新しいクラス
入学式のあと、透は体育館前の掲示板に貼られたクラス分け表の前に立っていた。
「1年B組──…俺、ここか」
その隣にはすでに、透の幼なじみである何人かの顔ぶれがいた。小中学校を一緒に過ごしてきた旧友たち。名前を見つけるたびに、透はほんの少しだけ目元を和らげていく。
「おい、透じゃん! マジで同じクラスかよ!」
「うん。嬉しい」
駆け寄ってくる友人に、透は自然に言った。
そしておもむろに一歩近づくと──
「ギュッてしてもいい?」
「……相変わらずだなお前。いいよ、ほら」
了承を得ると、透は長身を少しだけ折り、きゅっと相手を優しく抱きしめた。
「会えてよかった。これからもよろしく」
そう言って、親しい男子の頬に軽くキス。
別の女子には、髪をそっと撫でてから額に。
「う、うわー……キス魔再来かよ透~!」
「ちゃんと聞いてるから問題ない。嫌ならしない」
落ち着いた口調で淡々と返す透に、昔からの知人たちは笑いながら受け入れていた。
そんな光景を、後ろから見ていた初対面のクラスメイトたちは──ぽかんと口を開けていた。
「……すげぇ……なんかもう、強キャラ感えぐい……」
「ちょっと、あれ本気でやってるの? でもなんか許されてる……」
困惑とざわめきの中、透は新しい顔に気づいて近づく。すっと右手を差し出して、クールな表情で言った。
「はじめまして。透。仲良くしたいから、握手してもいい?」
「……え、あっ、う、うん!」
そのまっすぐな瞳と落ち着いた声に、断れる者はいない。
握手を交わすと、透は小さく、けれど確かに笑って言った。
「これからよろしく。友達には……ギュッとしたくなるかも。でも、ちゃんと聞くから安心して」
その場にいた誰もが、その瞬間、透という存在に強烈な印象を刻まれた。
──まだ高校生活は始まったばかり。
けれど、透はいつも通り。変わらぬ愛情の示し方で、自分の世界を静かに広げていく。