ご飯食べてないみたい】

【明らかにやつれてる】

【寝落ちしそうな顔してんじゃん…】


透は即座に樹のマンションへ、無言で向かった。


その日も、樹は配信をしていた。ゲームに集中していて、部屋のドアが開いたことにも気づいていない。コメント欄がざわつき始めたその瞬間、突然画面に映り込む黒シャツの男の影。


「……」


「……ん?あ、あれ?」


「悪い子、誰だ?」


「ひっ…」


「悪い子には……お仕置きが必要だよな?なあ、そんなに寝ずにゲームして……死にたいのか?」


その声は甘く優しい。だがその瞳には一切の揺らぎも許さぬ強烈な怒りが宿っていた。


【!?!?!?】

【やばいやばい】

【こわいこわいこわいこわい】

【朝倉くんガチギレじゃん】

【でも…ありがとう…】

【止めてくれてありがとう…】

【え?縄……え、縄!?】


「と、とりあえず、配信、切らせて……くれ!!」


その声が最後。画面がブラックアウトし、配信は切れた。


―――

配信が終わった部屋で、透はまるで儀式のように、持参したロープで樹の両腕を縛っていた。それはただの縛りではない。均等な力で血が止まらないよう計算された、美しくも奇妙な結び目だった。


「……お前、これどこで覚えたんだよ……」


「動画サイトだ。見たら面白そうだったから練習した」


「趣味でやるなよ!ていうか、外して!」


「ダメだ。お仕置き中だからな」


キッチンに向かい、透は手早く軽食を作る。出来たてを一口分ずつ、樹の口に「あーん」と差し出す。その間中、目が笑っていない。


「なんでこんなになるまで……。お前の体は、俺の大事なものなんだぞ?」


「……すいませんでした……」


食事の後、透は樹の手を引いて風呂場へ。服を脱がせ、まるで子どもを扱うように全身を洗い、髪を泡立て、丁寧に洗い流す。ヒゲやムダ毛、爪もきっちり整えられ、パックを貼られ、化粧水を叩き込まれる。


「少しは、反省したか?」


「……はい……ごめんなさい……」


疲れと安心が一気に押し寄せたのか、パックを貼ったまま樹はその場で寝落ちした。


髪を丁寧に乾かしたあと、透は彼を軽々とお姫様抱っこし、寝室のベッドへ運ぶ。


「……ほんとに、お前ってやつは。俺がいないと、すぐ無理する」


小さくため息を吐いた透は、樹の隣に滑り込み、そっと彼の額に唇を落とす。


「心配させるなよ。……バカ」

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