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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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薔薇

「そういえば、ちょっと前に渡したやつ、話すか?」


配信の冒頭、柔らかな照明の中でぽつりと呟く朝倉。その声に、樹がチラと横目で見て笑う。


「……お前、あれ配信で言う気なの?」


「言ってもいい?」


「どうせ止めても言うだろ」


軽く肩をすくめて笑う樹に、朝倉はふわりと笑って続けた。


「このあいだ、薔薇を999本、渡したんだ」


「いや、ほんとに来たんだよ。でかい箱が。宅配の人が『すっごい良い香りしますね!』ってニコニコしてたから、俺も何が入ってるのかと思って開けたら……。見渡す限りの、薔薇」


「赤いのと、少し白。あとピンクが混ざってた。色合いも全部選んだんだ」


コメント欄が一気に盛り上がる。


《999本って!》《プロポーズ!?》《まって花屋どうした!?》《想像の1万倍ロマンチックで草》


「ふつう、108本が『結婚してください』だっけ?」

「うん。999本は『生まれ変わってもあなたを愛す』って意味」

「いや、重いんだよお前、花言葉まで」


笑いながら言う樹に、朝倉は静かに微笑んだ。目は伏せられていて、感情は声に混じっているだけ。


「重いよ。でも、俺の愛はもともと重いからな。だから……切り分けてるつもりだったけど、たまには、全部を渡したくなった」


「……」


少し沈黙があって、コメント欄も静まり返る。


「で。俺も何も返さないのはなって思って」


「うん」


「花屋で、1本だけ選んだ。黒薔薇」


その瞬間、コメント欄がざわついた。


《黒薔薇!?》《え、黒薔薇の花言葉……》《『憎しみ』『あなたを呪う』とかじゃなかったっけ!?》《重すぎて逆に刺さるやつだこれ》


「でも、お前ら知らないだろ。黒薔薇って、『永遠の愛』『決して滅びぬもの』って意味もあるんだよ」


「うん。知ってた。だから、俺、すごくうれしかった」


「お前が渡した999本の薔薇には敵わないけどさ。1本だけでも、俺の全部だぞって、そういう意味」


「俺の全部か……なら、俺ももう1本だけ追加していい?」


「は?」


「次会ったとき、お前に青い薔薇渡す」


コメント欄が爆発する。


《青!?》《奇跡!?》《『不可能を可能にする』『夢が叶う』ってやつ!?》《ロマンがすぎる》《情緒が忙しい》《尊すぎて鼻血出た》


樹が顔を手で覆いながら「配信で言うな、そういうこと……」と笑い混じりに呟く。朝倉はそれを見て、目元を少しだけ緩める。


「じゃあ、次の歌ってみた動画は“奇跡”っぽいやつにしような?」


「……お前、演出ガチすぎるだろ……」


「俺の愛は、演出も本気だよ」


樹は笑ってるけど、耳が赤くなってる。コメント欄は既に「結婚しろ」「毎日プロポーズしてるじゃん」「命を賭けた愛じゃん」などの言葉で埋め尽くされていた。


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