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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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ビリビリ

大型コラボ配信。画面には豪華な顔ぶれが並び、視聴者数はあっという間に十万を超えていた。進行役の明るい声と共に、配信は罰ゲームタイムへと突入する。


「さあ~、スゴロクの運命は誰に微笑むのか! スタートぉ!」


スゴロクボードの駒が止まった先、それは――罰ゲームマス。


そしてそこにいたのは、初参加の朝倉だった。


「……あ、俺か」


朝倉は少しだけ目を丸くしたあと、静かに「へえ」と呟いて笑った。まるで、珍しいお菓子を見つけた子供のように、素直な興味を滲ませながら。


「えー! 初参加でいきなり電流とか可哀想~」


「どんな洗礼だよ……」


他の配信者たちがざわめく中、朝倉はパッドを付けられながら、至って落ち着いていた。というより、どこか楽しそうですらある。


隣に座る樹は、モニター越しにちらりと朝倉を見て、「無理すんなよ」とだけ声をかけた。


「ん。大丈夫。……ちょっとワケあってな、痛みには耐性があって」


朝倉は何でもないような顔でそう言った。


深くは語らない。けれど、その言葉の端に、どこか柔らかい影があった。普段の配信では見せない、少しだけ静かな顔。


しかし次の瞬間には、再びいつものクールな調子を取り戻していた。


「ま、経験としては面白そうだし。やってみたい」


「いやいやいや……罰ゲームって基本“嫌”がるものだよ!?」

「テンションが朝倉くんだけ違うんだけど……」


配信者たちがツッコミを入れる中、進行のカウントが始まる。


「いくよー! 3、2、1――ビリッ!」


ピリリリリッ――!!


その瞬間、他の配信者たちは顔をしかめたり、思わず自分の手をすくめたりしていた。視聴者コメントも「うわぁぁ」「大丈夫!?」とざわついていた。


だが、当の本人――朝倉は。


「……おお、なるほど。これが電流か。確かに、芯から来る感じ。表面は大丈夫だけど、骨の奥にジワッとくる」


ごく冷静に、感想を述べていた。


「なんか、悪くないな。面白い……えっ、もう一回やっていい?」


「やめとけ!」

樹が思わず笑いながら止めた。


「マジで楽しんでるやつ初めて見たわ。お前、バグってんのか?」


朝倉は苦笑しながら肩をすくめた。


「だから言ったろ。ちょっとだけ、痛みには慣れてんの。昔から、いろいろあって」


言葉はさらっとしているのに、ふと空気がひと呼吸ぶん静かになる。


けれど、朝倉はすぐに口角を上げた。


「まあ、今はもう平気だし。こうやって皆でワイワイできてるの、楽しいしな。電流すらお祭り気分で味わえるのは、わりと幸せだと思う」


「……強いなぁ、朝倉くん」


「いや、感性どうなってんだよ……」


「好きになっちゃうだろ、そういうとこ……」


コメント欄も、もはや笑いと戸惑いと惚れの入り混じったカオス状態。


進行役がうっすら笑いながらマイク越しに言った。


「……あの、これ罰ゲームなんですけど……」


「え? ごめん、忘れてた。罰ゲームだったか、これ」


ほんの少しだけ照れたように、朝倉が言う。その横で、樹は肩を揺らして笑いながらつぶやいた。


「……お前がいちばん罰ゲームしてねぇわ」


その後、朝倉の「電流平気」エピソードは伝説の一つとなり、彼のイメージには“ちょっとズレた感覚を持つ最強高校生”というタグが追加されたのだった。

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