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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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グルシャン

二人でいつものように配信してたんだけど、今日の話題は「朝倉くん、なんでそんなにオタクに詳しいの?」ってコメントから始まった。


「高校のクラスメイトにオタク多くて、仲良くなったギャルたちからだけじゃなくて、オタクの子たちからもいろいろ教わってる。たぶん俺、いまクラスで一番オタクの生態詳しいと思う」


「俺より?」

「うん」


即答された樹がちょっとだけ苦笑いする。そのあとに朝倉が続けたのは、なかなかのパンチだった。


「こないだ、“グルシャン勢”って人たちがいるって聞いた」


「……グルシャン?」


樹が少し身を乗り出す。コメント欄が一瞬止まり、次の瞬間、ざわつき始める。


「お、おいまさか……」

「朝倉くんそれ言っちゃう?」

「出た、禁断のワード」

「グルメシャンプー……まさか……」


「“グルメシャンプー”の略らしい。推しが使ってるシャンプーを、そのまま飲む人たちのこと」


「…………飲むって、“頭に使う”やつの話だよな?」


「うん。飲む。推しと同じ香りを体の中から出したいって」


樹の顔がスン……って固まる。


「……いやいやいや、待て待て。飲むって、飲料じゃないよな、あれ……え、ガチで言ってんの? 飲んでんの? 頭に塗るやつ、体内に入れてんの?」


「ガチ。しかも“ちゃんと飲んでも平気なシャンプーを選んでるから問題ない”って言ってた」


「問題しかないだろ……」


朝倉は真顔。コメント欄はもう大騒ぎ。


「朝倉くんが言うと信憑性やばいんだよな……」

「樹さんの理性が崩れていく音がする」

「グルシャン勢、まだ存在してたのか」

「愛とは……?」

「でも気持ちはわかる……かもしれない……(錯乱)」


「あと、“飲む前に一回泡立てると推しと間接キス感があって良い”とか、“風呂場で口に含むとライブ感が出る”とか、細かいこだわりもあるみたい」


「いやもうやめろやめろ! 細部まで描写すんな! 情報量が暴力なんよ!」


樹は軽く頭を抱える。けどコメント欄は「もっと教えて朝倉くん!」の嵐。

朝倉は淡々と語る。


「俺は飲まないけど、“そういう気持ちになるほど、推しを愛してる”ってことは分かる。ちょっと怖いけど」


「“ちょっと”で済ませるのがすげえよ、お前……」


コメント欄:


「冷静に受け止めてる朝倉くんが一番怖い説」

「グルシャン勢、たぶん宗教団体」

「樹さんがガチで引いてて笑う」

「でもわかる……わかるんだよ……」

「俺も推しの柔軟剤は買ったことある……飲まないけど」


樹は「もうこれ以上聞いたら戻れない気がする……」と呟きながらも、しっかり最後まで聞いてくれるあたり優しい。


朝倉はちょっとだけ笑って、

「まあ、そういうのも含めて、オタクの愛って深いよな」

とだけ言って、話題をそっと変えた。


あげといてなんだが、グルシャン勢ってこんなんじゃなかった気がする。

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