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204 大阪組、しごかれる

「気って何やねん?」


「トンデモ系の功夫映画とかで見る手からビームみたいなん出したりするあれか?」


 岩田が真っ先に疑問を口にし小倉がそれに反応した。


「そんなわけないやろ。それ、そもそも映画の中の話やないか」


「ほな、どんなもんなんや。魔力とは違うんか」


 高山がツッコミを入れる形で否定したが小倉の問いには答えられない。


「その認識で間違っておらん」


 青雲入道が疑問を解消した。


「魔力を練る感覚はわかるけど全身に満たすてどういうことなん?」


「ホンマそれやがな。それがわからんことには、あの暴風に対抗できへんねやろ?」


 菅谷が新たな疑問を口にしたかと思うと外堀が同意した。


「それは自分で考えろ。では、行くぞ!」


 青雲入道が再びヤツデを振るうと轟く轟音とともに凄まじい風が吹き荒れた。

 まるで台風である。


「「「「「うわあっ!」」」」」


 準備もろくにできていなかった大阪組は再び吹っ飛ばされた。

 いや、何度もというべきだろう。

 その後も烏天狗たちに運ばれては青雲入道の暴風に吹き飛ばされることを繰り返したからだ。


「もう、無理。堪忍してえな」


 ついには小倉が泣き言を言い始めたが、そんなことで止まる青雲入道ではない。


「何を情けないことを言うておるか。まだ始まったばかりだぞ」


「ウソだぁ!」


 悲鳴のように否定する小倉は限界が近いようだ。


「愚か者めがっ!」


 青雲入道が一喝すると、さすがに小倉も静かになった。


「あれこれと文句を言うておる間は限界など先のまた先の話よ。とっとと準備せい」


 そんなことを言われて絶望的な顔となる小倉。

 他の面子も地獄の特訓が続くのだと似たような表情を見せていた。


「行くぞ!」


「こうなったら、ヤケクソや!」


 青雲入道がヤツデを振りかぶったところで、それまで無言だった国中が吠えた。

 大丈夫かと仲間から視線が集まるものの国中が気にした様子はない。


「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 少し浮いた感じの中腰で力むように腹の底から咆哮を発する国中。


「どっかで見たようなポーズやな」


「気って言うたらアレしかあらへんやろ」


 小倉と外堀が無駄口を叩いている間にヤツデから繰り出される暴風が襲いかかってくる。

 またしても悲鳴を上げながら飛ばされていく大阪組であったが1人だけその場に留まることができた。

 国中である。


 そして、烏天狗たちに連れ戻された残りの大阪組一同が国中に詰め寄った。


「どないなっとんねん!?」


「せや。種明かし、はよ」


 岩田と小倉が焦ったように聞き出そうとする。


「吠えたらええんか?」


「そんな訳ないやろ。それでどうやるんや?」


 外堀のボケかと思われるような疑問にツッコミを入れる高山だったが、彼自身も正解は想像がつかないようで切羽詰まった表情で問うていた。

 何度も飛ばされたことで焦りを感じているようだ。

 もしかすると怪我ひとつ負っていないことに対する混乱も上乗せされているのかもしれない。

 対する国中は吠えていたときとは裏腹に落ち着いた表情を見せていた。


「どうって、あのアニメみたいにオーラがブワッと噴き出すイメージでやっただけや」


「「「「「マジで!?」」」」」


「そんなんで、ええんかいな!?」


「やりやすいなら、それでも良かろう」


 青雲入道もお墨付きを出す。


「それでもて、なんかアカンのかいな?」


 戸惑いながら疑問を口にする高山。


「魔力を無駄に放出するのは効率が悪い。飛ばされなくなったのならば早いうちに修正することだ。でなければクセがついてしまうぞ」


「次は多分できる」


 一度、成功させた国中は自信をのぞかせる。


「俺らも国中に負けてられんぞ」


「よっしゃ! まずはあのアニメのイメージでやってみるわ」


 高山と岩田が気合いのこもった言葉を発すれば残りの面子もうなずいて決意する。

 全員が同じような軽めの中腰となり待ち構える体制となった。


「次は期待できそうだな。行くぞ!」


 青雲入道がそう言ってからヤツデを振るう。


「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」


 全員が吠え暴風に耐える。

 はた目にはそう見えたことだろう。

 暴風のまっただ中にいる大阪組の面々も受ける前は同じように思っていた。


 しかしながら実際は異なる。

 先程までのような瞼を開けていることすら困難という状況からは程遠い。

 強い風を受けているという感覚があるにもかかわらず、抵抗はそこまで強いものではないのだ。

 吹っ飛ばされていた時の風が台風並みの暴風であれば今は普通に立っていられる程度の強風といったところか。

 風の強さに大きな差が出たりはしていないのだが。


「なんや!? 普通に立ってられるで?」


「なんで驚くねん。俺が最初に飛ばされへんかったやろ」


 外堀の驚きようにツッコミを入れる国中。


「魔力を全身に満たすだけで、こんなことできてまうとか訳わからんで。どないなっとるんや?」


「スゴないか? 魔法でもないのにどういうこっちゃねん」


「そんなん聞かれてもわかるわけないやろ」


 岩田と小倉が疑問を口にするが答えられる者は大阪組の中にはいない。

 だからという訳でもないだろうが高山がツッコミを入れた。


「考えてもわからんのは気持ち悪いなぁ」


 菅谷が首をひねりながらも納得がいかないという顔をする。


「考えるな感じろ、でええんやないか」


「せや。魔法かて似たようなもんやで」


 国中と高山が声をかけるも菅谷は憮然とした表情のままだ。


「国語教師どもはフィーリングで考えすぎだ」


「そんなこと言われても何がなにやらサッパリわからんやないか」


 国中がカウンターで反論する。


「せや。なんか適当に理由つけられそうなことも思いつかんのやからしゃーないやろ」


「高山の言う通りやで」


「ぐぬぬ」


 反論できなくなった菅谷は悔しそうにうなる。

 そうして大阪組の話が行き詰まったあたりで──


「気を全身に満たしたまま飛び跳ねてみるがよい。さすればわかるだろう」


 青雲入道がそんな風に語りかけた。


「飛び跳ねるて、垂直跳びのことかいな」


 首をかしげる国中。


「マサイ族みたいなジャンプなんとちゃうか?」


 岩田が別の意見を出してくる。


「どっちでもええ。やってみたらわかるんやろ」


 外堀が特に反動もつけずに跳び上がった。


「うおっ!? なんやコレ? ごっつ跳ぶがな」


「そうか? 確かに高いとは思うけど言うほどではないやろ」


 驚く外堀に対して大袈裟だと菅谷が苦笑する。


「そう思うんやったら垂直跳びで思いっきり飛んでみい。ビビるで」


「ハハハ、騙されへんで」


 笑いながら菅谷は反動をつけて跳び上がると軽く数メートルはジャンプしてしまう。


「うわあっ!?」


 予想以上の跳躍に菅谷は慌てふためき空中でバランスを崩してしまう。


「せやからビビるて言うたやろ」


 外堀がフォローしたことで頭からの落下だけはどうにか避けることができたがゴロゴロと転がっていってしまう菅谷。


「もうちょっと丁寧に助けてくれてもええやないか」


「男を抱き留める趣味はない」


「くっ」


 悔しそうにしながらも助けられたことには違いないため、これ以上は文句が言えない菅谷であった。


読んでくれてありがとう。

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