双方思奸 4
裏路地を通り、最短距離で駅前に向かう亨の前に見覚えのある右のサイドポニーが見えた。
「よう、楓」
「ん?亨じゃん、久しぶり」
亨よりも身長が高く、スタイルも良いが純粋な笑顔と幼さの残る顔。楓はそんな女性だった。
「お前、クロ見なかったか?」
「クロちゃん?さっきすれ違ったよ」
「てことはちょいと遠回りしてんのかよ」
「心配なの?」
茶化すような言い方の楓に亨は「色々とな」と真顔で返した。
「ところでお前は何してんだ?」
「あっ!そうだ!姉さんが財布持たずに買い物行ったから届けに行く途中だった!」
「さいですか」
「なんか面白い事があったら教えてねっ」
走って行った楓を見向きもせずに亨はクロが行ったであろう道を歩き始めた。
亨がクロを見つけたのはそれからすぐ、近くの公園で野良猫とじゃれあっている姿だった。
「…何してんだ?」
「!!」
後ろから声をかけられたクロはあからさまに驚き、ゆっくりと振り向いた。
「いつからそこにいた?」
「今さっき。お前、猫好きなのか?」
「…見なかったことにしろ」
体から黒い何かを滲み出して脅してくるクロに対して亨は両手を挙げて降参の意を示した。
「見なかったことにするから落ち着け」
「本当だな?誰にも言わないな?」
「あぁ、誰にも言わないから止めろ」
その言葉を信じたのか黒い何かを引っ込めるクロ。ほっとしながら帰路に足を戻す亨の携帯がメールの着信を知らせる。
開いたメールを見た亨は無表情で返信すると電話をかける。
「…あぁ、俺だ。少し情報が欲しい。…現金より現物だと?俺が用意出来るものにしてくれ」