浮気したらどうする?
【夜のまったり雑談配信中。二人でゲームの合間にリスナーからの質問を読み上げている】
朝倉「──次、“もし相手が浮気したらどうしますか?”
……なかなか攻めてる質問、来たな」
(一瞬だけ画面に静寂が流れる)
樹「……」
(カメラをじっと見つめたまま、目の奥に一切の光がない。
それなのに、口元だけがにっこりと穏やかに笑っている)
「うん……そうだな。
俺が浮気されたら──たぶん、まず笑うと思うんだ。
こうやって……ニコォって。こんな感じで。
相手が不安になるくらい、笑顔で」
(そのまま穏やかなトーンで続ける)
「んで……静かに脚の腱を切って、歩けなくして、
どこにも行けないようにして……部屋の隅に座らせて、
『もう心配しなくていいよ。これからは俺が全部、世話してあげるから』って、言うと思う」
(その顔にまるで怒りも悲しみも浮かばない。ただ“決めた顔”)
(コメント欄、凍る)
《……あ?》《え?今……?》《ひえぇぇ》《その笑顔やめて》《マジでニッコリしてるの怖いって》《腱切る発想どこで覚えたんだよ》《もう質問したやつ出てこい!》
朝倉「……」
(何も言わずに、無言で見つめ返す。やっぱり目の奥に光はない。
それでも口角は動かない。笑っていない。けれど、怒ってもいない)
「……俺が浮気されたら?」
(淡々と、感情の色がまったく乗っていない声)
「……たぶん、“もう俺、いらない”って思う。
だから、『別れてくれ』って言われたら──ちゃんと了承する。
うん、納得して、別れると思う。……ただ」
(ふっと一拍置いて)
「……そのあと、ストーカーになるかな。
視界には入らないけど、“どこかにいる”っていう存在感だけ残して……
夜、ひとりでいるときに、ふと気配を感じさせる。
安心できないようにして、でも危害は加えない。
ずっと、『いた』ってことだけ、忘れないようにしてもらう」
(淡々と、まるで事務的な説明のように)
(コメント欄、発狂)
《待って》《やめて待って》《樹がヤバいかと思ったら朝倉が一番リアルで怖い》《感情ない声が一番刺さる》《怖すぎて手が震えてる》《“存在感だけ残す”ってどうやるの》《ホラー映画のモンスターが言いそうなセリフだったんですが!?》《ニコニコで腱切るやつと真顔でストーカーになるやつの配信てなに??》
樹「……」
(なおハイライトは消えたまま、笑顔で)
「──なんか、照れるな」
朝倉「……うん。ちょっと……恥ずかしいな。
俺たちさ、付き合ってるっていうか……壊れ方が似てるんだなって、改めて思った」
樹「壊れてんのか、俺ら」
朝倉「壊れてる。認める。でも、相性はいいと思う」
(コメント欄さらに混沌)
《照れてる場合か!!》《“照れるな”って言葉がここまで怖いとは》《この二人に恋愛の話させちゃいけないってよく分かった》《安心させるワードが一個もなかった》《むしろ安心できないようにするって言ってた》《浮気どころか他人と話したら刺されそう(褒め言葉)》《いや褒めてないわ!》《助けて!》
朝倉「じゃ、次。……“最近食べたおいしかったものは?”
……やっぱこういう質問、ホッとするな」
樹「でもお前、さっきまで“気配を残す”とか言ってたやつだよな」
朝倉「お前だって“腱切る”とか言って笑ってたよな」
(コメント欄:
《温度差で風邪ひいた》《地獄の後のスイーツタイム》《この配信地獄から帰ってきてパンケーキ食べてるみたいな感じ》《なかったことにすんな!!》)