1話
ニャーゴニャーゴ!「うーん?」「あぁ、エミ、朝ごはん食べたいのか?」ニャ!「ちょっと待ってろよ〜」12月の肌寒い朝、エミに起こされて俺はベッドから出て飼い猫のエミに朝ごはんをあげる。
シャカシャカ。朝ごはんの後は歯磨きをして、バイトに行く準備をする。
テレビを見ると朝の情報番組がやっていた。占いをみると、「今日の俺の運勢は、」「最下位か、今日は今までで1番の厄日?へー、そんなこともあんのか。」そんなことを言っていたらあっという間に家を出る時間になった。「エミー、今日もいい子にしてろよー」ニャア!俺はエミの頭を撫でて家を出た。
家を出て仕事場まで向かう。ハァーっと息を吐くと白い息が出る。マフラーをしているがとてつもなく寒い。「冬は長いなー。」そんなこんなで職場に着く。俺は店長に挨拶してロッカールームで制服に着替えて名札をつける。名札に書かれている名前は黒岩仁もちろん俺の名前だ。俺には両親はいない。名前だけつけて死んでしまった。その後は施設に引き取られ、18歳になってそこを出た。
エミは一人暮らしを始めた頃、家の周りに住み着いていた猫だ。見つけた時はぐったりしていたので急いで動物病院へ連れていった。そしてそのまま飼うことになったのだ。エミという名前の由来は、いつまでも笑っていてほしいから、笑み=エミという名前にした。その名の通りエミはとても可愛く笑う猫になった。
「さ、仕事の時間だ」俺はロッカーに鍵をかけて店内へと戻る。俺の職場はペットショップだ。友達ではない知人に紹介されて働き始めた。当初はめんどくさくて嫌だったが、動物の可愛さに魅了されて、今では天職だと思っている。嫌だった理由は他にもある。俺の容姿を目当てにしてくるお客さんがたくさんいたのだ。自分では自覚はないのだが、知人と店長いわく、俺は高身長金髪イケメンらしい。いっておくが俺は純日本人だ。金髪なのは生まれつきだ。他にも特徴がある。俺の左目は赤で右目が青、本当にどうしてそうなったのかは分からない。俺は両親の顔を知らないから、影響だと勝手に思っている。
「黒岩くん、」「なんですか?店長。」「君、猫を飼ってるよね?」「?はい。」俺がそう言うと店長は「俺にくれよ〜」と笑って言うのだ。でもこれは冗談で言っていると分かる。なぜなら、「何回目ですか、店長?」何回も言われているからだ。「だぁってエミちゃん可愛いんだもん!!それに俺スコティッシュフォールド大好きだし!」「あげませんよ。」「ちぇ。」「それはそうと、あちらのお客様が黒岩くんに対応してもらいたいってさ。ほんとモテモテだねぇ!」「やめてくださいよ、俺人と話すの苦手なんだから。」「そういやそうだったね、ほら、行っといで、これも人馴れだ。」「俺を動物みたいに言わないでください。」「だぁって黒岩くんからかいやすいんだもん。」はぁ。と溜息をはいてそのお客様の所へ行く。「どうされました?こちらのわんちゃん気になりますか?」「あ、あの、す、好きです!!」そのお客様は俺に告白してきた。「すいません、今はそういうの考えてないので。」丁寧にお断りする。「そ、そうですか、、、で、ですよね!私なんかに告白されても困りますよね、、あは」そう言ってその女性は店を後にした。「ほんとモテモテだねぇ」店長は顔をニヤニヤさせながら俺の頭をポンポン叩く。「もう慣れましたから。」「さ、わんちゃんにご飯をあげてきて!俺は猫ちゃんにご飯あげてくるから」「はい。」そうしてその日の仕事が本格的に始まって、数時間後には終わった。「黒岩くん、もう帰っていいよーまた明日よろしく。」「はい、店長、お先に失礼します。」そう言って俺は店を後にした。時間は夜の7時、夕食を買って家に着き、エミに夕飯をあげて、猫じゃらしで遊んで運動させてから眠りに着いた。その日の俺は夢を見た。「ルーカ・ブラック、エミ、エミルアにおいでなさい。あなた方に頼みたいことがあるのです。この世界を救ってください。」女神みたいな人に俺たちは話しかけられていた。そして俺は、「はい。」と答えていた。「ーけて、ーすけて」声が聞こえて目を覚ました。「......はぁっ!!?」そこはいつものアパートの部屋ではなく、草むらにエミと一緒に転がっていた。「どこだ、ここ!?」見た事の無いような街並みがそこには広がっていた。それに、「めちゃくちゃ暖かいんだけど!?」「しかも、どういうことだ!?動物より人間の方が少ないじゃないか!」「まさか、ここは...」俺はゴクリと息を呑む。「異世界なのかァァァーー!!!?」俺の声がやまびこのように広がっていった。