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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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ピアス

のんびりした配信中。ゲームを中断して雑談タイム。

朝倉が何気なく、イヤーカフを外して机に置く。ふと、それを見た樹がつぶやく。


「そういや……朝倉って、ピアス開けてないんだな。意外と」


「開けてないだけだよ。開けたくないわけじゃない」


「え?」


「ほら、今のうちってさ、校則でアウトじゃん。だから我慢してる。イヤリングとかイヤーカフで誤魔化してるだけ。ほんとは……耳も、軟骨も、口も、へそも、開けたい」


「……口?」


「うん。下唇の端とかに開けて、耳のピアスとチェーンで繋ぐの、かっこよくない?」


樹が思わず眉を上げる。


「え、なにそれ初めて聞いた……。そんなのあるんか?」


「あるよ。シルバーとか、細いチェーンとかで繋いで……あの無骨さと繊細さのバランスがいい。服によって金も使い分けたいし、左右非対称でも遊びたい」


「……完全に“モデルの顔”してるな今」


「だろ?」


コメント欄がざわつく。


《チェーン!?》《口!?》《こわ……いやわかる……》《朝倉くんの美的感覚、世界観強すぎ》《ピアスで世界作るタイプ》《へそも開けたいの草》《口ピはちょっとこわいけど見たい……》《校則で耐えてるのえらすぎん?》《え、チェーンで繋ぐのマジでかっこよそう》《デザイン画描いて》


樹は腕を組んで、ふーっと息をつく。


「まあ……俺は無理だな。痛いの嫌いだし、そもそもアクセサリーもつけない。時計くらいだよ、唯一身につけるの」


「知ってる。そういうとこ好きだよ」


「やめろ照れる」


コメント欄:《こいつらすぐ惚気る》《わたしは時計です←重》《好きだよって、普通に言うのすご》《また口説いてる》《重くない“好き”なのに、ちゃんと深いのいいな……》


樹は少し口元をほころばせながら、真顔で言う。


「でもまあ……お前が開けたいなら、開ければいいと思う。好きなようにすれば?」


朝倉は少しだけ笑って、イヤーカフを手に取る。


「開けられる日を待ってる。たぶん、開けた瞬間めちゃくちゃ増えると思うから、覚悟しとけよ」


「うわー……まじでやりそう。ほんと、制限がなくなったら一気に世界変えそうだよなお前」


「全部、今はただの準備期間。抑圧って、自由になった瞬間の爆発力すごいから」


《その言い方こわい》《怖くて美しいって最高じゃん》《開けた朝倉くん、絶対止められない美しさになる》《抑圧→爆発が似合いすぎる》《デビュー前のラスボス感》


樹が笑いながら言う。


「じゃあ、俺はその変化を横で見てる役ってことで。暴走しても、止める気はないけどな」


「助かる。止められても止まらないけど」


「知ってた」


そんなふたりのやりとりに、コメント欄が再び湧き上がる中、配信はまた穏やかにゲームに戻っていく。

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