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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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コラボ配信で寝落ち

その夜、透は自室のパソコンの前でじっと画面を見つめていた。


樹が、ある中堅配信者と雑談系のコラボをしていたのだ。リラックスした雰囲気の中、ゲームもそこそこに、ふたりでゆるく会話を重ねていた。


だが、配信開始から1時間ほど経ったころ――


「……あれ? 樹くん……?」


画面の中で、樹の姿がピクリとも動かなくなった。頭が少し下がり、マイク越しに小さな寝息が聞こえ始める。


【寝た!?】

【まさかの睡眠配信】

【かわいいけど起きてー!】

【誰か起こしてこいw】


配信者は焦りながらも苦笑していた。


「えーっと、これ……どうしよう。ていうか、配信切れるのって、樹くんだけ?」


その言葉に、透は一瞬だけ躊躇った。


(……仕方ないな)


そして立ち上がり、部屋を飛び出した。


マンションまでは早歩き、いや、ほぼ全力疾走だった。

エレベーターの中でもスマホで配信を見ながら、樹がそのまま寝続けているのを確認しつつ――ようやく、扉の前にたどり着いた。


ピンポンはせず、合鍵でそっと中に入る。


リビングには、PCの前でぐったりした樹。そして、配信画面が映るモニター。

透は一度深呼吸してカメラの前へ。


「……すまない、うちの樹が寝落ちたみたいだ」


映った瞬間、コメント欄が爆発した。


【きたああああああ!!】

【伝説の朝倉再登場】

【息切れしてる!?】

【やっぱり合鍵持ってんのかよw】


額にはうっすら汗、息は少し荒く、それでも冷静な声でマイクに向かう透。


「この配信ソフト、どの操作で終了させればいいだろうか……? すまない、手間をかける」


配信者は爆笑しながら操作を説明し、それに従って透は無事に配信を終了させた。


最後に、画面越しに一礼。


「うちの樹が……すまなかった」


【“うちの樹”www】

【彼女か】

【同棲確定演出すぎる】

【美形で謝られても爆笑しちゃう】

【むしろ感謝しかない】



---


そして後日。


樹のチャンネルで行われた謝罪兼お詫び配信。本人は開口一番、


「ほんっとに、すまんかった……寝る予定はなかったんだよ、マジで……」


と深く頭を下げる。


ゲストに呼ばれたコラボ相手も、笑いながら語った。


「いや、正直あの登場は神回だったよ。こっちもリスナーも、最後には拍手だったしね」


さらに話題は、後日こっそり届いた「ちょっといいお菓子」の話に。


「え?あれ、送ったの透くんだろ?」


「……まぁ。本人にも謝ってくれって言われたしな。ちゃんと詫びは通すタイプなんだよ、俺も」


「本当に、律儀で面倒見いい彼女さんで……いや、違った幼馴染さんで!」


ふたりとも、また爆笑。


コメント欄は温かくざわつきながらも、

【あの配信は伝説】

【朝倉くん株爆上がり】

【神回またやってくれ】

の文字で埋め尽くされた。


そんな賑やかな空気の中、配信は無事終了。

そして、透はその夜、樹の家で「次から配信前に予定は教えろ」と念を押し、帰っていった――いつもよりちょっとだけ、強めのハグを添えて。

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