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生骸屍肉  作者: 呉武鈴
3/29

児命殺画 3

倉庫の中はところどころ蛍光灯があるだけで薄暗かった。そのうえ通路には荷物が散乱しており歩きにくくなっていた。

「もうちょい来客する人のことを考えて欲しいわ」

「誰が好き好んでこんなとこにくんだよ」

そんなとこを少年・樟葉・和宏の順に縦に並んで歩いていた。

「この先の分かれ道を右な」

「へいへい」

和宏のナビでどんどん奥に進んで行く。

侵入してから約5分後

「…臭うな」

少年の言葉に樟葉と和宏は微かに臭う鉄の臭いに気付いた。

「…」

「ここか?」

黙る二人を無視し、少年は目の前にある扉を指差した。

「…あ、あぁ」

和宏が返事をすると躊躇もなく扉を開けた。


そこには手術用のベッドとその上に横たわっている死にかけの少女がいた。さらにその横には血に染まった手術道具と録画用であろうカメラが設置されていた。「…ひどい」

思わず顔を背ける。と視界の端に少年の頭に拳銃で狙いをつけている男がいた。


パンパンッ


短い音をたてて和宏の放った二発の凶弾が目の前の少年の頭を撃ち抜いた。

「…え?」

「まったくよく分からんガキだったな」

いつもと全く変わらないふてぶてしい口調で言う。

「和宏…どう…して…」

樟葉の問いに和宏は不適に笑った。

「見ての通りだ。あとそれ偽名な。本当は修、藤堂修だ」

和宏が―藤堂修が言い終わると大体同じタイミングで屈強な男達が扉から入ってくる。

「大切な商品だ。丁重に扱えよ」

藤堂に言われて男の一人が樟葉の首筋にスタンガンを押し付ける。

「そのガキはどうします?」

「ん?あぁ海にでも投げ込んどけ」



「…ん」

「やっと目を醒ましたか」「かず…ひろ?」

樟葉は先程まで死にかけの少女が横たわっていたベッドに下着一枚着けずに四肢を固定されていた。さっきまで着ていた黒の上下を脱ぎ代わりに一目で値が張ると分かるスーツを着こなし藤堂はそれを覗きこんでいる。さらにその後ろには先程の屈強な男達が立っている。

「だから俺の名は藤堂修だってさっき言ったろ」

藤堂は上着のポケットからタバコを取り出すと口に銜えた。

「おいテメェらちょいと外しな」

「へい」


倉庫の前で見張りをしていた男達はそれを見つけた途端意識を失いそのまま消滅した。


「『なんでアンタがコイツラを仕切ってんの』ってツラしてんな。いいぜ冥土の土産に教えてやるぜ」


それは鍵の掛けられた倉庫に入るための扉を力任せに開けた。


「俺の言ったタレコミ、ありゃ嘘だ。真実は依頼主から新たに『若い女のスナッフムービー』ってきてな、それでお前に白羽の矢が立ったんだよ」


それは道なりに倉庫の中を歩いていた。途中で男と出会っては腕を横に振るい頭と胴体を、上半身と下半身を分離させていく。


「そうさ俺にとっちゃ警察なんて隠れ蓑に過ぎないんだよ」


男がそれを後ろから撃つが倒れない。それはゆっくりと振り返る。紅い目が男を捉える。男は恐怖の果てに逃げようとするが後ろから頭を掴まれそのまま肉塊と成り果てた。


「さて俺はこれでも人間だ。最後に願いを一つだけ聞いてやろう」

「じゃあ唄っていい?」

「一曲だけならな」

「あんがと」

樟葉は大きく息を吸い込むと透き通った声で唄い始める。



とおりゃんせ

とおりゃんせ

ここは何処の細道じゃ?

鬼人様の細道じゃ

ちぃいととおしてくだしゃんせ

御用の無い者とおしゃせんこの子の七つの御祝いに

御札を納めに参ります

行きは良い良い

帰りはコワイ



グシャ!

最後の一章節と同時に藤堂の後ろの扉が抉じ開けられた。

「コワイながらも、とおりゃんせとおりゃんせ」

そこには目の位置に紅い二つの光がついている黒一色の顔とバックリと裂けた口、そして米噛みあたりから羊の角を生やしている異形のものが純粋な恐怖を抱かせる声を響かせ唄いながら入ってきた。

「な…なんだテメェ!?」

藤堂は咄嗟に拳銃をつきつけるがそれは動じない。

「遅かったじゃん」

ベッドに寝かされたまま樟葉が笑う。

「お前はもう少しズタボロになってるほうが似合ってるぜ」

嫌味たらしく言うとそれも笑いだす。

「お前はまさか…いやあんとき俺に頭を撃ち抜かれたはずだ!!」

「あん?俺があんな玩具で死ぬと思ってんのか?はっ、こりゃ傑作だ」

そう言うとそれは一歩前に出る。

「ひっ!?」

藤堂は無意識に一歩下がる。一歩また一歩と距離を詰めるそれに対し藤堂は一歩また一歩と距離をとろうと下がっていく。やがて藤堂は壁に背がついた。

「因果応報って言葉を知ってるか?」

それが言い終わると同時に藤堂は意識を失った。



「…ん」

「意外と早いな」

藤堂はさっきまで樟葉が寝かされていたベッドに四肢を固定されていた。藤堂の目の前にはそれの顔がある。その後ろには服を着た樟葉が眠たそうに欠伸をしていた。

「さて今からお前には今までにやってきたことを数分に凝縮して味わえさせてやるよ。樟葉、部屋から出てろ」

「了解」

素直に樟葉が部屋を出て扉を閉めると同時にそれは藤堂の右足を折った。

「……っ!」

「次は何処がいい?」

嬉しそうにそれは手を動かす。そしてそのまま藤堂の左腕を潰した。

「……っ!?…!!」

「そんなに喚くな」

さらにそれは左足の膝から下を引き千切った。

「ガァァァァッ!?」

「さて最後は右手だ」

「待っ、待て!!」

「あぁ?」「と、取引をしよう!俺を解放してくれたらたんまりと金をやる!そ、それでどうだ!?」

「ダメだね」

それは男の提案をあっさり一蹴した。そしてそれは右手を掴むと力任せに捩りきる。刹那筋肉が千切れる音と骨が砕ける音が部屋に響く。

「アァァァァァァ!?」

「次は(はらわた)だ」

鋭い爪で腹を裂き胃、肝臓、脾臓、小腸、十二指腸、大腸とむしり取る。

「最後に冥土の土産に俺の名を教えてやるよ。まぁ樟葉がつけたんだがな」

それは既に意識が失いかけている藤堂の頭を右手で掴むと紅い口を目一杯裂き笑いながら

привидение(プリヴィディエーニ)って言うんだよ」右手に掴んでいるモノを軽く握り潰した。握り潰されたモノは紅と灰色、そしてピンク色の液体を周囲に巻き散らした。


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