表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
16/152

金曜日の夜ご飯②

「ごちそうさまー……はあ、満足」


食後のソファに沈み込んだ樹が、腹をさすりながら言う。

ダイニングのテーブルには空になったどんぶりと、透が作った豚うどんの名残が並んでいた。


透は手際よく皿を流しに運びながら、冷蔵庫から保存容器を取り出す。

そこには作り置きのきんぴらごぼう、煮卵、鶏ハムが並んでいて、それをタッパーに詰めなおして整えていく。


「なあ、透」


「ん?」


「……いつもありがとうな」


背後から聞こえたその声に、透はほんの少しだけ手を止めてから、ゆっくりと振り返った。


「どういたしまして。でも――好きでやってることだからな」


透の声は変わらず静かで、どこか微笑んでいるような無表情だった。


「それでもだよ。俺、家事はてんでダメだからさ。配信で疲れ切ってるし……金出すことくらいしかできねえし」


「お金を出してくれるだけでもありがたいよ。それに、好き勝手に作れるから楽しいしね」


透はふと笑う。くすっと、ほんの一瞬だけ。


「この前のさ、ルーから作ったカレーとかさ。バケツプリンとか」


「あー。あれ、おいしかったよなあ。特にあのカレー、ちゃんと辛さも俺好みにしてくれてて」


「まあね。今度はラーメンでも作ってみようか」


「ラーメンを手作り!?」


樹がぎょっとして身を乗り出す。

透は、ふわりと目元だけで笑った。


「ふふっ。……でも」


「ん?」


「料理はもちろん、好きでやってることなんだけど」


「……?」


「――花嫁修行でもあるからな」


言い終わった後、透は少しだけ樹の反応を窺うように目を伏せる。

樹はしばらく黙ったあと、鼻を掻きながら目をそらした。


「……そういうの、さらっと言うの、ズルいよな、お前」


「そうか?」


「そうだよ」


透はまた一つ笑う。どこか照れたような、けれど言葉には出さない、ふわりとした笑顔。


そして何も言わず、また背を向けてタッパーを整理し始めた。


言葉より行動。

それが自分の愛情表現だとわかっているから。

でも、たまにはこうやって“言葉”にしてしまいたくなる。


――それもまた、恋というやつなのだろうと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ