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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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猫耳

「……え、つけてる?」


配信が始まって数分後、コメント欄がざわつきはじめる。


《え、猫耳……?》《朝倉、今日なんか違くない?》《なんか生えてる!?》《しっぽ、あるよね……!?》《猫化しとる》《猫、猫だ!》


その声に樹がようやく画面を見て、隣の朝倉の頭を凝視する。


「おい、それ……それ、マジで動いてないか?」


朝倉は無言でちらりと目を動かし、尻尾をゆっくりと後ろで揺らした。


「……いやいやいや、え、どうなってんの?」


「もらったんだ。猫耳と尻尾。リアルなやつ。音と筋肉の動きで反応して、表情とか心拍に合わせて動くやつ」


「……こえーよ技術。いや、すげえな」


樹が思わず立ち上がって、朝倉の後頭部をのぞきこむ。


「どこにどうくっついてんだよそれ、マジで自前みたいじゃん……てか、違和感なさすぎる。お前に」


「でしょ。俺もつけて鏡見たときちょっと思った。“……似合うな”って」


「いや思ったんかい」


《本当にリアル》《えっぐ、かわいい》《目と耳と尻尾が連動しててやばい》《うそでしょ実写のケモミミやん》《動きが自然すぎる》《もはや本人の一部》


「ほら、見て。ほら。音に反応する」

パチンと指を鳴らすと、猫耳がぴくんと動く。


「うわ、……ちゃんと向くな。うわ……すげえ、なんかもう……」


「触ってみる?」


「……いいの?」


「壊すなよ」


「俺をなんだと思ってんだ」


慎重に手を伸ばして、耳の付け根に触れる樹。ふにっとした感触に「うわ、すげえ」と小声で感嘆する。


「これ、素材なに?人工皮膚?……え、でも体温あるし、心拍に反応してるってことは、あー……センサーとAI連動か。うわ、ガチのやつだこれ」


「そう。死ぬほど高かったらしい。プレゼントで届いたけど、送ってきたやつ、たぶん変態かオタクのどっちかだと思う」


「お前がつけるから成立してるだけで、俺がつけたら放送事故だなこれ……」


「うん、似合わないと思う」


「即答すんな」


《喧嘩すな》《朝倉以外つけたら確かに事故》《あまりに似合ってて公式設定にしてほしい》《ていうかもう生えてるでいい》《猫朝倉、爆誕》


「でもほんと、朝倉……つけても違和感ねえな。っていうか、むしろそっちが本体?」


「そんなわけない」


「いやいや、今日の配信は“朝倉、猫になる”で確定だわ。タイトル回収された感ある」


「じゃあ、次は……“樹、餌やりに挑戦”?」


「やめろ」


樹が苦笑して突っ込む横で、朝倉の尻尾が静かに揺れた。耳もぴくぴく動き続けていて、どう見ても“嬉しそう”。


「……やっぱすげえわ。それ、どっからどう見ても、今“嬉しい”って顔してる耳と尻尾してる」


「でしょ。ちゃんと感情と連動してるから」


「お前、普段クールなのに、こういうとき感情出まくってんの、ちょっと反則だぞ」


「ふふ。わかりやすいだろ」


「いやほんと、こういうの似合うから困るんだよな……」


コメント欄が「やっぱ付き合ってる」「これで付き合ってないなら嘘」「もう結婚しろ」で埋まっていることに、ふたりはまだ気づいていない。


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