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368 解決策は助っ人です

「とりあえず今日は帰ろうぜ。閉じ込められっぱなしなのも嫌だろ?」


 崩落してきた瓦礫を防ぐため、とっさに結界で空間を確保したとはいえ出口がない状態だからなぁ。

 いずれ腹も減るしトイレにも行きたくなる。

 いつまでもこのままという訳にはいかないだろう。


「なんだか上手く誤魔化された気がするのだが」


 英花はぶつくさ言いながらも了承してくれた。


「大丈夫だよ、英花ちゃん。涼ちゃんは帰ったら説明してくれるはずだからねー」


 最後の「ねー」のところで俺の方に振り返って首をかしげてくる真利。

 完全に遊び感覚だよな。


「危機感がなさ過ぎるぞ。いま結界を妨害されたらどうするつもりだ」


 この一言でさすがに油断しすぎだと気付いたようでヘラヘラしていた空気は引っ込んだけど。

 そんな訳で俺たちは転移で撤収した。

 今日は上の階層で狩りはせずストック分で対応する。

 おかげで受付では軽く驚かれたけど。


「早かったですね。何かあったんですか」


「いえ、今日はリハビリみたいなものなので軽くと決めていたんですよ」


 素知らぬふりで応対する。

 いつものことなので慣れたものだ。


「リハビリって……」


 俺たちが提出した素材を前に唖然としている。


「しばらくは、よそでやっていましたからね。感覚を戻すのが優先ですよ」


(そちらも大変だったと聞いていますが?)


 受付のお姉さんは声を潜ませて聞いてきた。


「ダンジョンに潜る感覚が違いますよ。同じ感覚で潜っていると、つまらないミスをしたりしますから」


「はあ、そういうものなんですね」


 いまひとつ俺の言ったことが伝わらなかったようで生返事をしてしまう受付のお姉さんである。

 受付担当も統合自衛軍のダンジョン攻略部隊の一員のはずなんだけどな。

 それなりの実力は持っているはずだ。

 少なくとも新人冒険者などよりはずっと強い。

 まあ、このお姉さんもブートキャンプに放り込まれれば、さらなる進化を遂げるだろう。

 それは俺の知ったところではないけどね。


 その後、提出した素材を買い取ってもらい精算を済ませて帰途につく。

 帰りの車内で再びお台場ダンジョンの転移トラップの話となった。


「涼成、何かトラップを突破する方法を考えついたのだろう。いい加減教えてくれてもいいんじゃないか」


 待ちきれないといった感じで聞いてきたのは英花である。


「そこまで大層なものじゃないさ。俺よりもっと速い人に読み解いてもらおうってだけだから」


「なにっ、そんなスゴい奴がいるのか!? 私は知らないぞ!」


 よほど驚いたのか後部座席から身を乗り出さんばかりにしている。

 シートベルトがなかったら運転席の俺は首根っこをつかまれていたかもしれない。


「人と言うからにはミケではないだろう」


 真利の膝の上を占拠しているミケの方へガッと振り向く英花。


「違いますニャー。魔道具は門外漢ですニャン」


「では、誰なんだっ」


「落ち着けよ。英花も知ってる相手だから」


「なっ!? ということは、隠れ里の民の誰かか」


 一瞬、目を見開いた英花は座席に身を沈み込ませて考え込み始めた。


(メーリーはポーション職人だから違う。ジェイドは術式を読めるが涼成ほどじゃなかったはずだ。ネモリーはどうだった?)


 などとブツブツ呟いているが見当違いもいいところである。


「なに言ってんだよ。もっとダンジョンに詳しい専門家がうちにはいるだろう」


 バックミラー越しに見た英花は眉間にシワを寄せて首をひねっている。


「ふむ、そのようなスゴい者が仲間内におるのだな」


 次に反応したのは助手席に乗るネージュだ。


「まあね。東京遠征には連れてきていないからさ」


「誰なんだ!? サッパリわからないぞ、涼成~っ」


 いつもはクールな英花が取り乱したように聞いてくる。


「英花ちゃんは薄情だなぁ。うちにいるでしょ、専門家が」


「だから、その専門家は誰なのだぁっ」


 両手をワキワキさせて苛立つ英花。

 これ以上はフラストレーションが飽和状態を越えて爆発しかねない。


「リアだよ」


 答えを告げると英花はポカンとした表情を見せた。

 そのまま固まること数秒。

 そしてハッとすると思いっきり赤面した。

 思い出せなかった自分に腹を立てているのか恥ずかしいのか英花は身もだえしている。

 両方ってところかな。


「涼成、リアとは何者なのだ?」


 ネージュが聞いてきた。


「掌握したダンジョンコアをベースにして作ったゴーレムだよ」


「ほう、面白いことをするものだな」


 喉をクックと鳴らして笑うネージュ。


「確かにその者であればダンジョンのトラップにも精通しておるか。術式を読み解くのも容易かろう」


 そういうことだ。

 言ってみれば長いプログラムをAIに解読させるようなものである。

 人力では時間がかかる上にミスも出てくるだろうが、リアならばそんな心配は無用だろう。


「あまり長時間は連れ出せないけど、ダンジョン内に呼び出して解読してもらうだけならノープロブレムだ」


「そうかなー。最近またパワーアップしたから何処にいてもすべてのダンジョンを制御できると思うよー」


 それは俺も否定しない。


「大勢の前に連れ出すのは避けたいって話だよ。ゴーレムだとバレる恐れがあるからな」


 普通の人間には見破れなくてもスキル持ちなら話は別だ。

 誰がどんなスキルを持ってるかわかったもんじゃないからね。

 鑑定のスキルなんて天敵と言ってもいいだろう。

 異世界でもお目にかかったことはないけど、いないという保証はないのだ。

 その手のスキルは何かと使う機会が多いだろうから自然と鍛え上げられているはずだし用心に越したことはない。


「そっかー。じゃあ、今回はダンジョンに直接呼び出すだけにするんだねー」


 真利も納得してくれたようで何よりである。

 ただ、ネージュがじかに顔を合わせるのがダンジョンの中というのもどうかと思う。

 そんな訳で時間に余裕もあることだしホテルには帰らず高尾山へ向かった。



 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「今日は如何なる用向きだ?」


 中途半端な時間帯に来たせいか青雲入道が困惑気味に聞いてきた。


「ちょっとダンジョンで問題があってね。助っ人を呼ぶんだけど、それだけじゃ味気ないから皆に紹介しておこうと思って」


「ふむ、そういうことか。ならば、しばし待つのだ」


 という訳で猿田彦命や青龍様たちも来ることとなった。


「やあやあ、苦戦してるんだって?」


 最初に来たのは猿田彦命だ。


「どうも。そんな感じです」


 細かな説明は全員が集まってからにしたいので今は肯定するだけにとどめておく。

 そのうち青龍様たちもやって来て、かくかくしかじかと状況を説明した。


「上手く考えたものだな」


「そうだねえ」


 感心している白龍様に相づちを打つ青龍様。


「迷宮のことは迷宮を知る者に任せる。道理であろう」


 金竜様もウンウンとうなずいている。


「顔見せでここに呼ぶんだよね」


 ワクワクしている青龍様だ。


「そうです。さっそく呼びますね」


 英花の方を見てうなずいた。

 眷属召喚のスキルを使えるのは英花だけだ。

 距離があるから眷属召喚でないと魔力を結構消費してしまう。

 今の俺たちならそんなに負担でもないけど送還もするし、英花なら負担ゼロで呼び出せるからね。


 そんな訳でリアを召喚し神様たちとネージュにお披露目となった。


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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