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246 呼び出されました

「いやあ、急に呼び立ててすまないねえ」


 猿田彦命がにこやかに出迎えてくれた。


「よお、ちょっとだけ久しぶり」


 九尾の狐もいる。

 そう、ここは日枝神社の神境だ。


「どうも、こんにちは。お猿さんがホテルに来たときは何事かと思いましたよ」


 霊体だから俺たち以外には見えていなかったけど。

 でなきゃ大騒ぎになってるよ。


「ハハハ、すまないね。いきなり念話で話しかけるのは無粋だと思ったから先触れとして送ったんだ」


「そうでしたか」


 そんな感じで呼ばれて今日は猿田彦命の元にやって来た。

 英花や真利はもちろん紬も一緒にと指定を受けたので英花の眷属召喚で呼び寄せている。


「芦ノ湖の方で何か問題がありましたか?」


 ダンジョンが消滅して日が浅いけれど、それだけに何かミスがあったりしたのかと心配になって聞いてみた。


「ああ、大丈夫大丈夫。アレはちゃんと片付いたよ。青ちゃんたちからもお墨付きをもらってるから問題ない」


 神様のお墨付きがあるなら大丈夫なんだろう。

 だとすると逆にどうして呼び出されたのかが謎とななる。

 気がかりのネタが変わっただけだから落ち着けるものではないよね。


「僕としたことがうっかりしててね」


 やはり何か別件でヤバいことでもあるのだろうかとドキリとした。


「仕事を頼んだのに、ありがとうと言っただけでちゃんとお礼をしていなかっただろう?」


 そんなことを問いかけられても「はい、そうです」とは答えづらい。

 堂々と言ったりするなど厚かましいにも程があるもんな。

 だから英花や真利と顔を見合わせて曖昧に苦笑してしまう。


「いえ、そういうのを期待してしたことじゃないですし」


「我々はさほど大きな仕事はしていませんが」


「ちょっと手伝っただけです」


 とも言ったんだけどね。


「いやいや、青ちゃんたちから君たちに加護を授けたって聞いてるよ」


 そんな風に言われてしまうと嫌な予感しかしない。

 まあ、猿田彦命も龍たちを助ける補助的な立場だったことを考えると龍たちの加護よりは幾分穏やかめのものになることだってあり得る。

 直感はそうではないと訴えていたけどね。


 紬も一緒だし、むしろそう思わない方が不自然だ。

 できれば外れてほしいという気持ちが否定したがっているだけにすぎない。

 加護の力が強力すぎて戸惑ったのは記憶に新しいからね。

 さらに加護をいただけるとするなら、ありがたくはあるけど自分たちに制御しきれるのか怖く感じてしまう。


「という訳で僕も君たちに加護を授けたいと思っている」


 やっぱり、そういう流れですよねー。


「あの、加護が重なるとどうなるんですか?」


 気になるのはその点だ。

 重複すると基礎ステータスは思ったほど伸びないことも考えられる。

 だが、相乗効果を発揮して想像を超える伸びを見せた場合は果たして俺たちにコントロールできるだろうか。

 正直に言うと自信が無い。

 龍たちの加護を受けただけでも最初は加減を大きく間違えたからね。


「あー、やっぱり心配だよねえ」


 猿田彦命は苦笑している。


「大丈夫。加護の効果はあまり重複しないようにするから」


 あまりというところに不安を感じるけれど、加護はいりませんと断ることなどできるはずもない。

 今の俺たちにできるのは信じて腹をくくるのみ。

 英花と真利、そして紬の方を見ると強い視線が返ってきて3人も同じ思いでいることを感じた。


「では、お願いします」


 代表して俺がお願いすると──


「はいはい」


 軽いノリで返事をしてリズムを取るように俺たちを順番に指差していく。

 その間は猿田彦命の体が淡く光っていたように見えたが、変化と言えばそれくらいだった。

 俺たちの方は指を差された後も光ったりはしていない。

 加護を授かり終わるまでには時間がかかるのかと勝手に解釈して待っていたのだけど。


「終わったよ」


 何か変化を感じる前に終了を告げられてしまった。


「「「え?」」」


 俺と英花と真利の3人で思わず間の抜けた顔をさらしてしまう。

 紬は平常運転とばかりに無表情のままだ。

 精霊だからこういう神秘的な力の流れに敏感なのだろうかとも思いかけたのだけど、よくよく考えると普段の紬なだけだった。


「あれ? そんなに意外だったかな」


 猿田彦命が不思議そうに首をかしげている。


「あ、いえ。思ったよりすぐに終わったので」


「ああ、そういうこと。短く感じたかもしれないけど大丈夫だよ。ちゃんと細かく調整しているから変なことにはならないからね」


 朗らかに笑いながら太鼓判を押してくれた。


「ありがとうございます」


 俺が礼を述べると英花や真利も同じ言葉でそれに続く。

 紬は無言だったけど丁寧にお辞儀して謝意を示していた。


「礼を言うのはちょっと早いかな」


「はあ」


 予想外のことを言われたので間の抜けた声を出してしまう。


「どうなったか確かめてないだろう?」


「それはそうですが」


「まずは加護の効果がどういうものなのかを説明しておこう」


「お願いします」


 という訳で猿田彦命から受けた加護の内容について教えてもらった。

 基礎ステータスのパワーアップは控えめにしたそうだ。

 でも前と同じように過去のレベルアップ分も含めてだったので控えめと言っても調整するのは苦労したよ。

 前回が3割増だったのに対して今回は何も加護のない状態から考えて1割プラスくらいだったので控えめというのも事実ではあったかな。


 それから前回の毒無効に続いて病気無効が加わった。

 加えて呪い耐性まである。

 何でもかんでも呪いを弾くという訳ではないそうだけど、かなり効果が高いそうだ。


 あとは魔法使用時に消費される魔力の大幅減少。

 前回は水魔法限定だったけど今回はあらゆる魔法が対象だ。

 水魔法の消費魔力減少の効果と重複する分は相乗効果となるらしい。

 後で確かめたけど、笑うほど魔力を消費しなかったよ。

 そのかわり水魔法以外の魔法は威力が変わらないけどね。


 これで前回同様にノーペナルティなんだからスゴすぎる。

 なんだか申し訳ない気持ちになってしまったよ。

 しかも今回はおまけがあった。


「言葉で説明しただけじゃピンとこないよね」


「そうですね」


 特に基礎ステータスの向上を確認するのは場所が限られてくる。

 前日にヘマをしたせいで冒険者事務所には目をつけられているはずだ。

 迂闊な真似はできない。

 青雲入道に頼んで修行場所を借りようかと考えていたくらいである。


「という訳で、うちの猿たちと組み手をしていくといいよ」


「「「ええっ!?」」」


 またしても俺たち3人で驚かされてしまった。

 言うまでもなく紬は平常運転だ。


「そんなに驚くことかい?」


 猿田彦命は俺たちが驚いたことに目を丸くさせて驚いていた。


「だって、ここは神聖な場所ですよね。そういう場所で激しく動いてもいいものかと……」


 不安が拭いきれないために最後まで言い切れない語尾になってしまった。


「そんなこと気にしてたんだ」


 そう言いながらアハハと笑われてしまう。


「うちでは猿たちがしょっちゅう組み手をしているよ」


 神境だと表には影響しないからかな。


「そういうことなら」


 という訳で俺たちはお猿さんたちと組み手をすることになった。


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] こんな大物から加護貰ったりして 順調に人の枠からはみ出してるな
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