3話
「女神?」「そうです。この世界の女神様、ルーチ様がお呼びになったのでしょう。」
「なんで女神様が俺を?」
「珍しいことではありません。気まぐれでお呼びになる方なのです。」
珍しいことじゃないのか...この世界は、いったい?
「あの、アリサさん、あのお城まで一緒に行ってもらえませんか?ちょっと俺一人じゃ勇気なくて。」
我ながら情けないと思う。でも訳の分からない世界に飛ばされた以上、身の安全は確保しておきたい。この女性は信頼できそうだ。だから頼んだ。「もちろんです。」彼女は快く言ってくれた。「さっそく行きましょうか。」「はい。」俺が歩き出して数歩、彼女は歩いてなかった。「アリサさん?」「あの、エミちゃんをしまわなくて良いのですか?」
しまうってなんだ?魔法とかなのだろうか。だが俺は魔法なんて使えない。「魔法とかだったら、俺にはできないですね、何か問題があるのですか?」「このエミルア王国では最近、ペット泥棒が横行していて、危ないのです。しかもしまう魔法は主人にしかできないのです。だから心配で...」
なるほど。そんな事が起こるのか、さてどうしたものか。俺の身の安全とエミの安全は確保しておきたい。
そういえば、小さい頃漫画で透明化する魔法を主人公が使っているのを見たな。もしかしてそれなら?
「アリサさん、お願いがあります。」
「なんですか?」
「エミに透明化する魔法をかけてあげることはできませんか?」彼女はピンと来たようで、「なるほど、その方法がありましたか!それならお安い御用です!」そう言ってアリサさんは両手をエミにかざして魔法をかけてくれた。おかげで俺の肉眼では見えない。手を繋いでる感触は残っているが。「アリサさん、ありがとう。」「いえいえ!安全第一ですから!さ、ニナリもしまいますよ〜」アリサさんはニナリをしまっていた。「さぁ、お城へ行きましょう!」
「道順は分かりますか?」俺がそう言うと彼女は不思議そうに「もう城門ですよ?」え...そう、俺は気づかないうちに瞬間移動をしていたのだ。これが魔法、すごいな。俺は珍しく魔法という物に興味が湧いた。今までは猫のことしか頭になかったが...魔法か、悪くないな。
城門には兵士が立っていた。事情を話すとすんなり通してくれた。
謁見の間というところに着くと、豪華な服を着た女性と男性が立っていた。
「あの、俺は、」話そうとすると、女性が、「分かっています。ルーカ・ブラック。...いえ、アリナ世界の黒岩仁さん。」アリナ世界?「あの、あなたは?」「私は、エミルア王国の女王、いえ、女神のルーチ・アスファ。あなたにお願いがあります。」