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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第二章 高校生編
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あなたのことが○○くらいに好きです

「あなたのこと、○○くらいに好きですって、コメントでよく見るじゃないですか。おふたりは普段、そういうの言うなら、どんな感じなんですか?」


って質問がコメント欄に流れてきた瞬間、画面の前の二人はぴたりと動きを止めた。


「……なあ、朝倉」


「ん」


「真剣に考えていいやつか?これ」


「いいだろ。別に隠すようなもんでもねえ」


そう言って、朝倉はふわりと笑った。けれど、その微笑の奥には、何層にも重なった愛情の温度が隠れている。


少し沈黙があって、樹がぽつりと呟いた。


「……お前を、殺したいくらいには、好き」


「は?」


コメント欄がざわつく。


【え?】【ええ……】【怖ッ】【待って待って】【物騒すぎるwww】


でも、朝倉は笑いながら首を振る。


「はは、バカだな。じゃあ、俺は……お前に殺されてもいいくらいに、好き」


その言葉に、樹もつい吹き出した。


「おい、それ完全に狂ってるやつじゃん!」


「お互い様だろ。俺ら、わりと普通の愛の持ち方してないぞ」


コメント欄は案の定の反応だ。


【こっわ】【メンヘラカップルじゃん】【でも尊い】【地獄のラブソング流れてる】【ホラーかよ】


けれど、朝倉の目だけは笑っていなかった。


彼の中でその言葉は、冗談でもなんでもなく、ただの“事実”だった。


相手に全てを渡したい。自分のすべてを捧げたい。たとえそれが、傷になるものでも、痛みでも。樹が望むなら、朝倉はそのすべてを“好き”に変換できる。


だから、彼にとって「殺されてもいいくらいに好き」は、ただの比喩じゃない。


「ま、現実にはちゃんと、お互い嫌なことはしないし、俺はお前を傷つけたりしねえよ?」


と、樹が補足するように言えば、


「うん、知ってる。俺もそう。……けど、お前がやりたいって思うことなら、俺は大体受け入れられる」


「お前さあ、それほんと重いって……」


「分かってる。でも、俺の愛は重いから。だから、お前が持てる分だけにして、柔らかくして、甘くして渡してる」


さらっと言うその一言に、樹が目を見開いた。


コメント欄も一瞬、静まりかえって——


【えぐ……】【そういうの急に言うのやめて】【甘いけどこわい】【それが愛……?】【深い】


「……なあ」


「ん?」


「ほんと、好きだよ。お前」


「……俺も。ちゃんと、持っててくれてるって分かる。だから、安心して重くなれる」


二人は画面越しに見つめ合って、微笑み合った。


視聴者たちには到底ついていけない愛の形。けれどそれが、このふたりにとっての“ふつう”なのだった。

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