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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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画面に映るのは、並んで座る朝倉と樹。

今日は穏やかなトーク配信。BGMはゆるめのローファイ。

コメント欄は、冒頭からいつも以上に穏やかで和やかで、ふたりともリラックスした空気を纏っていた。


「……そうそう。最近、ファンアート多くない?」


「多いな。俺も見るたび、ありがたいなって思う。ちゃんと目ぇ通してるよ、俺も」


「うん。……どれも愛がこもってて、すごく嬉しい。俺たちが知らない顔とか、ちょっとした仕草とか、ファンの目線からしか描けない瞬間が多くて、感動する」


朝倉の声は穏やかで、けどほんの少し熱がこもっていた。

コメント欄は「描いてよかった…!」「嬉しい…」「え、見てくれてるの…泣く」など感激の嵐。


「……てかさ」


と、朝倉が少し体を前に乗り出した。


「俺、エゴサけっこう得意でさ。隅々まで見てる」


「隅々……?」


「うん。タグついてないやつも探すし、英語とか中国語とかのやつも見に行く。なんなら、たまにPixivまで掘る」


「やべぇな……プロのエゴサじゃん」


「で、さ」


「……うん?」


「腐女子のファンアートとかも、よく見る」


「…………え?」


樹の目が、一瞬で見開かれる。


「いや、あの……それ、ええの?配信で言って」


「うん。大丈夫だよ、俺たち公式だから」


サラッと、地雷を踏み抜くような発言。

コメント欄が「待って?」「え?」「聞き間違いじゃないよな?」「公式って言った?」「これ録画残るの?」と混乱し始める。


「でさ、そういう絵とか……ほんと助かってる」


「……助かる、って……何が?」


朝倉は少し口元をゆるめて、さらりと続けた。


「主に、“夜”の参考にしてる」


「は!?」


樹の顔が一瞬で真っ赤に染まった。


「ばっ、バカお前!!配信だって!!今これ、生配信中!!!」


「知ってるよ?」


「知ってるなら言うな!!!」


慌てた樹が朝倉の口を両手で塞ぐ。

朝倉はされるがまま、けれど抵抗もせず、大人しく口を閉じたまま肩を揺らして笑っている。

コメント欄はそれを見て爆発。


「妄想が公式に参考にされてる!?!?」「やばいやばいやばいやばい」「正気かこのカプ!?」「お前らの夜に我々が貢献してる世界、控えめに言って地獄(天国)」


「……マジで……あのな、これ絶対切り抜かれるだろ……俺の立場……!」


樹は口を押さえたまま、少しだけ情けない声を漏らす。

けれど、そんな中でも朝倉はさらっと口を開いた。


「……だって、俺は“お前のもの”だからな。夜の顔も、ちゃんと完璧にしてたいんだよ。お前が喜ぶように」


樹がその言葉で、またも沈黙する。

一瞬、目を逸らしてから、ふっとため息をついた。


「……お前さぁ、ほんと……」


その先は言葉にならなかった。

ただ、画面越しのコメント欄は、もう阿鼻叫喚。


「無理、無理、無理」「朝倉の愛が重い(最高)」「死ぬ、ほんと好き」「夜の参考って何!?何を見て!?」「こっちは供給で心臓が止まりかけてるんですが」


そして、一番流れていたのはこの言葉だった。


「――“妄想が、現実になった”――」

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