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153 主をおびき出す方法

 すべての精霊を解放し保護した。

 それはつまり風の揺りかごの主が監視するために使っていた目をすべて奪ったことに他ならない。


 主はどんな心境だろうな。

 訳もわからぬ状況に混乱しているのか。

 あり得ない状況へ追い込まれたことに憤怒しているのか。

 迂闊な真似をしてしまったことに後悔しているのか。


 敵の正体がわからぬ故に様々な想像をしながらも答えはひとつにまとまらない。

 ひとつだけ言えるのは何もない時とは明らかに違う精神状態であろうということだけ。

 それがこの先、いかほどの影響があるかは未知数だ。

 動揺を最小限に抑えられてしまうと人質がいるようなものだし面倒なことになりかねない。


 できれば頭に血が上った状態であってほしいのだが。

 それはそれで何をしでかすかわからないので油断はできないけどね。


「酷いものだな」


 歩きながら周囲を見渡して眉をひそめる英花。


「ところ構わずって感じで暴れているよね」


 真利は呆れの表情を見せている。

 切断された魔力の糸を引っ込めることもせず無闇矢鱈に暴れさせているところを見せられては、そうもなるか。


 俺たちはその脇を抜けるように通過した。

 あまり露骨に迂回すると明確に魔力の差があることを関知されて攻撃されかねないからね。

 こちらはこちらで飛んでくる破片に対応しなきゃならないけど、そうとわかっていれば対応できる。

 最初から結界を構築して当たらないようにすればいいだけの単純な話だ。


「ここまで凶暴だとは思わなかったぞ」


「堂島さん、大丈夫かなー」


「死んではいないと思う」


「その根拠は?」


 英花が追及してくるが、そんなものはない。


「ただの勘だよ。その点に関してだけは嫌な予感はしないからさ」


 ツッコミこそ入らなかったが英花の表情から察するに俺の勘はあまり信用されていないな。


「魔力を搾取するためにさらわれたんなら即死するようなことだけはされないと思うんだが、どう思う?」


「それについては異論はないが何回か魔力を吸い取った後で扱いを変えるかもしれないぞ」


「どうかな? 俺としてはそういうことにはならないと思うんだ」


「なにっ? 何故そう思う」


「今のところ、さらわれたのは堂島氏だけだろ?」


 もしかしたら堂島氏より前に風の揺りかごへ引き込まれた被害者がいるかもしれないけれど。


「一応はそのようだな」


 英花も俺と同じように先にさらわれた者がいるかもしれないことを考えているな。


「けど、堂島氏がさらわれて以降は誰もさらわれていない」


 警戒態勢が敷かれてからは監視が強化されている。

 だから今頃は俺たちが行方不明になったと大騒ぎになっているはずだ。


「なるほど。次の当てもないまま滅多な真似をするとは考えられない訳か」


「もしくは堂島氏の魔力をことのほか気に入っているか」


 そうであるなら堂島氏の生存確率は上がる。

 ただし、吸い取られては回復を繰り返して衰弱することになるのだけど。


「いずれにせよ救出は急ぐべきだろう」


 確かに英花の言う通りなんだが簡単な話ではない。

 俺たちが徒歩で移動するのも罠を警戒してのことだ。

 不用意な移動の仕方をすると引っ掛かる恐れがある訳で、そうならないためにも慎重に進む必要がある。

 今はミケが斥候として少し先を歩きながら調べつつ移動しているため走ることはできない。


 ちなみに精霊たちは怖々といった様子ではあるが俺たちの後をついて来ている。

 魔力の糸が暴れている現場ではかなり怯えていた。

 それでも諦めずに同行を続けるのは置いていかれる方が不安を感じたり怖かったりするからなんだろう。

 主と対峙したときにパニックを起こさないかが心配だ。


「英花ちゃん、焦りは禁物だよー」


「わかっている」


 特に苛立った様子も見られないので焦っていないのは本当のようだ。

 この陰鬱な環境から抜け出すためにさっさと片をつけたいという心情が言わせたのかもね。


 やがて鬱蒼とした森の終点が見えてくる。

 開けた場所におどろおどろしい雰囲気を漂わせる館が建っていた。

 千里眼のスキルで見たとおりの光景だ。


 もし、この館の様相が変わっていたなら館そのものが主の本体ということも考えられたんだけどね。

 それがないということは中に主がいるのは間違いない。


 森の端で俺たちは歩みを止めた。


「あれか……」


 館を見た英花が顔をしかめている。


「不気味な洋館だね」


 真利は自ら発した言葉ほど不気味さを感じていないのか割と平然としている。


「ああいうのは中に入ると酷い目にあうのが定番なんだが、どう思う?」


 英花が俺に話を振ってきた。


「似た雰囲気の館ではアンデッドが館の主人だったな」


「えーっ、あの中にアンデッドがいるのぉ?」


 真利が天然ボケを炸裂させる。


「いないよ。ここは邪妖精の根城だぞ」


「あっ、そっか」


「質が悪いという点ではどちらも同じくらいだろうけどな」


「中の様子を知らぬまま突入したくはないが……」


 苦り切った表情を見せる英花。

 偵察するならミケの出番となるところだけど、今回は邪妖精が相手ということで回避の方針だ。

 そうなると探る方法がなくなってしまうのが痛い。


「じゃあ、中の主を引っ張り出せばいいんじゃない?」


「それができれば苦労はしないぞ、真利」


「だよねー」


 言ってみただけのつもりだったようで英花にダメ出しされた真利も苦笑いしている。

 だが、俺は悪い案だとは思っていない。


「そうでもないぞ」


「えっ!?」


「涼成、さすがに無理があるだろう。具体的な居場所もわからん主をどうやって引っ張り出すと言うんだ」


「引っ張り出すんじゃなくて出ざるを得なくしてやればいいんだよ」


 ニヤッと笑うと2人にはドン引きされてしまった。


「涼ちゃん、悪人面になってるよ」


「また良からぬことを企んでいるな」


 またってなんだ、またって。


「俺たちからすれば向こうから自主的に出てきてくれる良いことだと思うんだが」


「自主的にってことは主の悪口をいっぱい大声で言って挑発するとか?」


「我々の居場所が特定されて狙い撃ちされるのがオチだ」


「それじゃあ四方から火事だーって叫ぶとか?」


「そんなことで出てくる訳がないだろう、真利」


「だったら本当に火事にしたらどうかな?」


「無茶を言うな、無茶を。人質がいるようなものだということを忘れたのか?」


「あっ、そっか。堂島さんがあの中にいるかもしれないんだよね」


「おそらくいるだろう」


「どうしてわかるの?」


「館の向こう側に白いファミリーカーがあるんだよ」


「じゃあ燃やせないね」


 何がなんでも燃やしたいのか?


「燃やせはしないが熱くしてサウナ状態にすれば出てくるかもな」


「それは堂島氏にもダメージが行くだろう」


 魔法で眠らされているから逃げ出すこともできないので危険だ。


「じゃあ、涼成ならどうする?」


「遮音結界で覆って結界の内側で不快な音を大音量で鳴らす」


「不快な音ってどんな?」


「黒板とか磨りガラスを爪を立てて引っかく音」


 キーキーという総毛立つような音だ。

 そのせいか2人から信じられないものを見る目で見られましたよ。


「それ、堂島さんにも聞こえるよね」


「魔法で眠らされているからわからんな。後で聞いてみるか?」


「聞かない方がいいと思うよ」


 真利が同情的な視線を館に送っている。

 聞こえるのだとしても怪我をするとかじゃないから我慢してもらおう。


読んでくれてありがとう。

ブックマークと評価よろしくお願いします。


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