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84 遠征ふたたび・本日はお休みだったのだけど

 次の日はULJですよ。

 映画やゲームの世界に没入できるアトラクションが多々あってあっという間に時間が過ぎていく。

 俺としてはクモ男のアトラクションが良かったな。

 英花や真利は魔法少年のを気に入ったみたい。

 他にも回ったおかげで昼食の時間が大幅に遅れてしまったくらいだ。

 でもって今は和食系のレストランで遅めの昼食を取っている。


「楽しめたようだな、2人とも」


「もちろんだよ、涼ちゃん。大阪に来る前から楽しみにしてたもんね」


「そうだな。もっと小さい子が喜ぶ施設だと思っていたんだが存外楽しめた」


「それなら良かったよ。買い物に行くという選択肢もあったのにこっちを選んだからどうかなとは思っていたんだ」


「気にしすぎだよ。大阪でしか買えないものってピンとこないし」


「ショッピングは見てるだけになっていたと思うぞ」


 英花も真利もショッピングはあまり興味が湧かなかったようだ。


「名産品を調べておけば良かったな」


「お土産になりそうな食べ物は日持ちしそうにないし」


 だそうである。


「そういや金装のカステラが欲しいって言ってたな」


「あれ、おいしかったよねー」


 それは否定しない。

 お土産として持参した堂島氏のセンスも悪くないと思ったものだ。


「帰りに買って帰るか」


「もちろんだよ」


 売っている場所は地元冒険者たちと食事を共にした時に聞いてあるので安心だ。

 こういうのはネット検索より地元民の生の情報の方が色々と聞けて面白い。

 本店で買うよりデパートの方が他のお菓子も見て回れるとかね。


 その際にオススメされたのはヒノタのシュークリームだ。

 関西ではシュークリームと言えば必ず名前が挙がる老舗らしい。

 小ぶりだがふわっとしたシュー生地にバランス良く入っているクリームが絶品なんだとか。

 俄然、興味が湧いたのでぜひ賞味してみたい。


「お土産にする前に下見がてら買いに行くのもありだよな」


「ふむ、ホテルの部屋で食すのも良いかもしれんな」


 英花も興味を引かれたようだ。


「あと風光堂のゴーフルも絶対食べるべきって聞いたよ」


 真利も1人で黙々と食べているだけだった割に耳はダンボになっていたようだ。


「それを言うならユーハイヌのバウムクーヘンもだろう」


 いずれも関西では知らぬ者がいないと言われる老舗洋菓子店だそうである。


「そんなに食べたらデブっちゃうよー」


 真利は楽しげに笑みを浮かべつつ困り顔になるという器用な真似をしていた。


「ダンジョンに潜ってるから大丈夫だろ」


 引きこもりだった頃の真利ならいざ知らずってやつだな。


「どうせなら和歌山にも足を延ばすか」


 本業はお茶の販売なのにラーメンやたこ焼きを出す飲食店を経営している業者があるそうだ。

 でもって、その店の一番の売りがラーメンでもたこ焼きでもなく緑茶味のソフトクリームなんだとか。

 話を聞いたときは意味がわからんと思ったが興味をそそられたのも事実。


「帰りに寄るの?」


「合間の休みに行くというのもありだと思うのだがな」


「梅田をクリアしてからにした方が良くないか?」


 梅田ダンジョンは思った以上に手こずりそうだからね。

 隠し階段を見つけて2層に下りたけど1層に負けず劣らず広くて回りきれなかったんだよね。

 ミケの話では3層もあるみたいだし。

 どんだけデカいんだよ、梅田ダンジョン。

 下手をすれば日本で最大級ってこともあり得るかもしれない。

 もちろんフィールドダンジョンを除けばの話だけど。


「それなんだが、梅ダンだけに潜るのではなく日替わりで他のダンジョンも行ってみないか」


 元より他のダンジョンも攻略する予定だったけど、ひとつずつ順番にと思っていたのだ。

 しかしながら梅田ダンジョンの攻略に時間がかかると判明した今、梅田にかかりきりになる必要もないだろう。

 方針を変えずに攻略しても構わないが、その場合は中だるみすることも無いとは言えない。


 それならば英花の言うように日替わりで近隣のダンジョンへ行くのも悪くないだろう。

 実はULJの近くにもあるんだよな。

 だからULJダンジョンと呼ばれているんだけど、実際はULJの地下にある訳ではない。

 近いからといっても今日は行ったりしないけどね。

 休めるときにはちゃんと休んでおかないと。


 それから大阪城ダンジョン、長居公園ダンジョン、道頓堀ダンジョン、頂点閣ダンジョンと大阪市内にダンジョンが集中している。

 加えてフィールドダンジョンもあちこちにあるんだよな。

 ここまで大規模ダンジョンが密集しているのは、ちょっと珍しいんじゃないだろうか。

 少なくとも国内ではここだけだと思う。


 それを日替わりで攻略するという英花の提案は悪くないかもね。

 目先が変わることで中だるみの防止になりそうだ。


「いいんじゃないか。デメリットもないだろうし」


 期限が限られているなら無理をして疲労が蓄積しやすいくなるかもしれないが、いつまでとは決めていないので問題にはなるまい。

 休みの日にテーマパークで遊ぶとそれなりに体力を使ったりするが、レベルアップした俺たちにはこれも休息だ。

 ダンジョン攻略と観光が両立するのは実にありがたい。


「私もいいと思うよ」


 真利も賛成した。


「では、明日はULJダンジョンに潜るということで」


「わかった。その次はどうする?」


「明日の攻略後に決めたらいいんじゃない?」


「それもそうか」


 あまり細々と先々のことを決めても予定通りになるとは限らないし。

 それに食事も終わってまったりした感じになっていたから話の切り上げ時ではあった。


「行こうか」


 2人に呼びかけて席を立ち会計を済ませる。


「この後はどのアトラクションに行く?」


 店の外に出て真利が話しかけてきたタイミングで大勢の悲鳴が聞こえてきた。


「なんだ?」


「何か事故でもあったのかもしれないな」


「まさか!? こういう所は事故が起きないよう管理が徹底しているはずだよ」


『そのまさかですニャー。向こうで地面が陥没していますニャ』


 ずっと霊体モードで同行していたミケが報告してくる。

 悲鳴と同時にドローンのように上空へ浮かび上がって確認しただけなので詳細は不明のようだけど何が起きたのかがわかるだけでもありがたい。


「涼成、真利、行くぞ!」


 英花が俺たちに声をかけたかと思うとダッシュしてミケが指し示した方へ駆け出した。


「おいおい、首を突っ込むつもりかよ」


 そういうのは警察とか消防に任せるべきなんじゃと思いつつも後を追う。


「あっ、待ってよぉー」


 一足遅れて真利も追いかけてくる。

 現場にはすぐに到着したが酷いものだった。

 地面の陥没とは聞いていたけど、まさか半径十数メートルに及ぶとは思わないもんね。

 深さは1メートルほどの部分がほとんどか。


「これは……」


 ただの事故じゃない。

 ULJを運営する会社の落ち度ではないだろう。


 とにかく呆けている場合じゃない。

 先に来た英花は陥没部分に飛び込んで怪我人を担ぎ出している。

 俺もそれに続くと真利も人見知りを忘れたかのようについて来た。


 3人で救助活動の真似事をしている間にULJの職員も集まってきたので俺たちは次の行動に移るべく陥没部分の中央に集まった。

 グシャグシャになった地面のせいでわかりづらかったが坂道ができている。

 どう見ても──


「ダンジョンだよな」


「それしか考えられんだろう」


「まさかのタイミングで新しいダンジョンができちゃったね」


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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