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235 種明かし

「何をするつもりだ、涼成!?」


 俺の意図を図りかねたのであろう英花が叫んだ。


「こうするのさ」


 スケルトンドラゴンが立ち上がりきる前に奴の頭部に刃を突き立てた。


「なんてことをっ!」


 再び英花が叫んだのは、自分が骨の爆発で被害を受けそうになったことと同じ結果になると思ったからだろう。

 罠を見抜いた俺がそんなヘマをすると思われるのは心外だ。


 俺が狙うのは骨ではない。

 そもそも頭部の骨が爆発するのはスケルトンドラゴンにとってもリスクであるのだが。

 まあ、それを試そうとは思わない。

 そんなことをしなくても確実に頭部へのダメージを与える方法がある。


 俺が剣を突き立てた場所は切り飛ばした角の断面だ。

 ゾンビを召喚していた核であるこの部分を爆発させるわけにはいかないだろう。

 骨より強度がなかったのも理由のひとつである。

 普通は逆だと思うのだが、もしかすると召喚の起点とするために無理やり生やしたのかもしれない。

 いずれにせよ思惑通り爆発することもなく剣は易々と突き刺さりズブズブと深く刺さっていった。


「そいつは冥土への片道切符としてくれてやる。じゃあな」


 そう言うと同時に飛び降りて雷撃の魔法を放った。

 別の言い方をするならサンダーボルト、雷を対象に当てる魔法だ。

 今回は俺の剣を避雷針代わりに頭部へもっともダメージがいくように放った。


 狙うなら胸部にある魔石か頭かと思っていたからね。

 胸を狙わなかったのは、これも罠だと直感したからである。

 よく見れば魔力の流れも何かおかしい。

 攻撃すれば発動する魔法が仕掛けてありそうだ。


「──────────────────────────────っ!!」


 雷撃を受けているスケルトンドラゴンが声にならない絶叫を上げていた。

 単発で落としただけでは大したダメージにならないと考えて持続し続けるように放ったからだ。

 全身を震わせながらも身動きが取れずにいる。

 あとは魔力が何処まで持つかだな。

 レベルが53になったとはいえ元は竜だった相手だ。

 簡単には倒れてくれまい。


「面白いことをしてくれたじゃないか」


 九尾の狐が脇にやって来た。


「あとは魔力が尽きる前に終わってくれればね」


「なんだ、その程度のことか。ならば尽きる前に言え。引き継いでやろう」


「そりゃどうも」


 これでスケルトンドラゴンにトドメを刺すのも目途が立ったかもしれない。


「で、この骨野郎、なんかおかしくねえか?」


 さすがは猿田彦命の眷属。

 間近で見ればスケルトンドラゴンが普通じゃないとすぐに気付いたようだ。


「ダンジョンコアの魔改造が入ってるからね」


「それにしても、だ。知能のある屍など見たことも聞いたこともないぞ」


「魔力の流れを見れば、きっとわかるよ」


 偽装はされているから注意して見ていないとわからないとは思うけど。


「どれ、そんなに複雑なものなのか」


 そう言いながら九尾の狐は目をこらして雷撃を受け続けるスケルトンドラゴンを見る。


「ほう、偽装した上に複数の罠を仕掛けておるか。胸のは特に陰湿だな。あの大きさの魔石を使って自爆とは、誰も生かして帰すつもりがないとしか思えんぞ」


 やっぱり、そうだったか。

 念入りに偽装しているから面倒で最後まで見通していなかったけど、それくらいやりそうだとは思っていた。

 お墨付きをもらっても嬉しくはないけどね。


「極めつけは頭か。フン、なるほどな。地脈の力はここに流しておったか」


「それだけじゃないんだな、これが」


「なにっ?」


「変だと思った理由が頭だよ。あそこだけ罠がないだろう?」


「むう、確かにあそこだけ罠がないのは不自然だ」


「そうしたくてもできないんだよ」


「どういう意味だ」


「頭の中に何があると思う?」


「何だと!?」


 意味ありげに問うた俺の言葉にギョッとした目を向けてくる九尾の狐。

 どうやら見るまでもなく気付いたみたいだな。

 すぐに我に返ってスケルトンドラゴンの頭に強い視線を送る。


「フン、そういうことだったのか」


 すぐに見抜いた九尾の狐は不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「どういうことだ、涼成」


 戻ってきて俺たちの話を聞いていた英花が聞いてくる。


「あれの中身はダンジョンコアだ」


「何だと!?」


 驚愕した表情には信じられないという言葉も上書きされている。


「スケルトンドラゴンが知能を持っているかのように見えたのは、ダンジョンコアがじかに操っていたからだ」


「遠隔でも可能なのではないか?」


「骨を爆発させたときタイムラグがあっただろ」


「ああ」


 何の関係があるのかと目で問うてくる英花。


「あれ、とっさに指向性を持たせたからだぞ」


「なっ!?」


「じゃあ、謎ドーピングした時もとっさの反応だったのー?」


 今度は真利が聞いてきた。


「そうとしか考えられないだろう」


「本気で動けば、ずっとあのスピードでいけたかもしれないってこと?」


「それは難しいだろう。スケルトンドラゴンじゃ関節が動きに追いつけなくなる」


 関節は外れても元通りになるとはいえ、その間は外れた部位が無防備となる。

 超スピードで動き続けて複数個所の関節が外れるようなことがあれば、致命的な隙を生むことになりかねない。

 だから、あの一瞬だけだったのだ。

 反応が遅れた分の時間を取り戻すために無理をしたというところか。

 もしもドラゴンゾンビに偽装していることを隠すためだけなら、もっと使っていたかもしれない。

 普通のドラゴンゾンビではないと思わせれば誤魔化せただろうし。


「つまり、とっさの反応で本当は使うつもりがなかったのか」


 英花が推測を語る。


「だろうな」


「だとしても、まんまと騙された訳だ」


 英花は悔しそうに歯噛みした。


「発想はともかく内容はお粗末なものだったけどな」


 確かに腹立たしい。


「そうかなー。近づくまでは見破れなかったよ?」


 真利はもっともなことを言っているように思えるかもしれないが決してそうではない。


「それは俺たちが無能だと言っているようなものだぞ」


「えーっ、どうしてー?」


「幻影魔法に誰も気付いていなかった」


「気付いたとしても、ダンジョンコアがじかにコントロールしているとは見抜けなかったんじゃないか?」


 すかさず英花が聞いてきた。


「あのなぁ。ドラゴンゾンビにせよスケルトンドラゴンにせよ魔法を使う時点でおかしいと感じるはずだろ?」


「うっ、そうだった」


「それに気付けなかったのは端から格上だと思い込んでいたせいだな」


「飲まれていたということか」


 必要以上に畏縮していた気がする。

 レベルがリセットされて1からやり直していることが影響しているかもしれない。


「とりあえず反省はそれくらいにしておこう」


 話を区切って感電しているスケルトンドラゴンを見上げる。


「しぶといな」


「腐るものがなくなってもドラゴンか」


「いや、地脈の力で耐えているんだ」


 だから攻撃してこない。

 俺の魔力が尽きるまで耐えきれば勝ちだと思っているのだろう。


「それってマズくない?」


 真利が焦っているのは根比べであることに気付いたからだろう。


「そう思うなら、こんな悠長にはしていない」


「だよねー?」


 言いながら不思議そうに首をかしげる真利。


「こっちは九尾が交代してくれるから持久戦になってもしばらくは持つ」


「でもー」


「俺の役目はダンジョンコアに防御以外の仕事をさせないことだ」


読んでくれてありがとう。

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