仲直りのその後
あの日から、リュウタはちょっと変わった。
「ミカ、今日も絵うまかったね。好き!」
「ミカ、今日の髪型かわいいね。好き!」
「お弁当、からあげ入ってた? 好き!」
毎日のようにミカに「好き!」を投げかけてくるようになった。しかも、ちょっと照れながらも真剣な目で言うもんだから、ミカも最初は戸惑っていた。
「……な、なにそれ……! ばか……!」
そう言いながらも、耳が赤い。
もちろん、最初は先生も周りの子たちも「またリュウタが変なこと言ってる〜!」なんて笑ってた。でも、透は知っていた。あれは、透が言った「ちゃんと好きって伝えよう」を、リュウタなりにちゃんとやってるってこと。
昼休み、滑り台の下でひっそり本を読んでいた透のところに、リュウタがやってきた。
「……透。ありがとうな。あの時、ハグしてもらって、言ってもらったこと……全部、俺、本気でやってみてる。」
透は本から顔を上げ、無表情のまま、ふっと笑った。
「うん。見てた。……ちゃんと、伝わってるみたいだな。」
「なあ……また、ハグしてもいい?」
「……いいよ。頑張ってるから。」
透はそっと立ち上がって、小さな腕をリュウタに回す。
「……好きって、伝えるのって、ちょっとこわいけど、伝わると嬉しいもんなんだな」
リュウタのその言葉に、透は静かに頷いた。
「うん。……それに、ちゃんと伝えるって、すごく優しいことだと思う。」
リュウタは照れたように笑ってから、元気よく走り出す。
「じゃあ俺、またミカに言ってくる! 好きって!」
透はそれを見送って、ぽつりと呟く。
「……かわいいやつ。」
その声は、誰にも聞かれなかったけれど、透の中のあたたかい光は、確かに強く灯っていた。