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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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ゆーれー

今日はワイワイ系のまったり配信。

タイトルは《おやつ持ち寄りパーティー!みんなの推しスイーツ教えて!》。

参加してるのは、朝倉・樹・リリィ・陽向(小学生)・雑談系のメイ・ゲーマーのツバサ。机いっぱいのおやつが並び、コメント欄も最初からテンション高め。


「バウムクーヘン、厚さ3センチで切ってるの誰だよ」


「朝倉。ケーキは厚い方がうまいって知ってるから」


「正解だな、それは」


わいわいと盛り上がるなか、チャイムが鳴った。


「あ、レイジさんだ。ちょっと行ってくる!」


リリィが玄関に行き、少しして戻ってきた。

その後ろから入ってきたのは、黒いパーカーにマスクの男、レイジ。先週、肝試し配信で有名な廃旅館に行ったばかり。


「どーも~、遅れてすみませ~ん! あ、スイートポテト持ってきました~。あと肝試しで幽霊に手振ってきたレイジで~す!」


その瞬間だった。


パキッと、空気の温度が変わる。


朝倉が、ぴたりと動きを止めた。


手に持っていたティースプーンがコトンと落ちる。


無言でレイジをじっと見つめた後、絞り出すように呟く。


「……うっわ」


レイジ「え? え、なに?」


朝倉「お前……ホラースポット、行ったろ」


「……まぁ、うん。配信でね?」


「うっわ……うわうわ……マジか……はは……いやちょっと待って、これは……」


朝倉は、顔色ひとつ変えずにじっとレイジの背中の“ちょっとズレたあたり”を見つめながら、ボソボソと呟き続ける。


「……擦れてる。音してる……ぞ……布ずるって音……あー、これはちょっと、うん、やっばいな……」


周囲が凍りつく。


リリィ「えっ!? え、朝倉くん、見えてんの……?」


ツバサ「ちょ、おい、やめてくれよ!?」


メイ「ひっっっっっっ!! 朝倉くん、それ、冗談だよね!?」


樹「……朝倉」


「……」


「……また“黙るとき”の顔してるな。おい、マジのやつか」


コメント欄も当然ながら騒然。


《え!? なに!? え!?》

《擦れてる音って何!?》

《怖い怖い怖い怖い》

《レイジさん配信で連れて帰ってきたやつやん……》

《朝倉が黙ってるときはやばいときって知ってる》

《樹の“またか”みたいなトーン好き》


レイジは乾いた笑いを浮かべつつも、半歩だけ後ずさる。


「……マジでなに? なんか、変なん? 俺、なんか憑いてんの?」


朝倉は一言も答えないまま立ち上がる。


すっとレイジの背後に回り込んだ朝倉、低く呟いた。


「――いくぞ」


「……は?」


バンッッ!!!!!!!


朝倉の掌が、ものすごい音を立ててレイジの背中を叩いた。

レイジ「ふぐっ!」と前にのめって、咳き込む。


メイ「きゃあああああああ!!」


ツバサ「な、なにが起きた!? 今のなに!?」


リリィ「うわ、塊飛んでった!! 空気が揺れたっていうか!」


コメント欄:

《バンッッッ!!wwwww》

《うっそwww叩いたwww》

《めちゃくちゃ効いてて草》

《叩いて落とすタイプの除霊!?》

《除霊系男子、朝倉》


樹「……朝倉」


「まだ残ってる」


次の瞬間、朝倉は無言で、虚空に向かって――


シュッ! シュッ! シュッッ!!


無人の空間に向かって、鋭く、三回の蹴りを放った。


ツバサ「うっわ、見えない相手と戦ってるやつだ……!」


リリィ「見えないなにかを追い出してるんだよこれ……!」


メイ「……あれだよね、アクション映画じゃないよね!?」


コメント欄:

《虚空キック!?!?!?》

《見えない敵に三連撃》

《ホラー回かと思ったら格ゲー始まってた》

《バンからのシュッシュッがもうダメw》

《朝倉、バチバチに決まってて草》


最後に朝倉は、ふうっと息を吐いてキッチンへ向かった。

冷蔵庫と棚を探りながら、冷静な声で呟く。


「……酒、あった。あと塩も」


みんな「「「塩!? 酒!? ってお前、まさか――」」」


そのまま、朝倉は塩を盛り、酒を少し撒く。


「念のため、空気ごと浄化しとく」


淡々と塩を角に置き、テーブル周りに軽く酒を散らす(もちろん最小限、掃除考慮済み)。

その光景に、全員がただただ唖然。


レイジ「……俺、なんか、ほんとに……憑いてたの?」


朝倉「うん。割と強め。たぶん、廃旅館にいた誰か」


「……マジかよ……いや、ごめん、ほんと……」


樹「気づいてなかったのか?」


レイジ「いや、ちょっと肩重いな~とは……」


リリィ「それ、完全に憑いてたじゃん!!!」


コメント欄:

《除霊完了おめでとうございます》

《うちの配信者がすみませんでしたw》

《レイジさん、次回の肝試しは命懸け》

《朝倉兄ちゃん、万能すぎんか》

《今日のおやつ会:除霊と浄化とスイートポテト》


数分後、空気がすっかり軽くなり、再びスイーツタイムに戻った面々。

でも、誰ひとり、朝倉の近くに「塩」を置きたがらなかったのは言うまでもない。


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