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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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マグロの解体ショー

【豪華なホテルのバンケットホール。配信者たちが集う一大パーティー。】


各テーブルでは、おしゃれなフィンガーフードとグラス片手に談笑する配信者たち。朝倉と樹も、壁際のテーブルでまったりしている。


「では皆さま、お楽しみのメインイベント、マグロの解体ショーのお時間でございます!」


(司会がマイク越しに高らかに宣言すると、軽くどよめく会場)


その瞬間、朝倉が「メイク直してくる」とぽつりと言って、すっと会場を抜ける。


「あ、いってら。……ん? メイク?」


(そのまま数分後――)


奥の扉が開き、氷を敷き詰めた巨大な台の上に、巨大な本マグロが搬入される。


「うわっでか……」「本物じゃん……!」


そのマグロの前に立っていたのは――

白シャツに黒ズボン、後ろで髪を結び、無駄な装飾一切なしのシンプルスタイルの朝倉。手には無骨な出刃包丁。


「……………………」


無言で、しかし躊躇なくマグロに向き合う。

包丁を軽く滑らせて、魚の表面を見極めるように撫でる手付きは、完全に素人のそれじゃない。


(ザクッ)


最初の一刀で空気が変わった。静寂。

そのまま、無言で部位ごとに丁寧に切り分けていく朝倉。



---


「………………あっっっっっっっっっっっっっ!!」


突然、樹が叫んだ。


「言ってた!! 言ってたわ!!! 朝倉、“マグロの解体できるよ”って!!! 前に!!! 1回だけ!!!」


(思い出す:以前、料理の話をしてた時に、朝倉が「魚、解体もできる」って淡々と言っていた記憶)


「なんでスルーしたんだ俺! なんで“冗談だろ~”で流したんだ!?!? いや、あの時の朝倉、冗談っぽさゼロだったじゃん!?!?」


(目の前で中骨まで綺麗に取り分ける朝倉。無言で、手元を見つめ、ひたすらに冷静)


「うわ~~~っ!! もう俺のバカ~~~~~~~!!!」



---


【コメント欄】


《いやマジで職人》《ガチのやつやん》《包丁さばきで黙らせる配信者》《これほんとに朝倉……?》《普段の配信とスイッチ違いすぎて怖い》《知ってたら呼ばないわマジで(尊敬)》

《「メイク直す」って言って職人服に着替えるやつ初めて見た》《それ伏線だったの!?》《てか樹さん今ごろ何思ってるんだろ……あ、喋ったwww》《「言ってた」wwwww》《過去の記憶が走馬灯のように甦ってる樹さん好き》《これが“配信に必要な男”……》《スキル表どこ?》《いやもう怖い、スキル無限なの!?》《最終的に世界を救いそう》



---


【周囲の配信者たち】


「え? 朝倉くんがやるの?」「っていうか服装が変わってる時点でおかしかったんだよな……」「絶対料理人経験あるでしょ……」「うちのスタッフより手際いいんだけど」「てか“できる”って言われて信じなかった自分を殴りたい」「オフの日に刺し盛り作ってそう」



---


【マグロ解体完了後】


(無言で包丁をふき取り、軽く礼をして退出する朝倉)


(解体された中トロと大トロの盛り付けが運ばれてくる。拍手が自然と起こる)


樹、口をぱくぱくさせながら刺身を食べる。


「うっま……。うん、これたぶん、今食った中で一番うまい……」


「……ほんと、何で気づかなかったんだ俺……いや、言ってたのに……」


(頭抱える)


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