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愛しいあなたと  作者: 飴とチョコレート
第1章 幼少期編
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プロローグ 推しのいる世界に転生して

前世の俺は、ごく普通の女子だった。

学校に行き、課題に追われ、休日は趣味に生きる……そんな、どこにでもいるようなオタク気質の学生。

そして俺には、人生を救ってくれた“推し”がいた。


──その人は、配信者だった。

名前はいつき

ゲーム実況も雑談も、時には真面目に人生語りまでこなす、ちょっと大人びた雰囲気のある青年。


声が好きだった。話し方が好きだった。

あの低くて穏やかなトーンに、少し照れたような笑い声に、俺は何度救われたかわからない。


「好き」だった。

けど、もちろん“届かない”とわかっていた。

画面越しの存在に、どれだけ気持ちを募らせたって、それは一方通行のまま終わる。


──そう、思ってた。


交通事故だった。

暗転した視界の中、最後に思ったのは「もっとあの声を聞きたかった」だった。


そして──気がついたら、俺は赤ん坊になっていた。

新しい名前。新しい性別。新しい人生。


名前は水瀬透。

性別は男。

だけど中身は前世のまま、心も記憶もそのままに。


戸惑いもあった。けれどそれ以上に、どこか吹っ切れたような気持ちだった。

前世の自分が届かなかった場所に、もしかしたら届くかもしれない――そんな、根拠のない希望。


そして数年後。

ある日、向かいの家に越してきた家族の息子を見たとき、俺は一瞬で息が止まった。


──いた。

俺の、推しが。


少し幼くなっていたけど、面影はそのまま。

声も、口調も、落ち着いた雰囲気も──あのとき画面越しに見ていた人と、何も変わらなかった。


「よぉ、隣の……お前、名前なんていうんだ?」


「……水瀬透。そっちは?」


「樹。夏目樹。よろしくな、透」


推しの名前を、推しの声で聞いた。

その瞬間、俺は確信した。


──この人生、全力でいく。

もう一度会えたこの奇跡を、絶対に無駄にはしない。


それが恋なのか、憧れなのか、崇拝なのかはまだわからない。

けど、俺はこの人を一生、好きでいる自信がある。


それが、俺と“推し”の始まりだった。

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