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生骸屍肉  作者: 呉武鈴
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沈霊唄賛 1

久しぶりに自分の部署に顔を出す事にした樟葉は言い訳を考えながら署内を歩いていた。

「風邪をひいてた…いや生理が止まらなかったは…ダメね。あとは―」

「何ブツブツ呟いてんだ?」

「どんな言い訳なら通用するかなってアンタ何で隣歩いてんのよ」

地下に続く階段を降っている樟葉の隣をいつの間にか歩いている30代前半の男に敵意丸出しで睨みつける。といっても身長差は軽く20cmはあるので見上げるの方があっている。

「そりゃ俺も出勤途中だからだ」

どこから取り出したのか缶コーヒーを手の中で回している男は樟葉と同じ捜査第零課に配属されている。

「どんな言い訳なら通用すると思う?」

「あの人なら気にしないだろ」

「それもそうね」

飲み干したコーヒー缶を握り潰しポケットの中に押し込みながら言う男を横目で見ながら煙草を取り出し吸い始める。

「署内は禁煙だが?」

「何を今更。ここは特別区域よ」

「俺にもくれよ」

「勿体無いからダメ」


捜査第零課


それは秘密裏で行動している特殊な捜査課。主に一般には公表出来ない事件を未然に防いだり捜査をしたり解決したりする。しかし必然的に事件の数は少ないため連日休日と同じである。

「おはよーごさいまーす」「久しぶりだな樟葉!」

気のない挨拶で入ってった樟葉とは対称に元気のいい老年の男の声が部屋に響く。

「相変わらず元気ねぇ」

「逆にお前は若いのにだれておるな。シャキッとせんか!」

「そうは言うけどリュウ爺に勝てる若者は少ないと思うけど…」

「買い被りすぎだ。しかし二週間も何しとったんだ?」

「サボってました」

言い訳も無しに堂々と言う樟葉を老人は睨むがすぐに笑いだし

「サボりも程々にしとけよ」

と許してしまった。

「課長もう少しボリューム下げてもらえません?」

その隣の机で書類を整理していた眼鏡の青年が課長を見ながら文句を垂れた。

「悪いがこれ以上は下げれんな」

そんな一言で青年を退けた老人こそこの捜査第零課課長・笠羽劉玄(笠羽りゅうげん)である。性格は豪快の一言につき、年老いてはいるが2mを超える身長・ガッチリした身体・100mを12秒で走る身体能力をもっている。唯一歳相応なところと言えば(しっかりと生えている)髪の毛が全て白髪であることぐらいだ。「増田、課長にそんなこと言っても立て板に水ってことぐらい分かってんだろ」

増田と呼ばれた青年は書類から目を上げ樟葉の隣にいる男―日比野兼次(ひびのけんじ)を見る。「分かってても気になるんですよ」

増田は本来大学生程の歳だがこの部署に歳は関係ないらしくある事件をきっかけに配属された。パソコンを使いこなしあらゆるところから事件を拾ってくる役割をしているが席が笠羽の隣にあるためストレスにより胃潰瘍になったこともある。

「あれ?ミクさんはいないの?」

樟葉が部屋を見渡しながら自分の机に付くといつもならいる根岸ミクの机が空いていることに気づき声にだすと、劉玄が「あぁ」と声を出す。

「ミクの奴なら宿直室で仮眠をとっとるわ」

「そうですか」

「つまんなそうだな」

日比野が隣で自分用の冷蔵庫からさっきと同じ銘柄の缶コーヒーを取り出しながら言う。樟葉はつまんなさそうに「えぇ」と言うと机の上にだれた。

「ミクさんがいないと癒されない〜」


ガチャ

「あ〜、おはようございます〜」

日比野が缶コーヒーを三本飲み終えた時、劉玄の後ろにある宿直室から間のびした声を出しながら根岸ミクが姿を現した。微妙に着崩れた服装は妙な色気を醸し出しているが皆既に見慣れているため何とも思っていない。まだ眠いようで細い目がさらに細くなり開けてないように見える。

「ミクさんおはよー」

「樟葉さんおはようございます〜」

「とりあえず目を覚ませ」そう言いながら日比野が「ほれっ」と缶コーヒーに放るがミクはそれを取り損ねた。

「…えへへ〜」

「『えへへ〜』じゃないですよ」

文句を垂れながら落ちた缶コーヒーを拾いミクに手渡す。

「ありがと〜。お礼にハグしてあげるね〜」

未だに寝惚けているのかそんなことを言いながら増田を捕まえようとするが増田は地を蹴って椅子ごと下がり突撃に近い勢いで突っ込んできたミクを避ける。そのまま勢い余って顔面からコケるが何事もなかったかのようにすぐに立ち上がり缶コーヒーを開けると一気に飲み干した。


浪誠(ろうせい)教とゆうのを知っておるか?」それぞれが暇潰しをしているなか突然劉玄はその場にいた全員に尋ねた。

「えっと…たしか最近話題の新興宗教ですよね」

「何でも〜一度諦めた夢を叶えるとか〜なんとか〜」

「うむ」

「でもそれがどうしたんだ?」

「近頃起きてるの失踪事件の方も知ってるな」

「勿論、何でも失踪者に共通点が全くないとかよね」「実は公開されてないだけであるのだよ」

「…まさか」

「察しがいいな日比野よ」「どうゆうことよ?」

「お前はもう少し頭を使え。それは飾りか?」

「アタシにケンカ売ってんの?」

「樟葉、後で幾らでも相手してやるよ。で課長も樟葉にも分かるように言ってください」

「うむ。その共通点とゆうのは全員が浪誠教に入信しておったのだ」

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