嫌いな叔父
【とある豪華な配信者イベント会場。招待者・スポンサー・関係者が集まる中、朝倉と樹もペアで参加】
(ドリンク片手に立食していた朝倉の表情が、ふいにぴたりと止まる)
「……ん? どした?」
(その視線の先には、例の叔父。パリッとスーツに身を包み、スポンサー関係者に混じって談笑中)
「……おい、お前も来てたのか。
あいかわらず気味悪い格好してるな。いつまで女の真似事やってるんだか」
(数秒の沈黙。朝倉の笑顔が、静かに引き攣る)
「へぇ……久々に見たと思ったら、よくもまあ人前に顔出せたな。
恥って概念、お前の辞書にはないらしい」
(低い声で、笑ってすらいない。空気が一瞬止まる)
「てか、あれか。今日は“スポンサー様”って立場だから、勘違いして出てきたわけ?
自分が偉くなったとでも?」
(叔父が睨み返す。だが朝倉は、微動だにせず、むしろ一歩踏み込んで)
「お前みたいな中身のない人間が“教育”語って他人の人生こじらせて、
責任一つも取らず、周りに守られて老けていくだけの姿って──
あまりに滑稽すぎて、見てらんないな。なぁ、誰がここ呼んだんだよ」
(ざわめく周囲。スポンサー・スタッフが距離を取り始める)
「……おい、朝倉──」
(朝倉は軽く手をあげて制す)
「だいじょうぶ、暴れない。最低限のモラルくらいある。
でも俺は、“お前の口から何を言われても傷つかない”って宣言しに来ただけ。
その程度の価値しかないって、自覚しとけ」
(無音。叔父、怒りに震えながらも言い返せない。周囲の空気が完全に冷える)
(コメント欄【パーティーの公式生配信中】)
《ちょ、今の朝倉…?》《静かなのに怖いってなに》《一語一句が刺さる》《攻撃力の高い言葉の刃》《叔父、公開処刑》《スポンサーなのに空気》《朝倉、優雅な猛獣》
(朝倉、ふっと笑って、ドリンク置いて席を離れる。その後ろを、顔を引きつらせたままの樹が追う)
裏側スペースにて──
樹「……こえぇよお前……」
(朝倉、ふっと振り返って)
「大丈夫。理性で止めてたろ。言葉だけで済ませた。偉くない?」
「……こわいけど、すげぇ好き……」
「うん、それ今ちょっと褒められてるのかバグってるのかわかんねぇな。
でもありがとう、ちょっとだけ落ち着いた」
(コメント欄もざわつき続ける)
《え、怖かったけど美しかった》《あれが噂の叔父!?》《朝倉のスイッチ入った時の迫力やば》《でも樹もバグってる》《あんな口の悪い愛もあるんだ…》《二人とも愛が強すぎる世界線》
(数日後、配信で事件を振り返る)
「さすがにあれは本気で言った。止めてくれてありがとう」
「俺、止めたっけ?」
「無言で肩に触れてくれた。あれなかったらワイングラス飛んでた」
「……そこまでだったんだな……」
「うん。まだ殴ってないだけマシだった」
(コメント欄:
《やっぱり殴りかけてた》《理性あるのが朝倉のすごさ》《怖くてかっこいい》《一番の被害者はワイングラス》《樹の感覚が壊れてるのが一番怖い》)