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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
113/152

無人島に一つ持って行けるとしたら、何を持ってく?

【配信:雑談枠/ゲーム終了後のお便りコーナー】


(コメント読み中)


「……お、次のおたより。“無人島にひとつだけ持っていけるなら何を選びますか?”」


「おー、ありがちだけどいい質問だな。

俺は……まあ、現実的に考えるなら“浄水器”とかか? 飲み水なきゃ生きられねーし」


「ふふ、無難で優等生」


「おい、なんだその言い方。じゃあおまえは何にするんだよ?」


「サバイバルナイフだったな」


「だった?」


「うん。俺、実際に持ってったことあるから」


「……はい?」


「えっとね、小4くらいの夏休み。某・樹の親族のおじさんに、“教育だ”って無理やり連れて行かれて、一週間、無人島でサバイバルしてた」


(コメント欄ざわつく)


《は!?》《ちょっと待って?》《サバイバルした経験者!?》《過去形ってそういうこと!?》

《急にワイルドエピソード》《朝倉、経験が濃すぎる》


「……あああああああ!! もしかして“あのクソ叔父”か!!?」


「うん」


「うっわぁ……そりゃおまえ、あんなにアイツに口悪いわけだ。

いつもは敬語もどきですら丁寧なのに、“あいつはマジで人間として無理”とか“喉仏をスプーンでえぐってやりたい”とか、あんな怖いこと言うの、あいつ限定だったもんな……」


「うん……でも、そこじゃないんだ」


「え?」


「その時ね、島に入った瞬間、スマホも、連絡手段も全部取り上げられて、

どこかもわからない島にポツンと放り込まれてさ。

知識と根性とナイフだけでどうにかしろっていう雑な教育で。……確かに、危険な動物とかはいなかったし、脱出できるような仕掛けもあったけど」


「いや普通にヤバいなそれ」


「それよりも、そっちの方がずっときつかった。……俺、その頃、もうずっと、樹のこと好きって思ってたからさ」


「……!」


「夏休み、会えるって思ってたのに。

遊べるって、隣で寝れるって、ずっと楽しみにしてたのに、急に“教育”って言葉で、勝手に引き離されたのが一番、苦しかった」


「……朝倉」


「俺にとって、あれは“サバイバル”だったんじゃなくて、“樹に会えない試練”だった。

だからナイフは持ってった。“あいつを倒して帰るため”に」


(コメント欄大盛り上がり)


《めっちゃ重い愛きた》《ナイフの理由そこ!?》《“倒すため”に持ってったの草》《恋心の起源がサバイバル》《ラブ×戦×無人島=朝倉》

《こええけどかわいい》《推しのためにサバイバルする男》


「なぁ朝倉……おまえ、俺と会えないだけでそんな気持ちになるの、重いって自覚ある?」


「うん。だから、軽くして渡してるつもりだったんだけど……今のはつい」


「いや、俺の叔父が悪い。おまえは悪くねぇ」


「よかった。……でも、もしまた無人島に放り込まれたら、

次は“おまえも連れてく”。ひとりはイヤだ」


「……一緒なら、まあ……ナイフより浄水器持ってってくれな?」


「樹がいるなら、ナイフで魚も取るし、木も削る。料理もするよ。

おまえがいてくれるなら、全部、生きていく理由になるから」


「……なんかもう、ナイフより重てぇんだよな……その愛が」


(コメント欄:

《すぐに名言製造する》《サバイバルにラブ入れてくるの天才》《“一緒なら全部理由になる”はズルい》《朝倉、全力で重いのになんでこんなに可愛いんだ》

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