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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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質問コーナー

その夜も、透はぼんやりとパソコンの画面を眺めていた。


「またやってるな……」


画面の中では、樹がリスナーたちとゆるく雑談している。テーマも決めず、気の向くまま、まったりとした時間。

だが、その会話がだんだんと途切れがちになり――やがて、マイク越しに小さな寝息が聞こえ始めた。


【寝た】

【また!?】

【デジャヴ……】

【そろそろ恒例行事】


透は静かに立ち上がり、またしても樹の部屋へと足を運んだ。

少しだけ微笑んでしまうのは――やっぱり、自分がいないと駄目なところが可愛いからだろう。


樹のマンションに着くと、いつものように合鍵でドアを開ける。

配信部屋には、椅子に座ったまま眠る樹。モニターの前ではコメント欄がざわざわと揺れていた。


透はため息をひとつついて、カメラの前に現れる。


「……すまない、また寝てしまったようだな」


【キターーー】

【あさくらさん!】

【もう公式で番組持って】

【毎度ありがとうございます】


「すぐに配信を切る……つもりだったんだが」


コメント欄に視線を移すと、無数の「朝倉くんの話もっと聞きたい」「質問コーナーして!」の文字が並ぶ。

一瞬だけ考え、透は軽く頷いた。


「……わかった。ただ、その前に……」


そう言って椅子に眠る樹に近づき、優しく抱き上げる。

すっと背筋を伸ばし、安定した手つきで――まるで宝物を運ぶように――お姫様抱っこで寝室へ。


そして数分後、再びカメラの前に戻ってきた透は、椅子に座り直しながら落ち着いた声で言った。


「じゃあ……少しだけな」



---


質問コーナーは思いのほか楽しかった。


「得意料理? 最近はラーメンだ。スープから作ってる」

【ガチ勢】

【胃袋つかまれてる……】

「趣味は料理と……家事全般だな」

【完全に嫁】

【朝倉くん家事力高すぎでは?】


視聴者は、その落ち着いた声音と品のある微笑みに惹かれていく。


そして、ふいにコメント欄に流れた質問――


【樹くんのこと、どう思ってるの?】


透は一瞬だけ黙り、視線をカメラから外した。

ふっと息を吐き、口元に穏やかな笑みを浮かべながら答える。


「……大好きだよ。愛してるんだ」


それは、重くも押し付けがましくもない。

ただ、心の底から自然に溢れ出た言葉だった。


【……え?】

【え、まじで?】

【本気のやつ……?】

【あの微笑みずるい】

【嘘じゃない顔してた】


透は、それ以上何も言わず、しばらく静かに画面を見つめていた。

やがて、いつものように落ち着いた声で締めくくる。


「……じゃあ、そろそろ配信を終えよう。付き合ってくれてありがとう。樹が起きたら、伝えておくよ」


そう言って、配信を終える。


最後にちらりと映ったのは――モニターの明かりに照らされた、美しい黒髪と静かな横顔だった。

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